No.7ベストアンサー
- 回答日時:
ごめんなさい、ちょっと雑に書いてました。
パルメニデスが言ったのは「「在る」もののみが在り、「在らぬ」ものは無い」ということです。このことを認識することのなかに真理は存在し、思惟の対象となりうるものはただ「有るもの」のみである、と規定した。
この思惟と存在の同一律によって、彼は「在るもの」の本性をあきらかにします。
「存在は不生不滅で永遠です。なぜならば、もし存在が生じたものであれば、存在からか非存在からかのどちらかからですが、存在から生じたのなら、存在の前に存在はあったので存在が生じたことにはならないし、非存在から生じたのであるとすれば、非存在はもともと思惟されず、したがって、考えられないものであるから、それから存在が生じたなど、不合理としなければならない。こうして存在は、不生不滅、永遠でなければならないということになります」(今道友信『西洋哲学史』p.30-p.31)
この「在るもの」こそが真実在なのですが、感官というものは事物をその変化と雑多においてしかとらえられない。感官はただ誤りをとらえるのみであって、真理の認識は理性によってのみ可能であるという認識がでてきます。
弁証法の創始者とアリストテレスが呼んだゼノンは、このパルメニデスの教え子ですが、「真理の認識は理性によってのみ可能」というのは、かの「アキレスと亀」を見てもあきらかですよね。
ただ、ここに問題がでてきます。パルメニデスは「在るもの」は「在る」と言ったんですが、その「在るもの」がどんなものなのかはわからない。その存在そのものを考えることはできません。ここから存在論というのは根底に「存在そのもの」という難問を抱えることになる。
で、二百年くらい一気に飛んじゃうんですが、アリストテレスは弁証法を論理学として体系化しましたよね。実にこれがカントの時代まで続いていくんですから、すごいものです。ともかくアリストテレスに関しては見ておかなきゃいけないことは山のようにありますが、そこはさっくり飛ばして、ここで関係ありそうなところだけね。
アリストテレスが弁証論と分析論を区別したことはご存じですよね。この弁証論と分析論は「端緒へ向かう議論」と「端緒より出発する議論」と言いかえることもできます。
「ところが、いったんこのような区分がされるや否や私たちは次のような亀裂に当惑するはめになるでしょう。即ち、端初によって正当化される知と端初を発見するための知の間のずれをいかに克服するかということです。換言すれば、端初を発見するための知は未だ端初によって正当化されていないのに、何を以って端初を設定し得る知とみなされ得るのかという、まさに逆説的な大問題が生じるのです。アリストテレスが、「自分を永遠に思惟する思惟」を第一原理に置いたことがその典型となったように、伝統的な形而上学は「私は私を基礎付け得る」という causa-sui の性質を持つ自己言及的な原理を第一原理として端初に据えることによって、端初によって正当化される知と端初を発見するための知の間のずれを一挙に乗り越えようと試みるのです。…この「ずれ」は、トップダウン方式の理論化を究極まで推し進めていくと、必ず直面するだろうような難問を提供することになるのです」(青木克仁『認知意味論の哲学 ―コミュニケーションの身体的基礎』p.16)
「必ず直面するだろうような難問」というのは、だから「存在」をめぐってはいくつも出てきます。そもそも、出発点からそういう問題を抱えているわけですから。
だからこそハイデガーはパルメニデスまでさかのぼって、存在の意味について時間性から考えていくわけです(「それ」も、「それ」について書かれたものも、どう見ても読んだことがなさそうなのにも関わらず、くだらないなどと言える人は、存在論的アポリアを解決する方法をご存じなのかもしれませんね。だとしたら後学のためにその方法をぜひご教示いただきたいものです)。
先の回答でちょっと書いた「他者」のアポリアは、レヴィナスの「存在論は根源的か」『レヴィナス・コレクション』に出てきますし、「死」のアポリアは、まあいろんなところでいろんなふうに出てきます(笑)。パルメニデスのバリエーション、と言ったのは、そういう意味だったんです。
上で引用した青木の本は、こういうふうに続いていきます。
「 一見したところ無縁としか思えないこの伝統的形而上学の逆説が、実は、日常言語の批判的吟味による形式化という企ての中に回帰してくるのです。即ち、言語による世界の記述の妥当性が問題となっているときに、言語と世界の間の関係を妥当化するために、問題とされている当の言語を使うことはできない、という問題として回帰してくるのです。」(p.16-17)
まるでフロイトの無意識のごとく、この存在論のアポリアはいろんなふうに「回帰」してくる。
