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憲法の財産権、行政法の損失補償制度に関する重要な判例として、奈良県ため池条例事件があるかと存じます。
「災害防止のための制約は特別の犠牲にあたらず、補償を要しない」との結論かと思います。

そこで、私が使っておりますテキストに、「ダム建設によって土地家屋が水没した場合は補償の範囲内であり、離作料や営業上の損失を補償しなければならない。政府の要網では離職者補償や少数残存者補償も認められる」という記述がございます。

ダム建設による土地収用も、川の水量のコントロールによって災害回避や安定的な水の供給を目的としているのだと思いますが、これは消極目的に属する制約であり、奈良県ため池条例事件と同様に損失補償は要しないという帰結にならないのはなぜでしょうか?
奈良県ため池条例事件でも耕作地を奪われた方がいるかと思います。その方は補償を受けられず、ダム建設では受けられる違いはどこにあるのでしょうか?

お手数ですが宜しくお願い致します。

A 回答 (1件)

 説明を要約すれば,奈良県ため池条例の事案は,憲法29条により保護される財産権自体に含まれず,ダム建設の事案は,同条により保護される財産権について特別の犠牲を被る場合,ということだと思います。



 奈良県ため池条例事件(最高裁昭和38年6月26日判決)において,最高裁は,下記のように述べています。
:ため池の堤とうに竹木若しくは農作物を植える等の行為について,立法者(奈良県議会)が「科学的根拠に基づき,ため池の破損・決かいを招く原因となると判断した」ものであり,堤とうを使用する権利の全面的禁止は,「災害を未然に防止するという社会生活上の已むを得ない必要から来ることであって,」「公共の福祉のため,当然に受任しなければならない」。それゆえ,当該堤とうの使用行為は,「憲法,民法の保障する財産権の行使の埒外に」ある。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_i …

 これに対し,ダム建設により収用される財産権は,被収容者の日常生活自体に係る財産権であり,憲法29条の保障する財産権であることは明らかです。そして,「正当な補償」(29条3項)の要否に係る従来の通説である「特別犠牲説」は,(1) 侵害行為の対象が広く一般人か,特定の個人ないし集団か,という形式的要件,および,(2) 侵害行為が財産権に内在する社会的制約として受任すべき限度内であるか,それを超えて財産権の本質的内容を侵すほど強力なものであるか,という実質的要件の二つを総合的に考慮して判断すべきとしますが,ダム建設に係る収用がニ要件とも満たすこともまた,明らかです。
 
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