光電効果の実験では、Eを出てきた光のエネルギー、ν0を限界振動数とすると
E = hν - hν0 ~(1)
という結果が出ています。しかし、これはどうやって出てきたのでしょうか。
例えば「光のエネルギーは振動数に比例する」という仮説を作ったとして、
どうやって比例定数を求めたのでしょうか。
また、比例定数を求める手法があったとして、最初の仮定「光のエネルギーは振動数に比例する」は
どういった思考過程で築かれたのでしょうか。
さらに、光子が仮にn個一組で飛んでいるとしたら、実際の最小単位は
(h/n)ν
になってしまうのではないでしょうか(まぁそのときは分ける必要がありませんが。)
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
ご存知のように光量子のもともとの出発点はプランクの理論です。
以下どこかの教科書になんらかのやり方の説明で出ているでしょうが、およそ次の通りです。プランクは電磁気学と熱力学から、輻射のエネルギー密度を
u(ν,T)=(8πν^2/c^3)<E>...(1)
を得ています。また、振動子1個あたりの平均エントロピーが
dS=d<E>/T...(2)
なることを示しました。そしてウィーンの提案した式
u(ν,T)=Aν^3 exp(-βν/T)...(3)
と比べます。(3)を1/Tについて解いて、得られたuの式を(1)を使って<E>の式にしてから(2)へ入れます。
dS/d<E>=1/T=-(1/βν)ln(8π<E>/Ac^3ν)
を得ますが、これをもう一度積分すると、
d^2S/d<E>^2=-(1/βν<E>)...(4)
になります。一方古典的なレイリー-ジーンズの式なら<E>=kTとしなければなりませんが、そうなると
dS/d<E>=1/T=k/<E>
もう一度積分して、
d^2S/d<E>^2=-k/<E>^2...(5)
となります。(4), (5)を繋ぐものとして、プランクの輻射式を出しています。
<E>=hβν/{exp(βν/T)-1}
β=h/kと書いて(1)に代入すれば、
u(ν,T)=(8πν^2/c^3)(hν/{exp(hν/kT)-1}
となり、hνというエネルギーの単位が現れます。
さて光量子ですが、黒体輻射でエネルギー密度u(ν,T)dνと同じく、エントロピー密度dφ(ν,T)を定義したとします。(2)と同じく
dφ(ν,T)/du(ν,T)=1/T...(6)
となります。エネルギー分布についてウィーンの輻射式(3)を使いますがβ=h/kに書き直します。
u=Aν^3 exp(-hν/kT)...(3)'
前と同じく(3)'をTについて解いて
1/T=-(k/hν)ln(u/Aν^3)...(3)
とし、これを(6)の右辺に入れ、前と違ってこれを積分します。
φ=-(ku/hν)[ln(u/Aν^3)-1]...(7)
ここで全エネルギーを一定で黒体の体積を変化させることを想定します。
u(ν,T)V=U(ν,T)=const.
振動数の小区間dνに含まれるエントロピーは、
dS=φ(ν,T)Vdν=-(kU/hν)[ln(U/AVν^3)-1]
ですから、体積をU一定の条件で変化させると(計算は簡単で詐欺にかかったみたいですが)
d(S-S0)=(kU/hν)ln(V/V0) dν...(8)
となります。
一方普通の熱力学で、単原子気体でエネルギー一定で体積を変えるばあい、dU=TdS-PdVでdS=(P/T)dV, S-S0=∫(P/T)dV=∫(nR/V)dV=nRln(V/V0)となり、mを原子数とすればnR=nNk=mk(NはAvogadro数)です。
S-S0=mkln(V/V0)...(9)
(8)と(9)を比べますと
Udν/hν=mならば、即ち、Udν=mhνならば両者は同じとなります。つまり、区間dνに属する輻射のエネルギーはhνの量子m個に分割されていることになります。
No.8
- 回答日時:
>光子一つのエネルギーはhν(=hbarω)なのはどうしてですか。
Whyが質問内容ですね。
現存する回答はHowに対するものだけです。
歴史的いきさつは他の方に譲ってWhyを考えたがことがあります。
下記説明は完成度低くインターネット時代でなければ紹介されることすらないでしょうけど。
光速cと同じくプランク定数hも空間に付随する定数と思います。
光子の速度はcですが、これは光子が質量を持たないためであって、光子自身の一次的な性質ではありません。二次的な理由です。
光子のエネルギーhνも空間に付随するプランク定数hを光子に付随する性質である振動数を乗じたものと考えます。二次的な理由と考えています。
No.6
- 回答日時:
No4です。
No5さんの話は確かにそういうことが言えると思います。もっとも天才達の本当のひらめきは、どうしてそんなことを思いついたか誰にも教えられないことだとも思います。しかしとにかく、その新しい仮説というか、問題の見方の掘り出しが一番大事で、かつ難しいことなのはその通りとおもいます。さりながら感心することがもう一つあると思います。”光電効果で光がhνのエネルギーの粒だと考えるとうまく行く”というアイデアを書いただけでは論文として通りません。熱力学の論理を組み立ててそういうアイデアが本当に具体的に説明できる、という議論を構築したことも(すくなくも私にとっては)大変発見的な、天才の手並みだと思うのです。
