「『甲陽軍艦』は、信玄に仕えた山本勘助の子で、京都妙心寺の僧が、遺老の話を収録したというが、その多くは信用できない」
「信玄の家臣高坂昌信に仮託して、江戸時代の軍学者小幡勘兵衛景憲が著したもの」
とされ、史料としての信憑性は低いと言われてきた。
「偽書」とまで酷評されたこともある。
ところが、国語学者の酒井憲二氏が、1994年から1998年にかけて『甲陽軍艦大全』全7巻を刊行するにおよび、状況は大きく変わってきた。
それまでにも、高坂昌信が後述し、それを猿楽師の大蔵彦十郎と、高坂の甥春日惣次郎が筆録したといわれたこともあったが、その事がほぼ確定した。
つまり「甲陽軍艦は偽書」といったこれまでのレッテルが徐々にはがされ、史料として使える部分もあるというように変化してきているのである。
(歴史読本より転載)
長年、架空の人物とされていた山本勘助も『市河文書』などに見えており、偽書で名高い『甲陽軍艦』はどれくらいの信憑性がある書物なのでしょうか?
No.1
- 回答日時:
というか、
小幡景憲が書いたにしても、誰が書いたにしても、
甲州流軍学を伝えるものとしては
昔から史料価値はあったのです。
”偽書”というのはやや大げさで、
”後世の筆”というだけのはなしですよ。
当事者ではない人が書いているので、
事実とは違う箇所がありますが、
嘘をつこうとしてそうしてあるというよりも
調べることができなかったというだけ。
信玄が・・とか高坂が・・と喧伝されたのは
甲州流が徳川家の公式な軍法になったからで、
ま、誇大広告というぐらいでしょう。
江戸時代の資料としては数少ないものの一つです。
ちなみに戦国時代のこの手の資料というのは
逆に皆無に近いです。
日本では文字情報の蓄積と流通が、
同時代のヨーロッパよりも遅れてたので
江戸時代以降に発展する紙文化の興隆を待たねばなりません。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
質問者様の前提
「偽書で名高い『甲陽軍艦』はどこまで信用できるのか?」
がおかしいですね。この書物は、「太平記」や「平家物語」などと同じような「軍記もの」であり、戦国時代の武田氏の内部事情を知る者が同時代から少し後に書いたことは確実で、決して「偽書」ではありません。
「偽書」というのは、後世(例えば20世紀)になってから、過去の時代(例えば17世紀)に書かれたように意図的に捏造して世に出された書物を指します。例えば「武功夜話」は、20世紀になってから「偶然発見された17世紀初頭の書物」として世に出ましたが、確信的に後世に作られた「偽書」である可能性が高いとされております。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E5%8A%9F% …
さて、「太平記」や「平家物語」に書いてあることが全て史実とは誰も考えていませんが、基本的には史実に沿っていると考えられています。甲陽軍鑑もそれと同程度の価値はあると考えられ、戦国時代について歴史家が書いた本に
「甲陽軍鑑にはこのような記述がある」
「それを裏付ける同時代の史料としてはこんなものが、否定する史料としてはこんなものがある」
といった形で引用されます。これは、「甲陽軍鑑にある程度の信憑性がある」というのが定説であるからです。
歴史の流れを同時代の史料(手紙、日記など)で完全に構築するのは不可能です。ですから、「日本書紀」や「平家物語」や「太平記」や「甲陽軍鑑」のような「史実に沿っていると認められた編纂物」で、歴史の大枠を把握するのです。
日本の古代史の根本史料である「日本書紀」にしても、いろいろな作為や矛盾した記述が混じっています。ですが、日本書紀を無視しては日本の古代史は何も分かりません。甲陽軍鑑もそれと同じことです。
最近は「甲陽軍鑑」の作者は、念宗という僧侶が呼びかけ人になり、その後、武田所縁の元たちが集まり、共同作業で書き上げたとう説が有力らしいですね。
「甲陽軍鑑」は、山本 勘助 が生前の資料がもっとも信頼性が高く、山県昌景が生前の資料にはある程度の信頼性があるとか。
長篠の合戦で、山県昌景の配下の武将が大量に死んだので、それ以後の情報の入手が困難となり、極端に情報の信頼性が低下したらしいですね。
偽書ではないと分かりました。
ありがとうございます。
No.4
- 回答日時:
まず、甲陽軍鑑の作者については、現在でも確定されていません。
有力なのは結局「何らかの原本があった可能性は高いが高坂がかかわっているかは不明(かかわっていない説もある)、また、小幡景憲の執筆とされているが実際のところ不明」という状態で、現状「さらなる研究が必要」という状態です。
正直、歴史読本の書き方が悪いですね。
まず、甲陽軍鑑は偽書ではありません。すでに言われているとおり、偽書というのは後代の人間が(何らかの目的を持って)書き下ろしたものです。といっても40年くらいあとの場合は偽書とは言いません。なぜならばではその時代の人はまだ結構生きているわけです。偽書とは、そういった人が完全に絶えた、200年くらい後に書かれたものこそが偽書です。
さらに甲陽軍鑑は「軍記物語」「軍記」とか呼ばれるもので、本来的には資料ではありません。
武田流の兵法を伝えるための教科書みたいなもので、一次資料、つまり書簡やらなにやらといった当時の資料を基に誰か(小幡景憲とはいわないでおきましょう)が編纂したものです。そうですね、分かりやすく言えば甲陽軍艦は陳瞬臣氏が書いた「中国の歴史」のようなもので、(4000~年後にかかれたものか、40年後に書かれたかの違いはあれど)あくまで二次資料です。
それを(そういう意見もある的な注釈もつけず)偽書とするのは、それの筆者の見識に問題がある(偏っている)といわざるを得ません。
信憑性については、よく言われる言い回しで「非常に正確な部分もあるが明らかに間違っている部分もあり、内容には逐一検討が必要」というのがよく当を得ていると考えています。まあ、そういった程度の信憑性を保有していると考えてください。私は、鵜呑みにするのは問題はあるが、参考には十分なりえる、くらいにとっています。
ただ、完全に信用できるものではないというのだけは、今後も覆りません。なぜなら明らかな間違いが発見されているからです。
最近は「甲陽軍鑑」の作者は、念宗という僧侶が呼びかけ人になり、その後、武田所縁の元たちが集まり、共同作業で書き上げたとう説が有力らしいですね。
「甲陽軍鑑」は、山本 勘助 が生前の資料がもっとも信頼性が高く、山県昌景が生前の資料にはある程度の信頼性があるとか。
長篠の合戦で、山県昌景の配下の武将が大量に死んだので、それ以後の情報の入手が困難となり、極端に情報の信頼性が低下したらしいですね。
偽書ではないと分かりました。
ありがとうございます。
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