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 ある段階まで契約交渉しており、もう契約を交わしましょうということになっていたのに、相手方が直前になってやっぱり契約するのやめます、といった場合で、それが取引上の信義に反するような場合には契約類似の関係における信義則違反を理由として損害賠償の請求が認められますよね。この場合損害賠償の範囲は履行していたなら得られた利益(履行利益)まで請求できるのか、それとも契約の締結を信頼したために被った損害(信頼利益)までしか請求できないのかどっちなんでしょうか。理由と一緒に教えていただけると助かります。

A 回答 (2件)

 鋭いですね。


 その通りです。この部分に触れると少し長くなるので敢えて触れませんでしたが、その場合には履行利益まで請求できることになります。

 まず、問題の「契約締結段階における過失」にも、結果的に契約に至る場合と至らない場合が観念できますね。

 例えば↓

 (1)契約締結に至った場合
 甲が乙に売るはずの沖縄の別荘に関して、買主乙のために調査・告知する義務があるにも係わらず、これに違反し買主乙に損害を与えた場合。

 (2)契約締結には至らなかった場合
 甲が乙に売るはずの沖縄の別荘に関して、買主乙が契約締結の準備のための調査費用を支出したが、売主甲が調査日にこれに協力しなかったため契約が締結されなかった場合の調査費用の賠償。

 という場合、(1)の事例は、かなり多くの説が「信義則に基づく契約責任を認める」としています。つまり、この場合は「契約責任」ありですから、これに基づく信義則上の義務違反があれば、損害賠償の範囲も当然拡大し、履行利益まで含まれることになります。

 これに対して、(2)の事例では見解は分かれていて、

 a.結局は契約締結まで至らなかったのであるから一般の不法行為責任どまりとする見解。
 b.いやいや、契約を前提とした準備行為をした時点で当事者同士はもはや赤の他人ではなく、相互に信義則上の付随義務ないし保護義務を負う関係にあるので、結果的に契約が締結に至ったか否かを問わずに「契約責任」を負うべきであるとする見解。→判例(最判昭59.9.18)はこの見解に立ちます。

 従って、契約に至らない場合であっても契約責任を認める判例もあるくらいですので、ご指摘のとおり、契約締結に至った場合においては「契約責任」ありとして、そこに信義則上の義務違反があれば、これを理由に履行利益まで賠償範囲に含むということになります。

 さきほどは説明不足でしたね、失礼しました。
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この回答へのお礼

 本当にありがとうございました。とてもわかりやすく回答いただき、とても助かりました。

お礼日時:2002/11/18 01:01

はじめまして。

債権各論のお勉強ですね。お手伝い致しましょう。

 まず、ご質問の「契約準備段階における過失について」という論点は「契約締結上の過失」という論点の応用編ですね。従って、基本的に両者は、意義、要件、効果は同じ結論になります。

 結論からいいますと、どちらの論点も、その効果としては損害賠償の範囲は信頼利益までです(履行利益は含まれません)。
 なぜなら、この損害賠償請求権は有効な契約を前提とするものではないからです。契約が有効に成立したにも係わらず、こちらに何の帰責性もないのに履行不能となった場合には、「債務不履行」という論点になりますので、有効に成立した契約を前提とした効果が発生します。つまり履行利益です。契約が有効に成立している以上、その損失も大きいと考えます。しかし、契約締結上の過失や、契約締結の準備段階の過失というのは、いまだ有効な契約成立に至っていませんね。従って、保護される範囲も少し狭まります。
 これは契約責任という重たい責任をどの段階で当事者に負担させるかという理由からです。契約責任は一旦成立したら大変重たい責任が生じるので、その責任負担を徹底させますが、いまだ成立してない以上はこのような責任は生じてないので、必要最小限の責任負担にとどめています(これを信頼利益説といいます。←通説ですので憶えて下さい)。

 なお、ご質問の「契約締結の準備段階における過失」について、履行利益まで請求できるとする説や修正説もありますが、どちらもあまり一般的ではありません。結論とその主張理由をみればその説に説得性がないことがわかると思います。以下、この論点に登場する学説を紹介しておきます。

(1)信頼利益説
 結論→契約締結段階における過失について生じた損害は信頼利益までしか請求できない。
 理由→本来の給付を目的とする債権は無効であるので、契約責任という重たい責任を負わせる段階に至っていない。

(2)修正信頼利益説
 結論→原則として信頼利益に限るが、例外的に信頼利益の額が履行利益の額を超える場合には履行利益とする。
 理由→そもそもこの論点で保護しようとしたのは、せめて相手方を信頼して取引に入った者の信頼を保護しようとしたものであり、これが履行利益を超過する場合には、そこまでを保証する必要はなく、履行利益限度額の賠償でよいとする。

(3)履行利益説
 結論→履行利益まで損害賠償範囲とする。
 理由→履行利益や信頼利益の観念が明瞭でないので損失のないように履行利益まで広げる

 となっています。1説と2説はほとんど同じ結論ですが、3説は反対説です。でも反対説の理由付けを見てもあまり説得力は感じませんよね。だから、この論点では、1説が通説となっています(2説は一応、民法学の大御所であるわ我妻先生の説なので有力であるといわれますが、あまり一般的ではないと思います)。

 こんな感じで良かったでしょうか。では頑張ってください。

この回答への補足

 ふと疑問に思ったのですが、それでは契約準備段階において説明義務を怠ったことによる被害(これも契約準備段階における過失の一場面ですよね)の場合はどうなんでしょうか?契約は有効に成立してしているんだから履行利益まで請求してもいいのではないでしょうか?

補足日時:2002/11/17 23:16
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この回答へのお礼

 ありがとうございました。この場合の損害賠償の範囲は価値判断によるところが大きいということですね。契約締結上の過失の場合は原始的不能や錯誤の場面なので、そもそも契約自体が無効となって履行を観念できないから信頼利益までしか請求できないと、いうのは納得できるのですが、契約準備段階の過失では、契約の締結拒否自体が信義に反すると捉えた場合には、契約自体は存在しないとしても履行利益まで請求できるのではないかと考えたのですが、価値判断からならまあそんなもんかといわざるを得ないです。助かりました。

お礼日時:2002/11/17 23:13

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