
カントの哲学、特に感性的認識においての、現象を知覚する時点から悟性による認識までのメカニズムがいまひとつ分かりません。下記の点が特に気になっているので、教えていただけないでしょうか。
(1)図式と構想力との関係。
(2)『判断力批判』では「構想力と悟性の遊動」と書かれています。これは構想力がデータを送り、悟性がデータを受けようとするときにうまく一致せず、それゆえ美を感じるということなのだと理解していますが、では通常美的判断でない状態では、構想力はどんなデータを送り、悟性はどんなデータを受けているのでしょうか?
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
お礼欄、拝見しました。
うーん。ここらへんめちゃくちゃややこしいとこなんですよ。
検索してもいいサイトが見つからなかったんで、がんばって書いてみよう。
ただあんまり信用しないでください(参考の一助というぐらいで)。
◎直観が赤くて丸いものを認識する
↓
◎悟性の中で、カテゴリーがスタンバイ:カテゴリーっていうのは、判断の機能です。
・分量を判断(すべてのものか、特殊なものか、それともこのひとつか)
・性質を判断(これは~である、といえるものか、これは~でない、といえるものか、これは非~である、といえるものか)
・ほかのものとの関係を判断(いついかなる場合であってもこれは~である、といえるのか、もし…なら、~である、という条件付きのものか、これは~か…のどちらかである、といえるのか)
・様相(ものごとのありよう)を判断(~であるだろう、といえるのか、~である、といえるのか、かならず~でなければならないといえるのか)
↓
◎カテゴリーがデータに適用できるように、図式というアプリケーションが起動する:図式はカテゴリーを感性化するよう、変換する機能です(直観は空間と時間しか認識できませんから、カテゴリーを空間と時間に変換していくんです)。
・分量のカテゴリーの図式は数である(数という概念は時間に結びついていくから)。
・質のカテゴリーの図式は度である(時間を充実する感覚の有無によって判断できるから←これは相当苦しい)。
・関係のカテゴリーの図式は時間順序である(時間との関係で因果関係は把握できるから)。
・様相のカテゴリーは時間総括である(~であるだろう、といえるのは、いずれかの時間においてそうなる、ということであり、~である、といえるのは、一定の時間においてそうなる、ということであり、かならず~でなければならない、というのは、あらゆる時間においてそうなるということだから)。
↓
◎アプリケーションが情報を取り込んで、カテゴリーに分類。判断成立。
え?図式って空間がないじゃん、って思うでしょ?
空間は外的現象の形式であって、心理的な内的現象は、空間的なものではない、とカントは考えた。
それに対して時間は、外的、内的を問わない、あらゆる現象にあてはまる。
したがって、カテゴリーが感性化されるという場合、カテゴリーは時間という形式と結びつくと考えたんです。
だから、先験的図式は悟性のカテゴリーに従った「先験的時間限定」ということになります。
質問者さんのあげられた例に即すると、数量は理解できるのですが、「赤い」「丸い」という性質が、カントの図式のカテゴリー表に照らし合わせてどのように判断されるのか、私にはちょっとよくわかりません。
ただ、#1の回答ではっきり書かなかった部分の判断の流れを詳しく書くと、こうなると思います。
おおよその流れを汲み取っていただければ良いのではないかと思います。
『純粋理性批判』というのは、いわばカント哲学の“ルールブック”みたいなもので、ひとつひとつ言葉を措定し、意味範囲を規定しているので、これを押さえておかないと、『実践』『判断力』もよくわからないことになってしまいます。
ただ、実際、読んでいくのは大変です(^^;)。
私の場合、カント自身による『純粋…』の要約である『プロレゴメナ』と岩崎の『カント』を先に読んで、岩崎の本はいつも手元に置いてアンチョコとして活用しつつ『純粋…』を読みました。ナビゲーターがないと、やっぱりちょっと辛かったです。
カテゴリーも含めて分かりやすい詳細な説明までしていただいて、本当にありがとうございました。おおよそそれぞれの能力の機能を理解できた...ような気がします。ghostbusterさんの解説を参考に、あとはカントを読みながら自分で考えていきます。岩崎武雄の本も参照してみますね。
No.1
- 回答日時:
どこまでさかのぼって説明したらいいのかちょっとよくわからないので、とりあえず一番大元から書きます。
よく理解している部分であれば、読み流してください。『純粋理性批判』のなかで、カントは、人間がどうやってものごとを認識するのかを明らかにしていきます。
それは、直観の能力としての感性と、思惟の能力としての悟性の共同の働きである、と。
認識をおこなおうとするとき、思惟の能力が必要であることはいうまでもありません。
けれども、人間は神ではないので、なにもないところから思惟を生み出すことはできない。
思惟が可能になるためには、素材が必要です。
この素材を与えるものが、感性による直観です。
