硫酸水溶液で白金電極の典型的なCV(サイクリックボルタンメトリー)を測定しています.
このときスキャン速度を100mV/sにすると文献値と同じCV曲線が得られるのですが,スキャン速度を10mV/sにすると負電位側で還元電流が流れCVが歪んでしまいます(二重層領域が完全に還元電流側に入る).
おそらく原因は溶存酸素だと思います.Arバブリングを2時間以上したのですがダメなようです.ボンベに微量に含まれる酸素の影響かもしれません.
そこで質問です.
溶存酸素を完全に除く方法は無いのでしょうか?そもそもバブリングで溶存酸素を完全に除去することは可能なのでしょうか?
10mV/s程度のスキャン速度で白金のCVを測定した文献,論文を御存知の方は教えてください.
よろしくお願いします.
(実験条件)
WE; Pt, CE; Pt, RE; Ag|AgCl or Pt
0.5M H2SO4
scan range;-0.2 ~ 1.2V vs.Ag|AgCl
No.3
- 回答日時:
たしかに残留酸素が見えている感じですね.
そのようなセルではどうしても電極をさしこむ隙間とかから空気がかなり入ります.そういう状況では上部にアルゴンを流すのも,気休め程度の効果しかありません.ある程度気密のとれるセルを使い,その上で上部にアルゴンを流すというやり方でないと.
ちゃんと設計したセルがなくビーカーのような容器を代用するのであれば,注ぎ口のついていないものを使いましょう.あるいは粘土のようなもので漏れがでないようにします.
そこに,たとえばアクリルのような加工しやすい板に穴を開け,シリコンゴム栓のようなものを使って電極を保持するようにして,これをビーカーにかぶせるように乗せます.
当然これでも漏れはあるので,上部の隙間にはアルゴンを流します.
この程度でそうそう問題になることはないレベルにできるはずです.
ピロガロールトラップを通したアルゴンや窒素を使っても,外気が漏れ込むようなセルを使う限り意味がありません.
できることなら今後のためにある程度の気密のとれるセルを作るか買うかしたほうがいいですよ.
アドバイスありがとうございます.
Arを流してても気休め程度ですか・・・.どうやらセルの設計を甘く見ていたようです.参考になりました.気密性の高いセルをがんばって手に入れたいと思います.
No.2
- 回答日時:
白金はセルを含めた機械の動作試験目的以外で取ることがなかったのですが
塩化銀参照電極の場合.塩素イオン(古い名称を使います)の影響がでたはず(pptで効いてくる)。どうしても硫酸水銀電極が必要です。石鹸と油とコロイドに注意してください。
ずれるのでおかしいと調べたら.イオン交換水の初流をもう一度原料水として加えていたということがありました。
既に或ようにセルの影響がありますので.陽極水と陰極水の動きに注意してください。
機械の漏れ電流が犯人だったときがあります。バブリングがうまく行かなくて.部屋の電気(乾燥機や照明等)を全部けして.機械の操作をプラスチック製ピンセットで行って(人がアンテナになって誘導を拾う。ref線の近くに手があるとおかしくなる).はじめて平衡電位付近のサイクリックをとれたときがあります。
回答ありがとうございます.
白金を疑似参照極に用いたときも同じ症状でしたので塩化物イオンの影響ではないと思います.おそらく溶存酸素の拡散律速電流が重なっているのかと.
陽極水と陰極水は,すいませんよくわかりません.セルの設計は考えてみます.
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
> 溶存酸素を完全に除く方法は無いのでしょうか?
本当に完全に除くのはかなり難しいですが,CVレベルならアルゴンなりなんなりを適当に除酸素処理すれば十分な結果が得られるはずです.
通常は,活性化銅カラムを通すか,ピロガロールトラップで十分な結果が得られるはずです.活性化銅カラムは用意が面倒ですが,ピロガロールトラップは5MくらいのNaOH水溶液にピロガロールを溶かせるだけ溶かした液を洗気瓶に入れてそこを通すだけなので,比較的簡単に試すことができます.
しかし,一般的に言えば,このレベルの除酸素が必要なのは,反応物が還元体で長時間の通気によって,積算的に酸化される場合で,短時間の一発の測定ではボンベ出しのアルゴンでもさほど問題はないはずです.
これでもだめなら真空ラインに接続できるようなセルを使って,きちんと空気を遮断する必要があるということでしょう.しかし,よほどセンシティブな系でない限り,ピロガロールトラップで十分な結果が得られると思います.まあ,セルの設計がどうしようもないとかは除きますが.
掃引速度が遅い場合のCVがおかしくなりやすい原因は,多くの場合は振動による対流です.とくに帰りの掃引の結果がおかしい場合は,まずはこれを疑うべきでしょう.つまり,振動によって溶液が動いてしまうため,本来電極表面に蓄積されるべき行きの掃引の生成物がバルクに散逸してしまう,等の効果です.ただし,このようなことがおこる場合は行きの掃引についても拡散限界部,つまりピークの後の減少する部分がきちんと減少していないという結果を伴うはずです.
もうひとつ考慮するべきなのは電極自体の活性が落ちるケースです.とくに最初の掃引時の反応生成物の吸着性が強い場合,行きはともかく帰りの掃引が不可逆になりやすいことがあります.これも積算生成量等に依存するので,掃引速度が速い場合には現れにくい場合もあるのです.
> 10mV/s程度のスキャン速度で白金のCVを測定した文献,論文を御存知の方は教えてください.
経験的にはだいたい10mV/sというのは振動の影響が見えるかどうかの境目くらいの速度です.20mV/s 以上ではよほど環境のひどいところでなければ振動の影響はあまり重大になりません.50mV/sで問題になるとしたら,それは相当やばいと言っていいでしょう.しかし,5mV/sで対流が無視できるような実験環境はなかなか少なくなってくるのではないでしょうか.私の現在の実験環境では10mV/sは現実的な測定下限です.これでも厳密には対流の影響は出てしまっています.5mV/sでは歴然とわかるので,このくらいのデータは対外的に見せることはありません.
回答ありがとうございました.
だいたい表面酸化物の還元ピークよりも負電位側だけが掃引の行きも帰りもきれいに還元側にシフトしているので,振動や対流の影響ではないと考えています.
ビーカーに電極をつっこんでパラフィルムで隙間をふさいだ程度なのでセルの設計は微妙かもしれません.一応,測定中も溶液上部にArを流し続けました.
とりあえず,ピロガロールトラップを試してみます.
文献はなさそうですね.対外的にだしていなくても同様のCVを測定した経験があるなら,結果がどうなったか教えてください.お願いします.
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