だったら、こんな「存在論」なんてもう放っておけばいいじゃないか、というと、そうもいかないらしい。存在論は「根源的」であるとされる。それはどうしてか。
「 数々の認識理論に対する存在論の優位は、このうえもなく明証的な事実に起因しているのではなかろうか。諸存在を結びつけたり、対立させたりする諸関係についての認識は、どれもすでに、これらの存在や関係が存在するという事実の了解を含んでいるのではなかろうか。この事実の意味を明らかにすること、それは、たとえ忘却というかたちでにせよ、われわれ各人が暗黙のうちに解決している存在論の問題をふたたびとり上げることであり、こうして、ある根源的な知が構築されるように見える。この根源的な知を欠くとき、哲学的、科学的認識ばかりか日常的認識をも含む、ありとあらゆる認識が幼稚なものにとどまってしまうのだ。」(「存在論は根源的か」p.344)
ここからレヴィナスはハイデガーの「無への不安」を受けて、「存在そのものの不安」へと論を進めていくのですが、これはまた別の話ね。
こんなふうに、存在論というのは厄介なものですが、おもしろいものでもあります、って、ハイデガー、わたしもご本尊はちゃんと読んでないので、読まなくちゃいけないと思ってるんですが、不勉強なもので、なかなかそこまでいかない。
さて、上の方にある質問とも関連する
> 静止する矢というのは矢としての存在といえるのかどうか
これはどう考えましょうね。
これはむしろ言語的な問題なのかもしれません。
インチキ臭い話をするんですが(笑:どうか話半分に)「t1時に空中のp1という場所に静止している矢の存在」が可能なのは、「その矢がt1時をさかのぼるtx時においてpx地点から放たれた」という前提条件が必要だと思うんです。つまり「t1時に空中のp1という場所に静止している矢」という記述には、すでに「その矢がt1時をさかのぼるtx時においてpx地点から放たれた」ことが含意されているような気がするんですね。
そう考えると「t1時に空中のp1という場所に静止している矢の存在」という記述自体が、すぐれて時間的な記述ということになる(ここらへんはダントの「物語文」が頭にあるんですが)。
「t1時に空中のp1という場所に静止している矢」という記述は、運動の否定でも瞬間の実在の否定でもないんじゃないか、と。
そういうふうに考えてみるのはどうでしょう?
また質問者さんの胃を痛くしちゃったらごめんなさい。
ということで、何らかの参考になれば幸いです。
この回答への補足
どうもたびたびありがとうございます。
ghostbusterさんの回答はストレス無くすらすら読めるので胃痛が解消するんですよ。
一しか知らないのに十を語ろうとされるとこっちの胃がやられてしまうんですね。
だから目に入れるのがしんどくなって退場ということになりHNが増えちゃうんです(笑)。
跳ぶ矢の話も私の言いたいことそのものでして、ここまで理解していただけると非常にやりやすくて胃が和みます。
当分はHNも変わらないだろうと思いますので(笑)宜しくお願いいたします。
No.5
- 回答日時:
たとえば「他者」は恒真命題からは措定できません。
ある存在と関係しようと思えば、わたしはこの存在を存在として了解しなければ関係できません。けれども存在を存在として了解するためには、その存在と関係しなくてはなりません。
ここで、パラドックスに陥ることになります。
あるいは「死」の問題。
死を理解しようと思えば、わたしは死を死として体験しなければ死を理解することはできません。けれども死を体験してしまえば、死を理解することはできません。
ここで、パラドックスに陥ることになります。
これはゼノンのパラドックスのバリエーションのようなものですから、おそらくはこの程度のことをお聞きではないのだろうと思います(そういえばこのあいだ過去質を検索していて―なにしろここの回答は自分の備忘録でもあるので―質問者さんの初代?HNを思い出しました。ああ、あの方かと)。
もう少しどこらへんのことを考えていらっしゃるのか明らかにしていただければ(笑)、こちらも無い知恵をしぼります。
ghostbusterさん、ご回答いただき誠にありがとうございます。
>おそらくはこの程度のことをお聞きではないのだろうと思います
いえ、いえ、そんなに深い意味はないんですよ(笑)。
ただ実在というのは自同律にあるもんじゃないということで、
皆様のご意見を伺いたく質問させていただきました。
パルメニデスのパラドックスをご紹介いただきありがとうございました。

No.4
- 回答日時:
ANo1 harepandaです。
>>カントを読めば
>
>これは純粋理性批判の「一切の綜合的判断の最高原則について」でしたっけ?
