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高分子の結晶化はどうして昇温過程の途中で起きるんでしょうか。教科書に載っているPETのDSC曲線を見ると、低温から温度をあげていくと、ガラス転移以上のある温度で結晶化がおき、さらに温度があがると融解することが示されていました。
塩などの結晶化のイメージでいうと、温度を下げていくと結晶化が起きて、その温度以下ではずっと固体で存在しているようなイメージを持っているのですが、PETではちがう、ということでしょうか。

また、ガラス転移温度以上、結晶化温度未満の温度域に高分子をさらした際には結晶化は起きない、ということでしょうか。

アドバイスをよろしくおねがいします!

A 回答 (1件)

PET等の高分子材料は、


1)ある条件下(温度)で結晶化した部分、
2)ある条件およびまたは類似の条件下では結晶化できたかもしれない部分、
3)そもそも結晶化できない部分(低分子量物や鎖欠陥等も含む)、
の3つの部分の混合体とみなせます。

一方で高分子の結晶化は、無定形状態にある分子鎖が動いて再配列して
秩序有る結晶状の構造を取ることです。

この2点を念頭に置いて、PETサンプルのDSC測定を考えてみましょう。
a) サンプルがガラス転位温度以下の時、分子鎖は動けずガラスの様に
  固まった状態に有ります。
b) 温度上昇に伴い2)と3)の動きは活発になります。1)は束縛されているので
  動きはそれほど活発にはなりません。
c) さらに温度が上昇し、2)が再配列し易い温度になり結晶化が起こります。
d) さらに温度が上昇すると、一般にはc)で形成された結晶が溶け出し、次いで
より大きく安定な結晶部分1)が溶融します。ピークは重なり区別は付きません。
c)がDSC曲線の結晶化ピーク、d)が融解ピークです。

この様な挙動は全ての結晶性高分子に見られるものではなく、PETの場合も
試料と測定条件によります。
測定時の温度上昇をより急速に行うと、動ける様になった2)部分の再配列の
時間が無く融解までに結晶化は起こらないか、起きてもピークは極めて小さくなります。

溶融状態からの結晶化は、分子鎖の動きが低下する過程でエネルギ的
エントロピー的に安定な結晶部1)が生成されます。
さらに温度が下がると、1)~3)を含む構造が凍結されます。
高分子ではこの結晶化温度が、分子鎖長分布や構造欠陥等によりかなり広い
幅を持っています。ある狭い結晶化温度範囲でかなり完成度の高い結晶ができる
低分子量物(部分2)と3)が殆ど無い)との違いです
しかし、結晶化はある条件下で結晶部分1)状態がエネルギ的エントロピー的に安定な
時に起こるものです。温度条件がガラス転位温度以上でも結晶化温度域から外れている
場合、結晶化は起こらないと言えます。
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この回答へのお礼

ありがとうございます!
すごくわかりやすくまとめて下さったので、ずいぶん頭の中がすっきりと整理されました。

昇温過程において、ある程度の分子鎖の運動性が得られてから初めて結晶化する領域がある、ということで理解しました。有難うございました☆☆

お礼日時:2011/08/30 23:49

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