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特許法79条に先使用権なる条文があります。
特許権の出願時点にて
実施等していた者は通常実施権を有するというものです。
ここで、先使用権が発生する場合には、当該特許権は無効理由(29条1項1号)を有することになると思うのです。
無効理由を有さない場合として秘密実施の場合があるといわれたのですがこの場合は29条1項1号に該当しないのでしょうか?
29条1項1号の「公然」とは、守秘義務を有さない者が知得した場合を意味するはずです。
とすれば、先使用権の79条の要件を満たす秘密実施者は、常識的に特許権者に対して守秘義務を有していないと考えられるので29条1項1号にて無効だと思ってしまっています。
おそらく79条の肝心の部分の理解が不十分なのでしょう。
秘密実施が29条1項1号に当たらないとする理由について、
法律知識に明るい方に教えていただければありがたいです。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
条文上は「公然知られた」です。
発明者が知っていることは当然ですが、同一発明を異なる人が別々に完成したというだけで、「公然知られた」と言えるわけじゃないです。発明者自身が公にした客観的事実があれば、「公然知られた」に該当するでしょうが、心の中で公にしようと思っていたなんて主張しても認められないでしょう。もしそれが認められるなら先願の規定も意味なさないですね。守秘義務を有する云々の話は、発明者ではない人、つまり発明者から発明を知得した第三者の場合です。秘密実施者自身が発明者でもなく、守秘義務もないというなら、そもそも「秘密実施」じゃないですね。「わしはその発明を(特許権者ではない)Bさんから聞いて実施してたでぇ。守秘義務なんて知らんわ」と主張立証すれば、特許を無効にできるでしょう。ここでいう守秘義務は、特許権者乃至発明者に対するものでなくてもいいのです。「公然知られた」という規定からして、不特定の第三者に発明を伝授しない義務があれば良いでしょう。
発明者かつ特許権者Aさんの特許発明αと同一発明βを、Bさんが出願前に独自に完成したのみでは29条1項1号の「公然知られた」と言えるに足りないということですね。
ようやく理解できました。
事例を挙げて具体的にご説明頂き大変助かりました。
ありがとうございます。
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No.2
- 回答日時:
まず、第79条は「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、」という場合のことであり、特許出願に係る発明の発明者から知った場合のことではありませんから、守秘義務は全く関係ない話です。
>無効理由を有さない場合として秘密実施の場合があるといわれた・・・
tts21さんが誰かにそう言われたわけですよね? それだったら、その人に聞いてみた方がいいんじゃないかと思うのですが。その人が「秘密実施」という言葉をどういう意味で使っているかによっても、回答が変わってくるように思えます。
ただ、実施しているからと言って常に発明の内容が公然知られるとは限りません。
例えば、商品をいくら調べても技術の内容がわからない場合には、敢えて特許を取らずに技術内容を隠して製造販売するという戦略もあります。そういうものを「秘密実施」と言ってるという可能性はありませんか?
また、研究者じゃないから技術内容は知らないけど効果があることがわかっているから製造販売するという商品もあり得ます。
例えば、草Aを煎じたものが切り傷・擦り傷に効くことを経験的に知った富山の薬屋の甲さんがこの草Aを煎じたものを傷薬aとして全国的に販売していたとします。
その後、ある研究者乙さんがある化学物質Bが抗炎症作用があることを見つけ出し、化学物質Bから成る抗炎症剤bの発明について特許を取得したとします。
その後、調べてみたら、草Aを煎じた傷薬aの中にこの化学物質Bが含まれていることがわかったとします。(出願当時の分析技術レベルではまだA中のaを同定することができなかったが、その後に分析技術が進歩して同定できるようになったという場合もあり得ない話ではありません。)
さて、富山の薬屋の甲さんはこの草Aを煎じた傷薬を販売することができなくなるのでしょうか? そんな理不尽なことはあってはならないと思います。
また、傷薬aの中に化学物質が含まれていることがわかったからといって、研究者乙さんの特許は無効にされるべきものなのでしょうか? このような場合、技術内容を世間に公表して産業の発達に貢献した乙さんの特許が無効になるようなことは、あってはならないことだと私は思います。
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