10秒目をつむったら…

民法193条と所有権に基づく返還請求との関係がよくわかりません。

原権利者帰属説に立った場合には、193条により第三者が即時取得の要件を満たした場合でも二年間は原権利者に所有権が帰属することになることまではわかります。

わからないのはこの先なのですが

原権利者帰属説に立った場合、所有権に基づく返還請求を原権利者が行ったときに、相手方から即時取得を抗弁として対抗された場合、193条の主張はそれに対する再抗弁になるということでしょうか?

それとも選択的主張として回復請求ができるということなのでしょうか?


もしどなたか詳しい方がいらっしゃったら教えて頂ければ助かります。

よろしくお願いします。

A 回答 (1件)

 原権利者帰属説というのがよく分からないので、確定的なことはいえませんが・・・



 一応、原権利者帰属説というのが、193条は、占有者が盗難または遺失の時より2年内に回復請求を受けないときに限り、初めてその物の上に行使する権利を取得するという趣旨である、とする大審院大正10年7月8日の判例の考え方と同じものとであるとの前提で考えます。

 この場合、原告Xは、請求原因として、
   X所有+Y占有 を主張するというのが、基本的なパターンだと思います。

 しかし、実は、ここに落とし穴があります。「X所有」というのは、要件事実論にいう「要件事実」ではありません。正しくは、「Xの所有権取得原因足る事実」を主張しなければならないのです。

 例えば、「Xは、売主Aとの間で、平成○年○月○日に締結した売買契約により、目的物を代金○万円で購入し、引渡しを受けた。」という事実を主張することが、簡単に「X所有」といっていることの本来の内容です。

 これ自体が、実は、即時取得の主張です。ここで、売主Aが、目的物の所有者である事実は主張する必要がありません。その代わりに、本来売買による所有権取得の場合には主張する必要のない「引渡しを受けた」の主張が必要になります。

 それはともかく、この事実に対して、Yは、即時取得の主張として、「Yは、売主Bとの間で、平成×年×月×日(平成○年○月○日よりも後の日)に締結した売買契約により、目的物を代金×万円で購入し、引渡しを受けた。」と主張します。

 このYの主張事実は、Xの所有権取得の主張事実と完全に両立し、かつ、Xの主張事実による所有権取得という法律効果を事後的に消滅させる法律効果をもたらすものです。そして、このことにより、訴訟物である「(判決の基準時における)所有権に基づく返還請求権」を消滅させることになります。

 したがって、Yの主張する即時取得の事実は、Xの所有権取得の主張に対する抗弁になります。

 これに対して、Xは、「Xは、平成△年△月△日(平成○年○月○日よりも後で平成×年×月×日よりも前の日)、目的物を遺失した。」と主張します。

 この主張事実は、X主張の請求原因事実とは重ならず、Y主張の即時取得の抗弁とも両立し、かつ、Y主張事実による所有権取得の「即時に」の部分の法律効果を不発生にする(2年先になる)という法的効果をもたらすものです。したがって、「遺失品・盗品である」との主張事実は、即時取得の抗弁に対する再抗弁になります。

 質問にある「選択的主張」ということが、私にはよく分かりませんが、以上の関係は、「目的物の所有権に基づく返還請求権」という同一の訴訟物の発生・消滅・不発生をめぐるやりとりですので、異なる訴訟物を選択して請求できる、「選択的請求」の問題でないことは明らかです。

 また、同じ訴訟物たる権利を発生させる原因がいくつかある場合、あるいは、その訴訟物たる権利を消滅させる事実がいくつかある場合に、そのいずれかを主張するという意味での「選択的主張」でもありません。「遺失品・盗品」であるかどうかによって、その目的物の「所有権に基づく返還請求権」の発生要件が異なっているわけではありません。返還請求権の要件は、「X所有+Y占有」で完全に尽きているのであって、それ以外の事実を主張する必要は全くありません。

 「遺失品・盗品」の主張をしなければならないかどうかは、Yが、即時取得の主張をして初めてその必要が生じるもので、請求原因段階で主張する必要はありません。Yの抗弁は、賃借権(賃貸借契約に基づく占有正権限の主張)かもしれないのであって、そうなったらそうなったで、Xが再抗弁として主張すべき事実は全く変わってきます。そのような事実を、請求原因段階で先回りして主張する必要はないのです。

 ただ、よく分からないのが、193条にいう「2年」の扱いです。
 条文の体裁からすると、権利行使期間の制限を定めた規定に見えますので、再抗弁としては、遺失品・盗品であるとの主張に加えて、「訴訟の提起日は、平成△年△月△日から2年が経過していない。」という事実を合わせて主張しなければならないとする方が、素直に思えます。

 しかし、前記判例の趣旨からすると、「遺失・盗難の時から2年が経過した。」事実が、Yの所有権取得原因のようにも理解できますので、そう理解した場合には、2年は、Yが、Xの「遺失品・盗品」の再抗弁に対する再々抗弁として主張すべき事実だという解釈も成り立つように思います。(この辺は、要件事実論の本が手元にないので、何ともいえません。)

 また、さらに突き詰めれば、時効取得では、10年の時効期間と20年の時効期間は、選択的に主張できるということ(10年の時効取得が過失の主張によって潰されても、同じ抗弁のレベルで20年の時効も主張できる)になぞらえると、実は、即時取得の抗弁は、「即時」即時取得と、「2年」即時取得の、いずれかを、同じく抗弁のレベルで主張できる2本建てなのかもしれません。(要するに、2年の経過は、再々抗弁ではなく、抗弁レベルだという話です。この辺の理解も、私には十分ではありません。)
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この回答へのお礼

ものすごく丁寧な説明ありがとうございますm(_ _)m
ここまで丁寧な説明をしていただいて恐縮です。
おかげさまでよく理解でき、疑問が解消されました。

盗難の事実は再抗弁になるわけで、回復請求とはつまるところ復活した所有権に基づく返還請求であって、別個独立の法定請求権ではないと
いうことですね。

補足の話も大変面白くて興味をそそられました。

まだまだ私は勉強不足ですね。

本当にどうもありがとうございます。
非常に助かりました。

お礼日時:2013/10/22 12:51

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