飛行機に使用出来る翼に環状翼と言う物があります。円筒型の筒です。最近この質問箱でも問答がありました。
通常の翼であれば、上面の反り具合/曲がり具合と下面のそれが異なるため揚力が発生し、飛行機が飛びます。補助翼もあります。翼の取り付け角度も関係するでしょう。複葉機ならば、上の翼と下の翼は平行移動したような構造です。
さて本題です。環状翼に於いて、サイドの部分は揚力に直接関係しないと考えます。上方部分と下方部分が上下に対称であれば、風による力は均衡して、揚力は生じませんね。具体的にどのような幾何学構造になっているかご存じの方はありませんか。補助翼は付いているのでしょうか。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
#2のjanvier です。
お礼のお言葉有難うございました。いろいろな方面にとてもお詳しいご様子で、いまさらながら知ったかぶりのご回答、いささか恥ずかしく思っております。ほんと、暑い暑いと言っているあいだに、気が付いてみますと9月だってあともう残りも少なくなりました。noah1974様のご質問、それと知りながらエイヤッと、こちらのご質問に一緒にお答えしてしまって心遣いが足りなかったかもしれませんね、反省.....。
いろいろエラそうにご回答として書いてしまいましたが、航空工学についてはこの程度以上に詳しいわけでもなく、ましてこうした知識も単に軽飛行機を飛ばしている範囲では体験する機会すらもないことですので、はたして、さらに突っこんだご回答になるかどうか心配です。以降ほとんど雑談としてお受け取りください。
VTOL機、そういえば例のハリアーの沖縄配備以降、最近はあまり話題になりませんねえ。離陸時に大変な燃料消費を余儀なくされるVTOL機のこと、エコの時代にそぐわないのでしょうか。
VTOL機が水平飛行に移った後は機体そのものの揚力を利用した.....ことには間違いはないでしょうが、問題は、こんな奇妙な機体を水平に飛行させるに足る揚力がどこから生じるのかという、また例の問題に立ち戻ってしまうことです。
まず、環状翼の場合には翼断面の形状によって揚力を得ることは期待できません。なぜなら、翼の全周にわたって翼断面の形状が同じであれば、これまでも語られているように、当然のことながら揚力のベクトルは上下方向で相殺されてしまうからです。もっとも、細かに計算した上で翼の上下部分をそれぞれ異なった翼断面にするとか、あるいは動翼機構を組み込むとか.....といったことにでもなれば話は変わってきますが。
しかも、環状翼の場合には胴体の中心線に対して翼をやや前上がりに取り付けて気流に乗るようにする「取付け」も期待できません。これもまた、単純に同じ角度で設計すれば全周でベクトルの相殺が生じるからです。
となると、残るは「迎え角」しか考えようがないということになります。迎え角とは翼が気流に乗るようにやや前上がりになりながら飛行する姿勢のことです。迎え角はとかく取付け角と混同しやすいのですが、迎え角とは取付け角も含め、安定した水平飛行の状態で翼が自然に前上がりになる角度の総和のことです。今日の航空機でも飛行中はやや前上がりの姿勢で飛んでいるものですが、このドイツ式VTOLは強い推力を頼りにかなり大きな迎え角を生み出しながら飛ぶということを想定していたのではないでしょうか。
ここでまた、あえて学生時代にあの航空工学の教授が話していたことを蒸し返しますが、飛行機が大気中に浮いて飛ぶのは、翼面に生じる揚力や、取付け角や迎え角による揚力、それだけじゃない。上昇気流に乗るということだってそうだし、地面と翼の間に挟まれた大気によって着地が遅れるグランドイフェクトだってそうだ。極端に言えば推力さえ十分にあれば小さな翼だけでも飛ぶことが出来るものだ。しかも、抗力やマイナスベクトルの揚力さえも飛行には必要なものなのだ。だから物事すべて考え方をひとつ方向に決め付けてはならない....と。きっとドイツの技術者には彼らしか考えつかなかった何か良いアイデアでもあったのでしょう。
超音速域でも揚力に対する説明は成り立ちますか.....、残念ながら、もうこのあたりになると知識の範囲を超えてしまい、残念ながら確かなご回答が出来ません。超音速域に達するととても不思議な空力的な現象が現れるということは聞き及んでいますが、この環状翼に対して仮に超音速域の気流が作用した時にどんな現象が現れるのか、ちょっと知りたい気もしますね。
航空機には普通どれにでも装備されているピトー管、ご存知のように、これこそベルヌイの定理によって静圧と飛行によって生じる動圧の差を読み取り、航空機の対気速度を知る装置ですが、これもまた超音速域に近づくにつれてその精度は極端に落ちて役に立たなくなると聞いたことがあります。日頃のんびりと軽飛行機で飛んでいる身には想像もつきませんが、そういえばその昔、映画がありましたよねえ。初めて音速の壁を突破したテスト機がテストパイロットの操縦に対してまるで反対のような異常な反応を示す.......といったストーリーでしたが。
