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No.4
- 回答日時:
どうもどうも。
さらに反応を頂けたようで
私としてもうれしいです。^^
シンチの値段は種類と大きさによりピンキリです。
以前もお話ししたとおり、シンチには
大きく分けて『有機物質』の物と『無機物質』の物があります。
それぞれの特徴は
有機(主にプラスチック):
・ パルスがとても速い( サブ ns オーダー)ので時間分解能がよい。
・ プラスチックなので、扱いやすいし加工もしやすい。
・ 物質の原子番号が小さいので γ 線を吸収しにくい。
・ 発光量は少なめ。エネルギー分解能もよくない。
無機(NaI, CsI, BaF2など):
・ 原子番号も密度も大きいので γ 線を吸収しやすい。
・ 発光量が多い。
・ 潮解性を持つものが多い。扱いにくい。
といった感じです。
プラスチックは扱いやすいですし値段も安めです。
ノコギリとかで好きな形に切って使うことも出来ます。
感覚的には(10cm×10cm×1cm)の板で ¥1万 くらいですかね?
ただしこいつは γ 線を吸収しにくいです。
つまり、残念ながら γ 線の測定には向きません。
今回の場合はやはり γ を測れた方が良いでしょうから、
無機シンチを選ぶのが正解だと思います。
ただ、無機結晶はプラスチックに比べて断然扱いにくいです。
とても欠けやすいので自分で加工するのは難しいですし、
(したことないです^^;)
水分を吸収するとドロドロに溶けます。
そーゆー性質を『潮解性』といいます。
まあしかし、そんな無機結晶の中でも 【 CsI(Tl) 】
(タリウムをドープしたヨウ化セシウム)
という結晶は、一番有名な NaI などと比較するとはるかに丈夫です。
メジャーな物質なので多分入手もしやすいと思いますし、
値段もそれなりに安めです。
(数cm×数cm×数mm)の板で ¥1万 くらいですかね。
話をまとめますと、
私のおすすめのシンチは CsI(Tl) という物質です。
ちっちゃい結晶なら多分 ¥数千 で買えます。
--------
さて、電荷有感型プリアンプについてですが、これは一言で言えば、
入力パルスが持っている電荷の総量に比例する
電圧信号を出力するようなアンプのことです。
一応それっぽいところでは製品もあります。
●浜ホト
http://jp.hamamatsu.com/products/sensor-ssd/pd04 …
●豊伸
http://www.kagaku.com/hoshin/n0121.html
●クリアパルス
http://www.clearpulse.co.jp/jpn/product/plist_B/ …
おおざっぱな等価回路の絵をかいたので見て下さい。↓
正体はこの程度の物ですから、普通のオペアンプで十分作れます。
Cf はフィードバックコンデンサです。
Cin は検出器が持っているキャパシタンスですが、
これは要するに検出素子からアンプまでに発生する
浮遊の C だと思って下さい。
今、電荷 Q が入力側から流れ込んできたとします(電流パルス)。
Q が Cin と Cf に分かれてたまるとすれば、
(1) Q = Qin + Qf
Cin, Cf にかかる電圧はそれぞれ Vin, Vin - Vout ですから
(2) Qin = Cin Vin
(3) Qf = Cf (Vin - Vout)
となります。また、出力電圧 Vout は
(4) Vout = -A Vin
ですから、(1)~(4)より
(5) Q = Cin Vin + Cf (Vin + A Vin) = ( Cin + Cf + Cf A) Vin
⇔ Vin = Q / ( Cin + Cf + Cf A)
です。これを(4)式の中に戻すと
(6) Vout = -AQ / ( Cin + Cf + Cf A)
= -Q / { (Cin / A) + (Cf / A) + Cf }
ここで A が十分大きいとすれば、
Cin / A = Cf / A = 0 と見なせますから、
(7) Vout = -Q / Cf
となり、出力電圧は『入力電荷』にのみ比例することになります。
邪魔な Ci には結局無関係なわけですね。
これは放射線に対する半導体の性質とも相性がいいのです。
また、その比例定数はフィードバック Cf によって決まります。
小さい Cf を使えば出力電圧を大きくできます。
もちろん Cf だけではそのうち電荷がサチってしまいますから、
電荷を逃がすためのフィードバック抵抗 Rf も必要です。
で、この放電(すなわち立ち下がり)の時定数は
(8) τ = Rf Cf
で決まります。
この τ をライズタイムより十分長く取ると、
小さな電流パルスでもハッキリとした電圧パルスに
変換することが出来るわけです。
ライズタイムは検出器のタイムレスポンス、
すなわち入力パルス幅に依存します。
これは素子の大きさ等にも依りますが、 数10ns~数us くらいです。
ですから、ディケイタイム τ は
数10us~数ms オーダーに設定することが多いです。
具体的には Cf = 数pF, Rf = 数100MΩ とかが普通ですかね。
オペアンプのスルーレートは Cf の値と、
ライズタイムとの兼ね合いで考えます。