人間の認識が普遍的であるということは、私たちの内側に、先天的(アプリオリ)な認識形式が存在しているからだ、とカントは考えます。
人間は先天的に空間と時間を直観する能力が与えられている。
直観が集めてきたデータを分類し、判断するのが悟性です。
この悟性に与えられた先天的な概念が、カテゴリーと呼ばれるものです。このカテゴリーには、分量、性質、関係、様相の四種類があり、さらにそれぞれ三つずつ分かれていますが、ここでは触れません。
さて、悟性は、どうやって判断をおこなっているのか。
人間が判断を下すためには、直観の能力で拾い集めてきたデータに目を通し、それを総括しなければなりません。
単に直観のみで判断の対象が与えられるのではなく、人間の主観の自発的な働きが、対象を作り上げるのです。
この働きをカントは「覚知の総合」と呼びます。
まず、直観が集めてきたデータが、一瞬にして消えてしまわないよう、頭の中に留めておかなければならない。眼前になくなったとしたら、その表象をもう一度再現しなければならない。この再現の動きが「構想における再現の総合」です。そして、ものを再現する能力が「構想力」です。
ところが構想力によって再現した表象が、元の表象と同一であるとどうしたらいえるのか。
これを再認識する働きが「概念における再認識の総合」です。
そしてなによりも大切なのが、意識が瞬間、瞬間に離ればなれになってしまわないよう、「わたしは考える」という意識を統一させているはたらきである「先験的統覚」です。
この働きこそ、悟性の根源的な働きにほかならない、とカントは考えたのです。
さきほど、目の前にないデータを再現する能力を「構想力」と呼ぶ、と書きました。
けれども構想力の働きは、再現するだけではありません。
個々バラバラな再現した表象や目の前にある表象を、まとめあげ、統一した対象へと作り上げていく構想力を、とくに「産出的構想力」と呼びます。
こうやって先験的統覚の働きのもとで、直観によって集められたあらゆるデータは、産出的構想力によって「対象」となり、カテゴリーに適用されていきます。
これが人間がものごとを判断していくメカニズムである、とカントは考えたのです(この部分は一般に先験的演繹と呼ばれる部分です)。
こうやって考察をおこなったあと、カントは具体的に、「どのような先天的総合判断が成立するか」を見ていきます。
「図式」が出てくるのは、この部分です。
私たちが三角形といわれたとき、構想力のはたらきによって即座に三角形を思い描くことはできるけれど、それは一定の大きさを持った具体的な三角形であって、抽象的な概念としての「三角形一般」ではありません。そんなことは現実には不可能です。
にもかかわらず、一定の大きさをもった具体的な三角形を媒介として、三角形一般の概念を理解している。
それはなぜか。
私たちは、「三角形」と聞いて思い浮かべる前の段階に、すでに三角形一般の表象を持っているからである、とカントは考えます。
このような私たちがすでに持っている表象が「図式」です。
図式が、先に述べた産出的構想力の所産であることは言うまでもありません。
三角形一般の図式が存在する、ということは、それに先だって、概念の図式が存在するということです。つまり、カテゴリーの図式(先験的図式)が存在することにほかならない。
こうやって、図式が媒介することで、まったく別々のものであるカテゴリーは直観と結びつくのです。
以上のことから
(1)図式は産出的構想力の所産である。
(2)>構想力がデータを送り、悟性がデータを受けようとするとき
悟性はデータの受け手ではありません。
データを集めてくるのは「直観」の働きですが、先にも述べたように、以下一切の働きは悟性、とくに先験的統覚によるものです。
「構想力」は、データを再現する能力、さらに再現を超えて、あらたに作り上げる能力が、とくに産出的構想力です。
通常の判断のメカニズムは先に述べたとおりです。
*おもに依拠しているのは、学生の頃『純粋理性批判』の講読をやったときに作ったノートですが、『カント』(岩崎武雄 勁草書房)も参考にしています。わかりにくいところがあれば補足してください。
また、読み方の誤っている部分がありましたら、どうかご指摘、よろしくお願いします。
用語の定義から丁寧な解説までありがとうございます。だいぶ知識が深まったような気がします。今まで構想力と悟性とは違った能力だと誤解してたことが分からなかった原因かも…構想力も悟性の中のひとつの働きだということなんですね。何度も挫折してきた篠田訳の純粋理性批判をまたひっぱりだして読もうと思います。
ところで、
アプリオリな直観形式である時間と空間にしたがって認識(赤くて丸くていい匂いのするものを感じる)
↓
構想力と図式の適用(これは今までに見たことがあるものだ…赤くて丸くていい匂いのするものは林檎であってこれもそのうちの一種だろう)
[規定的判断?]
↓
カテゴリー「現実性:これはリンゴである」
お教えくださったとおり、具体的な事例にあてはめて考えてみたのですが、自信がもてません。間違って解釈している箇所がありましたらお教えください。
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