No.5
- 回答日時:
#2です。
#4さんの回答はその通りで正しいのですが、それに蛇足なり補足を加えておきます。余計なお世話かも知れませんが、#4さんの説明では、多分質問者さんが一番聞きたかったことが判らないかもしれないと、勝手に心配しております。なぜなら、#4さんの説明では、何故そんな式や量を長々と計算してみようかと言う気になったかの動機が説明されていないからです。
アインシュタインが、光電効果の説明を思い付いたのは、エントロピーを計算した結果であるとは思えません。アインシュタインは、プランクの黒体輻射の理論の分析やレーナドの研究結果の分析をしているうちに、「光は粒子であって、その粒子一つのエネルギーはhνであるに違いない」と言う直感が先ず出てきたのだと思います。そして、その仮説に基づいて説明すると光電効果がすっきり判った気になれたのだと思います。
逆に、誰かが一旦そのような仮説を提案した後ならば、それを正当化するために、いよいよ数学的な論理を使ってそれを確認してみようかと言う動機が生まれてきます。その結果、アインシュタインに後続した人達が、例えば#4さんのような論理を使って、それを正当化する論理を見つけてきた、と言うのが正しいと思います。
ですから、#4さんの論理を使っても、何故アインシュタインがそんな仮説を思い付いたのかの説明にはなっていないような気がします。
「仮説」とは読んで字のごとく、仮りの説です。はじめから論理的に演繹出来た説明を仮説とは言いません。言い方を変えると、仮説はそれを証明する前に出てきた説です。
私の知人で、世界的に有名な外国人の物理学の教授が「あらゆる学問で、最も難しくかつ重要な寄与は、仮説を提出することである。仮説を提出する過程では必然的に、帰納を行わなくてはならないので、ある種の神懸かりがいるからだ。一旦仮説が出れば、それを肯定的に、あるいは、否定的に証明することは、ほとんどの場合、時間をかけさえすれば、辛抱強い大学院生やコンピューターにでも出来ることだ。しかし、仮説が提出されていなければ、何を計算したり確認したりすれば良いかと言うことすら考えることができないので、論理の展開すら出来ない」と言っておりました。私も賛成です。仮説を提出するためには、その周辺の問題に対する十分な経験と深い洞察に裏付けられた直感が必要です。その点で、科学者の営みは芸術家の営みとほとんど重なっていると思っております。
私も物理学者の端くれですが、何か新しいことが判った気になったときなど、はじめに演繹的な論理ありきではなくて、先ずは、論理的な三段跳びをしながら、「あれ、こんなことが起こっているのかな」という思い付きが浮かんでくると言う形で話が発展して行くと言う経験を何度も繰り返してきました。
物理学の寄与のなかには、
(1)今まで誰も気がつかなかった新しい現象や物の見方を見つけて、未知な問題を提供する、言わば新しい世界の扉を開く寄与と、
(2)未解決な問題を解決して、言わば、その問題に対する扉を閉める寄与、
が在ります。
(1)の寄与は、仮説の提出に関する寄与ですが、その結果、多くの大学の先生や研究者達に仕事が与えられ、その家族達も食べて行けるわけですが、(2)の寄与では、仕事が無くなってしまい、その家族達も路頭に迷うことになってしまいますので、私は個人的には、問題を解決するのではなくて、問題を提供する(1)の寄与の方を好んでいます。近年の物理学の例では(1)の寄与は、例えばイリヤ・プリゴジンの寄与が考えられます。(2)の例では、スティーブ・ワインバーグの寄与がどちらかと言うとそうではないかと思います。数学では素人ながら(1)の寄与はノーバート・ウィーナー、(2)の寄与はフォン・ノイマンと言ったところかな、なんて考えています。
No.2
- 回答日時:
プランクの量子仮説にレナードの研究結果を足して2で割り、そこにアインシュタインの夢枕に現れる女神様が微笑んだ結果、アインシュタインの光電効果の仮説が出てきたのです。
コロンブスの卵と同じで、言われてみたら「あっそうか」となりますが、それを言い出す人には神懸かりが必要で、女神様が付いていなくてはならないのです。
こういう神懸かりをやる営みのことを専門用語では「帰納する」と言います。これが出来るのは人間だけです。それに対して、すでに与えられた規則を上手に使いこなして、その規則内でいろいろな矛盾しない結果を導き出すことを「演繹する」と言います。これは、コンピューターにでも出来ます。
まあ言ってみれば、規則を見つけてきたり作ったりする、言わば政治家に要求される能力が「帰納」です。それに対して、いかに規則を上手に使いこなすかという、役人や官僚に要求される能力が「演繹」です。
大学で良い点を取るためには、どちらかと言うと官僚型の「演繹」能力を身につけることを要求されているようですが、学者になると政治家型の「帰納」能力が要求されるようになるわけです。質問者さんの疑問は、この官僚型から政治家型への脱皮を思せれる、頼もしい問い掛けだと思います。
No.1
- 回答日時:
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