40数年前にETHにお出でになり、環状翼を実際にご覧になったとか。また、舶用エンジンをはじめ大戦後にドイツからフランスへの技術移転が行われたというエピソードなど、お話にとても広い視野と知的なものを感じました。できればもっとお話を聞かせていただきたいものです。
janvier さん 有り難うございます。
このサイトでは多くのことを楽しく学んでおります。今後ともよろしくお願いいたします。
読んでいて楽しいのは:
1.多くの分野の知識をお互い融通し合うこと。二重投資が避けられます。
2.誰にも分かる説明、エレガントな説明。例えば、複葉機の翼端をつなげば、環状翼と原理的に同じというirija_bariさんのご説明などです。美しさが必要なのは、絵画、音楽のみではありませんね。
No.2
- 回答日時:
このご質問でも、また少し前のご質問でも、ご質問の焦点はなぜ環状翼で揚力が発生するのか.....ということですね。
知るかぎりのご回答ですが、結論から言いますと環状翼では翼面のキャンパー(前縁から後端までの上面と下面の長さの差を生み出す翼断面形状)によって生じる揚力は一切期待していなかった.....ということです。
結論だけではまるで突飛な言い方になりますが、元々なぜ環状翼というものが開発されたかと言いますと、それはひとえに素早い離陸と上昇を第一に考えたことに始まるからです。
第二次大戦下のドイツでは連合軍側の空襲に対して素早く離陸し高度を取って迎撃できる防衛機の開発を各メーカーが急いでいましたが、いずれの案も今で言うVTOLのような穏やかな離陸をするものと違って、ほとんどロケットのようにただ我武者羅に上空目指して飛び上がろうというものでした。
いろいろな案がありましたが、中でもハインケル社の場合は胴体の中央部に一般的な航空機用エンジンを2基搭載してプロペラを駆動するという構造で、このプロペラを囲むように環状の翼を取り付けていました。
なぜプロペラの周りを環状の翼で囲むといいのか、それはすこし乱暴な言い方ですが、プロペラで作り出した後部への空気の流れを環状の翼で生じた空気の筒で束状にまとめることによってより強い推力とすることが出来るからです。この原理は大戦後の一部の民間機でもテスト的に採用されていますし、また、燃焼ガスの噴出を別のタービン(ベーン)で生み出した空気の筒で包み込んでより効率を高めるターボファンジェットの原理もまた、ある意味これに近いものがあります。
また、なぜエンジンを2基搭載していたのかというと、それはまるで「コマ」のようにどちらが上なのかちょっと見には分らないような環状翼機のこと、必要な推力の確保とともに、おそらくプロペラの回転の反作用で機体がグルグル回らないように2基のプロペラを互いに反転させていたのだろうと推測します。
では、こうした環状翼を装備した航空機はどの様に飛ぶのか....、飛ぶという感覚で語れるかどうか疑問ですが、まず離陸はVTOLのような....と言う表現よりももっと過激で、今日のロケットと同様にまさに垂直離陸、そしてそののちは機体を次第に水平に近づけるにつれて、胴体の中心線を推線に対していくらか上向きに保って、つまり迎え角を作って(もちろん取付け角はゼロですが)、それによって気流を下向きに押出してコアンダー効果によって飛行をしようというものでした。さすがにこのアイデアは実らないままドイツは降伏し終戦、しかしアイデアだけは戦勝国フランスが持ち帰りました。
戦後になって先進各国ではVTOLの開発計画が競われましたが、フランスではこの環状翼のアイデアを持ち出し、最初から設計の見直しをするとともにレシプロエンジンをジェットエンジンに置き換えて独自のVTOLを完成しました。これが「空飛ぶビヤ樽」と言われたC450コレオプテール機でした。C450コレオプテールは1958年にロールアウトし、翌年の1959年5月に初飛行に成功しています。しかし、やがて操縦不能に陥るなどトラブルが続出し、結局環状翼のアイデアは立ち消えになってしまいました。
ここで、ついでに.....、この場を借りて、以前からとかく取りざたされるベルヌイの定理で航空機は飛ぶのか.....ということについて一言言わせてください。
大学時代、工学部に籍を置いていましたが、その当時の航空工学の教授が力説していた言葉を思い出します。それは「飛行機というものはただ何かひとつの原理だけで飛ぶんだと考えてはいけない」ということでした。