私が念頭においていたのは、「道徳形而上学の基礎」です。最近では、「人倫の形而上学の基礎付け」と訳すほうが多いのですか?多分、同じ本だと思うのですが。
そのほか、「永久平和のために」とか「啓蒙とは何か」とか、とっつき易い作品がいくつかありますよね。
三大批判書は、さすがに初心者が読んで、いきなり分かるものでは無いと思います。ただ、ルソーの一般意志の概念を理解している人にとっては、カントは簡単な哲学者です。ひらったく言えば、一般意志と合致するような個人の意志で生きれば、道徳的に生きることができるというのが、カント倫理学の基本ですから。
ヘーゲルは難解な哲学者だと思っている人が多いようですが、実は事情はカントと同じです。ヘーゲルがギムナジウムの校長をしていたころの議論は特に分かり易く、かつポイントをついています。相手が高校生ですから。
ヘーゲルもまた、ルソーの一般意志の概念さえ理解していれば、どうということのない哲学者です(特に円熟期においては)。ただ、ヘーゲル研究者は普遍意志と訳します。発想法はカントとは少々異なり、「国家や議会に現われる普遍意志、職業団体や企業に現われる特殊意志、個人の個別意志が、うまく連動して有機的に機能している状態が、理想の国家である」という考え方です。
これは質問の主旨にも関連する議論です。何しろ、ヘーゲルは弁証法哲学ですから、古典的な論理学を排し、弁証法的論理学の普遍、特殊、個別の概念を使いこなしているわけで、まさに「弁証法哲学が理解できなくなります」の典型例です。
No.2
- 回答日時:
実体験と観察力に乏しい或いは自信のない人が書物や権威、果ては当たりもしないカンに頼るごとく、直観力の乏しい或いは自信のない人が論理に頼るがごとし。
なかには現実の問題から目を逸らすために、わざわざ形式論理とやらを利用する人もいるみたいです。
スタートが「恒真命題」といえども前提の真偽について正しい思考をするために論理操作を進めていくことで見極めるという目的があるというのなら
「Aは非Aではない」と言ったって、現実の対象に関して何がAで何がAでないか判断するとき判断者の主観や志向等が一切入り込むことなく正確、妥当だという保証があるのかどうか。
単に抽象するということすら何を拾って何を捨てるのか一様ではないでしょう。
まあ、ありふれた言い方になってしまいますが「空理空論に堕し易い」という問題でしょうか。
「宗教」のタネなんて、そこかしこにゴロゴロと。。。
記号論理のキの字も知らない者の素朴な感想に過ぎないかも知れませんけど。

No.1
- 回答日時:
簡単なことをわざわざ難しく言う、ハイデガーのようなヒマ人が出てきます。
カントを読めば、同じ内容を、より簡単に理解できます。弁証法哲学が理解できなくなります。特に、アドルノによるハイデガー批判が。そのほか、英米系哲学者(具体的にはカール・ポパーなど)と同様、ルソーやヘーゲルを、危険な全体主義者だという勘違いにとらわれてしまいます。また、キルケゴールのような弁証法家にして実存主義者というタイプの人間がなぜ存在するのか、分からなくなります。
仏教が理解できなくなります。仏教にも論理学があるのですが、西欧系論理学とは別方向に進化した論理学です。特に原始仏教と道元がなぜヨーロッパで高い評価を受けているのか、分からなくなります。
他人の書物を読んで、他者の思考過程を追体験するという読書スタイルが失われ、形式的な議論が先行し、他の哲学者のパーソナリティが理解できなくなります。内容ではなく形式から入るという、悪いくせが身につきます。
harepandaさん、ご回答いただきありがとうございます。
>弁証法哲学が理解できなくなります。
弁証法による運動の原理なんて特にそうかもしれませんね。
>仏教が理解できなくなります。
そういえば即非の論理なんていうのもありますね。
「AはAだというのは、AはAではない、故に、AはAである」
と形ですね。
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