以下は仮定だらけの非常に雑な計算ですが、
例えば、40K の 1.46 MeV γ の入射により、
検出器内で作られる電子・正孔対の数は
(9) 1.46MeV / 3.64eV = 4.0×10^5 個
と見積もれます。3.64eV は Si 原子1個を電離するためのエネルギーです。
ということは、これにより発生する電荷は
(10) Q = 1.6×10^(-19) [C] × 4.0×10^5 [個]
= 6.4×10^(-14) [C]
です。この電荷がアンプに流れ込むわけですから、
Cf = 2.2pF だったとすると(7)式より
(11) Vout = -2.9×10^(-14) [C] / 2.2×10^(-12) [F]
= -29 [mV]
となります。この電圧が仮に 1ns で立ち上がったとしても、
(そんなの GHz オシロでしか見えませんね^^;)
(12) 29 mV / 1 ns = 29 V/us
ですので、オペアンプにそこまで大それた
性能を求める必要は無いはずです。
調子に乗って相当長くなってしまいましたね。
こんなところにしておきます。
40K のγ線、見えるといいですねー^^

この回答への補足
追加での質問です。
下記のキットで減塩しお(280g内、塩化カリウム73g)に近づけてパルス出力をオシロで確認しました。
7mVpp程度のノイズが常時出力されているだけでパルス状の信号は全く観測されません。
放射線原に対して、このキットの感度が低いのか、正常動作していないのか、意見をお聞かせください。
数十ベクレル程度の放射線ではシンチを使わないと検出できませんか?
キットのHP
http://www.radiation-watch.org/p/blog-page.html
質問に対してご丁寧な回答を戴きありがとうございます。
放射線計測関連のお仕事をされている技術者の方だと推測致します。
通常では知り得ない情報をわかりやすく教えていただき感謝いたします。
頑張って自作の線量計を作ってみます。
No.3
- 回答日時:
おはようございます。
せっかくお返事を頂きましたし、結構本気で色々お考えのようですので
色々と補足をば。
まずシンチレーターの話ですが、
国内でシンチレーター単体を個人に売ってくれるところがあるかは不明です。
このご時世ですから、探せばあるのかもしれませんが。
とりあえずシンチと言って私が真っ先に思いつくのは応用光研です。
http://www.oken.co.jp/web_oken/
私は一応この手の業界の人間なので
この会社から法人として購入することはあるのですが、
個人購入の経験はもちろんありません。
ただ、以前『My シンチ』が欲しいなぁ~などと思って(アホです^^;)
ちょっと尋ねたところ、個人でも対応できるかも的な話はありました。
原発の件が起きるずっと前ですが。
まあシンチは置いておくとして、
フォトダイオードの半導体検出器ですが、
とりあえずまずは可視光によるノイズを防ぐための厳重な遮光ですね。
No.1 の方が載せてくれた記事を見るとアルミテープか何かを巻いているようですが
テフロンテープとかブラックテープとかの方がよい気がします。
テフロンは F と C の化合物なので Al よりも原子番号が小さく、
実はβ線の遮蔽材という観点でも悪くないです。
(βシールドには普通は C, H, O が主のアクリルが使われます。)
それから、やっぱりボトルネックは読み出し回路の方でしょうね。
単にアンプを噛ませるだけではきっとダメです。
半導体というのは放射線に対するタイムレスポンスが速く、パルス幅も狭いです。
これをうまく拾うためには、検出器のすぐ後段に
『電荷有感型』のプリアンプを噛ませるとよいです。
回路全体のクオリティはこのアンプの性能にかなり左右されます。
(私も以前これに泣かされた記憶があります;;)
電荷を電圧に変換する部分なので検出器から遠いとパルスが鈍りますし、
一番ノイズも気にしたい部分かなと思います。
この手のプリアンプの出力波形は、だらだらと長いテールを引きます。
ですので、メインアンプの際に一度波形を整形する必要があります。
具体的には、微分回路を通してテール部分を捨てつつ増幅し、
そのあと積分回路を通して極端なピークをならします。
このようなアンプは『シェイパー』とか『シェイピングアンプ』と呼ばれます。
その後、ある閾値以上の波高(電圧)のパルスのみを拾って
ロジックに変換するディスクリミネータ(いわゆるコンパレータです。)
を噛ませます。IC だとこんなのとか↓
http://www.analog.com/jp/special-linear-function …
で、最後はそのロジックパルスを
カウンタ回路で計数すれば完璧かな、と思います。
まとめますと、
[フォトダイオード]→[電荷有感型プリアンプ]→[シェイピングアンプ]
→[ディスクリミネータ]→[カウンタ]
といった感じです。
思わず長々と妄想を語ってしまいましたが、
ここまでまともなものが作れたらなかなか凄いと思います。
可視光用のフォトダイオードだろうが、
素子の個性があろうが間違いなく放射線は見えます。
ご参考までに。
応援しております。^^
ではでは。
追加情報ありがとうございます。
質問です。
シンチレーターはいくら位の部品なのですか?
