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テクニカルディレクター、チーフデザイナー、チーフエアロダイナミシストってなにが違うんですか?
空力を重視した今のF1では、空力を理解していなければマシンをデザインすることは出来ないと思うので、チーフデザイナーさえいればいいと思うのですが、わざわざそれとは別にチーフエアロダイナミシストという人物が設けられています。。
もっといえば、テクニカルディレクターにしても、マシン開発の方向性などを決定するということはデザインするわけですから、チーフデザイナーという別の人間を設けているのも何か違和感を感じます。
推察でもいいので、どう違うのか説明できる方はいらっしゃいますか?

A 回答 (1件)

チームによって業務が多少変わるのですが・・・・



※チーフデザイナー
 主任設計者のこと。車両レイアウトから強度・剛性計算、単品の図面までを請け負う設計部隊の親分です。
 ここでは機械設計の知識だけでなく、車両運動力学やサスペンション・ジオメトリの知識と、それに大規模なシミュレーション(ADAMSとかCAR SIMなど)を使いこなす知識が必要です。(後述する流体シミュレーションもそうですが、現在のシミュレーションソフトは『設計ツール』の域を逸脱しているほど複雑で専門知識が必要とされます。ADAMSなどは、操作出来るというだけでオペレーターとして結構な収入が得られるほどです。)

※チーフエアロダイナミシスト
 昔はチーフデザイナーと、チーフエンジニア、チーフテスターなどが分業していたのですが、空力が特に重視されている今日のレーシングマシンでは、空力部隊だけを切り離して独立部隊としています。チーフエアロダイナミシストとは、この空力部隊の親分です。
 彼らの仕事は、要するに流体力学的見地からスタイリングを決めるワケですが、その業務には実験・解析・シミュレーションが含まれます。つまり、単に流体力学、水力学の知識があるだけでなく、風洞実験装置に長けており(信頼に足る風洞実験を実施するには、データの処理方法まで含めてこの巨大な試験機に精通している必要があります。またクルマの空力設計の初期段階では相似則を合わせた模型を作らなければならず、この模型製作が既にかなりヤッカイです)、NACAの実験データなど、航空機関連の過去のデータや論文の知識も必要です。
 またこちらも当然、STREAMやPHOENICS‎などの複雑な流体シミュレーターを動かす知識が要求されます。

※テクニカルダイレクター(テクニカルデレクター)
 ダイレクターとは監督のことで、つまり設計屋や空力屋がバラバラに進める仕事をまとめ、開発スケジュールを管理するポジションです。
 かつて、チーフデザイナー一人と図面引き数人で1台のマシンを設計していた時代はダイレクターなどどうでもよかったのですが、現在の様に多くのスタッフが部隊毎に分かれて並列作業で1台のクルマを作る場合、各部隊の成果の管理や車両完成後の実験のスケジュールなどを管理するスタッフが必要です。

※実はもう一つあって、チーフテスター若しくはチーフエンジニアというポジション
 各部品の室内試験や完成車両の走行実験を実施する部隊のボスです。
 レーシングカーといえども、設計して作りっ放しでは現在のレースでは通用しません。現在では製作した各部品単体や完成した車両の性能評価(つまり実験)がMUSTです。
 ここでは、実験手法やそれに使う各種計測器、それに取得データの処理方法とそのデータの分析方法に関する知識が要求されます。
 実験部隊は、チームの所帯が比較的小さいF1の世界では永らく専任担当グループを置いていませんでしたが、例えば`30年代から`50年代にかけて最強だったメルセデスのチームにはルドルフ・ウーレンハウトという伝説の実験エンジニアがいて、メルセデスのレーシングカーを無敵のマシンに育て上げました。
 メディアにはチーフデザイナーや空力担当エンジニアばかりが取り上げられ、彼らがいれば最速のレーシングマシンが作れる様に見えますが、実は実験と分析、そしてそのデータを正しく評価することこそが、最強マシンを作る最優先工程だと言っても過言ではありません。
 極論すると実験部隊さえ正しく機能していれば、多少マヌケな設計のマシンにも十分な戦闘力を与える事が可能だということです。
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この回答へのお礼

詳細で非常に分かりやすく説明頂き、ありがとうございます。
すごく納得することが出来ましたし、もやもやしていたのがスッキリしました。

お礼日時:2016/10/22 22:32

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