実際に航空機が空を自由に飛べるのにはいろいろな要素が関係し合っているからですが、こと翼に関しては、そこには翼面に働くベルヌイの定理によって、翼の上表面の空気密度が低くなり、下表面との気圧差が生じて揚力が発生するという原理もかかわっているし、翼の取付け角や迎え角によって生じるコアンダー効果によって空気の流れが押し下げられる、その反作用でもまた揚力が発生する、そうした「揚力の総和」が機体を浮き上がらせているのだというわけです。
ですから、以前から何度か見かけたいつも同じのひとつ話....飛行機はベルヌイの定理で浮く.....とか、いやそうじゃない.....とか、こんな場所でそんな狭い視野で語り合っていてもなんの意味も無いこと、それだけをちょっと感じましたので、こちらで付け足させていただきます。
janvier さん en septembre にお答えいただき有り難うございます。
少し前の質問は私からではありません。noah1974さんのご質問です。この時は追加質問したく、その前段階として、感想を投稿いたしましたが、管理人さんから、お前のは答になっていないから削除するとのご通知をいただきました。規則には従わなくてはいけませんから、自分の質問として、出し直したのが今回です。
1.VTOLも含めた解説に感謝いたします。VTOLに関する新聞記事が最近なくなったのに、本日気付きました。
2.VTOL機が水平飛行に移った後は機体そのものの揚力を利用したと考えてよいのでしょうか。
3.なぜエンジンを2基搭載していたのかというお話しはよく分かります。エンジン一基ヘリコプターがお尻に水平方向の小さいプロペラを装備しているのと同じですね。
4.ベルヌイについて、議論する実力がありませんが、超音速でも、揚力に対する説明は成り立ちますか。筒状通路で、断面積が小さくなると(超音速領域では)速度が下がります。密度が上がるからでしょう。
5.感想です。40数年前に、スイスの連邦工科大学(ETH)に友人を訪ねたとき、天井から環状翼がつり下げられていたのを懐かしく思い出します。大戦後のVTOL開発時代であったのですね。
6.大戦後にドイツからフランスへの技術移転は沢山ありました。舶用エンジンでも、ナチス党員であったドイツ人技術者を公職追放にしておいて、フランスで職を与え、資本を出して開発をさせた例があります。
No.1
- 回答日時:
> 飛行機に使用出来る翼に環状翼と言う物があります。
円筒型の筒です。こちらのようなもの・・・では、ありませんよね?
http://www.venus.sannet.ne.jp/eyoshida/ag2lr13.htm
とりあえず、その飛行機を正面から見たときの翼の形が「○」になっているもの、
という前提で回答させて戴きます。
(上のようなものだと、形状が多少変わっているだけで、基本は通常の飛行機と同じはず)
> 最近この質問箱でも問答がありました。
そちら(http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3362278.html)で、No.2・irija_bariさんが末尾で触れられて
いるように、飛行機の揚力はベルヌーイの定理ではなく、「作用反作用の法則」と「コアンダ効果」
で説明する説があります:
http://deepaed.exblog.jp/m2006-03-01/
なお、上記サイト中、日本語訳HPのアドレスが表示されていますが、リンク先がこちらに変更に
なっていました:
http://home.comcast.net/%7Eclipper-108/lift-J2.pdf
*16ページとボリュームがあるので、私は斜め読みしただけですが(汗)
> 上方部分と下方部分が上下に対称であれば、風による力は均衡して、揚力は生じませんね。
その通りだと思いますので、恐らく通常の単葉機と同様に、環状翼が本体に対して迎え角を
持って設置されている(=本体が水平のとき、ペットボトルの口(があったはずの場所)が斜め上を
向いた状態になっている)ものと推測します。
(そうでないと、ベルヌーイどころか、作用反作用による揚力が発生し得ないので・・・)
> 補助翼は付いているのでしょうか。
すみませんが、実物を見たことがなく、Web検索でもひっかからなかったためわかりませんが、
主翼が環状だとフラップなどの機構も面倒そうなので、水平・垂直尾翼などの補助翼は
必須ではないかと推測します。
DexMachina さん有り難うございます。
参考サイトを記して下さったので、楽に理解することが出来ました。
勿論、飛行機を正面から見たときの翼の形が「○」になっているものの関する質問でした。
素人目には上下対称の環状翼で、どうして上下対称ではない力が出るのかが、不思議で質問いたしました。
今後ともよろしく。
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