直接メーカーに訊けばいいのでしょうが参考に教えてください。
数千円?1~2万円?それ以上?
『電荷有感型』のプリアンプとはどのようなアンプでしょうか?
オペアンプで構成できますか?
検出パルスの幅が狭いとのことですが、スルーレートはどの程度まで
必要でしょうか?あるいは、およそのパルス幅はどの位でしょうか?
すみませんが御回答ください。
よろしくお願いします。
現在、線原としての減塩しおの到着待ちです。健康食品も扱っている
ドラッグストアでも扱っていなかったのでネットで注文しました。
これがくれば実際のパルス幅がオシロで見ることができるのですが。
No.2
- 回答日時:
フォトダイオードは、
入射した光によって素子内部の原子が電離され、
それを電流として取り出すことで光を検出する半導体素子です。
X線やγ線も光ですから、原理的には同じことを起こすことが出来ます。
荷電粒子線(α, β, など)の入射でも電離は起きますから、
検出できるのは実は光に限ったことではありません。
よって、検出が可能か不可能かで言えば『可能』です。
ただし、普通のフォトダイオードの感度波長はおっしゃるとおり 数百nm ですよね。
たとえば、浜ホトの製品で直接放射線検出に使えそうなのはこんなところでしょうが、
感度はやっぱりそんなもんです。
http://jp.hamamatsu.com/products/sensor-ssd/pd04 …
これは無論可視光を検出する目的で作られているからです。
137Cs の 662keV γ の場合、λ = 1.9 pm くらいですから、
この波長領域での検出効率はかなり低くなるでしょう。
せっかくとらえた放射線のシグナルが可視光によるノイズに埋もれないように
しっかり遮光しないとダメでしょうね。
No.1の方の回答にもありますが、
フォトダイオードを放射線検出に使う場合、
シンチレーターというものの後段につけて使うのが普通です。
シンチレーターは、放射線がぶつかると光る物質です。
(光量によっては普通に目で見えます。)
この光は可視光なので、フォトダイオードをくっつけておけば
ばっちり電流に変換してくれるわけです。
シンチレーターにも結構種類があって、
無機結晶(NaI, CsI, BaF2 など)はたしかに高価ですが、
プラスチックのものもあってこれは比較的安いです。
まあプラスチックはγではあんまり光りませんが…
また、はじめから放射線を測る目的で作られた半導体素子もあります。
ORTEC なんかが有名ですね。
http://www.ortec-online.com/download/ULTRA.pdf
ただし、これも遮光しないとで使うと壊れます^^;
線量計の動作確認は…どうなんでしょう。
私は最近出回ってる簡易線量計をいじったことはないんですが、
宇宙線(ミューオンとか)には反応しないんですかね?
もし反応するなら、外の高いところで測ったときと地下室で測ったときとで
計数に差が出るはずですが。
色々参考になる情報を教えて戴きありがとうございます。
ネットで買ったキットの動作確認もしますが、フォトダイオードとシンチレータ
を使って自分で作ってみたくなりました。とりあえずはパルス信号が得られれば
検出の確認ができるのでそのあと、計数処理を考えればと思います。
ただ放射線測定用のホトダイオード意外の可視光用の素子の場合、素子のバラツキで
かなりな検出感度の差ができそうですね。ただ単にアンプしてもノイズに埋もれて
しまう場合もありそうです。
No.1
- 回答日時:
放射線によりキャリヤが発生すれば検出できるでしょうが、感度は低そうです。
作っている人もいます。
http://einstlab.web.fc2.com/Xdetector/Xdetector. …
普通はシンチレータで放射線を可視光に変換してフォトダイオードで検出します。
問題はシンチレータの入手方法で、本物はかなり高価です。
興味が有るなら検索してください。
放射線源として簡単に入手できるのはカリウムを多く含む減塩塩です。
http://tousekirestaurant.blog41.fc2.com/blog-ent …
自然のカリウムはわずかですが放射性のK40を含みます。
どれぐらい放射線を出すか計算してくれた人がいます。
http://airvariable.asablo.jp/blog/2011/09/07/609 …
それによると 8112.9ベクレル/kg です。
減塩塩一瓶中のカリウムは約25gなので、一瓶で200ベクレルになります。
これは360度全方向への放射なので、検出できるのはこれの数十分の1になるでしょう。
バックグラウンドに対しては同じか数倍程度にはなるでしょう。
ありがとうございます。
ネットで購入した線量計のキットが適当な線原がないため、本当に検出できるの?
と疑っていました。減塩塩で実験してみます。
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