No.3ベストアンサー
- 回答日時:
問 先取特権、質権、抵当権は、時効取得者の所有を害するから、消滅すると考えればいいのでしょうか?
答 取得時効による消滅の直接の根拠は,397条(抵当権),361条(質権),341条(先取特権)といった条文ですが,趣旨は,取得時効の要件たる所有の意思を持つ占有の継続により,一物一権主義が妥当する所有権について,他人の権利を排除する(:つまり,所有権を侵害するおそれのある権利を排除する)ということでしょう。
なお,先日ご説明した地役権にも289条に397条と同様の規定がありますが,地役権自体が消滅時効(291条,167条2項)にかからない時点での地役権の行使により,承役地の取得時効の完成にもかかわらず,地役権は消滅しません(290条)。
No.2
- 回答日時:
「矛盾する」という表現の意味するところがあいまいすぎるのでその記述は駄目駄目ですね。
どこの誰が書いたのか知りませんけど。所有権と完全に両立しない権利は同じ物を目的とする"所有権だけ"です。ですから仮に「矛盾する」が"完全に両立しない"つまり一物一権主義に反するという意味ならば、「矛盾する」から消滅すると説明できる権利は原所有権だけです。それ以外の権利は全て、所有権との関係で一物一権主義に反しない不完全ながら両立し得る権利なので、「矛盾」しないと言うべきです。
そうではなくて、制限物権もまた部分的ではあるが所有権と両立していないと考えるならば、確かに全ての制限物権は所有権と「矛盾する」と言うことはできます。
ということで、「矛盾する」ってどういう状態?ということになるので駄目駄目な表現です(実際には前後の文脈により明確であるという可能性は否定しませんが)。
さて、理論上は、もともとの所有権および各種制限物権が時効取得により"反射的に"消滅するのは時効取得による所有権の取得は"原始取得だから"です。原始取得というのは、何の負担もない状態の権利を取得するのが原則になるので、全く両立しない所有権でも一応は両立する制限物権であっても消滅するのが本来(これは例外があるということ)ということになります。
法制度だけの問題として考えるなら、一物一権主義に反しない限り他の物権を消滅させる必然性は本来ありません。理論的本質はともかく、制度的には原所有権以外の権利は取得時効によっては消滅しないとすることは不可能ではありません。しかし、一応、理論上、取得時効による所有権取得の法的性質からは原所有権以外の制限物権も消滅することになります。
実際に取得時効により所有権以外の制限物権はどうなるのかと言えば、抵当権には397条という明文の規定があります。そして、不動産質権、不動産先取特権も抵当権の規定を準用するので同じことになります。担保物権の場合には、担保権が実行されると所有権を失うのでその意味で潜在的に所有権と同程度に両立しなくなる事態がありうるという意味で「矛盾する」と言ってもいいかもしれませんが、解りやすい表現だとはとても思えません。それに留置権との関係で問題があります(法律上は優先弁済効はないが事実上の優先弁済効はあるし、競売申立権も民事執行法で認められている)。
また、地役権も承役地の時効取得により地役権が消滅するという明文の規定(289条)があります。
あとの問題は明文の規定がない権利をどう考えるかということになります。
原始取得であることを貫けば、特段の事情がない限りは全部消滅するというのが理論的には一貫しています。ただし、占有権だけは違います。占有権は、占有しているという事実それ自体を理由に認められる権利なので、例えば占有代理人の占有権は間接占有により所有権を時効取得した者がいたとしても(間接占有でも自主占有である限り時効取得はできる)占有の事実がある限りは何が起ころうと消滅しません。占有権は特殊なのです。占有権は本権とは全く異質な権利なのです(だから混同でも消滅しない)。もっとも、占有権の実体は占有訴権に他ならないとも言いますが(占有訴権以外の占有権の効力は実体的には、占有それ自体の効力であり、占有権と権利として呼ぶべきものではない)。
ということで留置権と地上権と永小作権と入会権が問題になるのですが……。正直に言います。よく分かりません。入会権は慣習優先なので無視するとしても、他はどっちでもいいのではないのか?という気もします。この点少々古い文献ながら、近江幸治先生の民法講義II[物権法]には、「原始取得(略)時効取得(略)などの場合である。(略)前主の権利は当然に消滅する。それゆえ、前主の物権に付着していた負担(例えば、用益物権や担保物権など)や瑕疵などは、その消滅と共に消失する」という記述があるので、原始取得という点を理論的に一貫させて全ての制限物権を消滅させると考えるようです。
もっとも、この立場に立つとしても、例えば地上権付きの土地を譲り受けたがそれが無効となった場合にその後時効取得したときなどには、もともと地上権付きの所有権を取得するに過ぎなかったはずなのに取得時効による地上権の消滅を主張させるのは妥当でないので、抵当不動産の第三取得者について397条の適用を認めない判例に照らして、一定の者には信義則上、権利の消滅の主張を認めないとすべきです。
何にしても、「矛盾する」なんてあいまいな言い方で説明すべきものではないしそもそも説明できないのは確かです。ANo.1の回答にもあるとおり、地役権は矛盾しないと考えても、(例外はありますが)明文の規定がある以上は消滅するのですから(私自身は所有権以外は矛盾しないと言うべきだと考えるのは最初の通り)。それ以外も少なくとも近江先生の記述からは、矛盾しなくても用益物権も担保物権も消滅すると考えられるのですし。
ちなみに債権の場合、例えば賃借権などは他人物賃貸借になると考えればいいだけなので直ちに消滅させる必要性はありません。
ありがとうございました。
基本、用益物権も担保物権も消滅するということですね。
まだまだ、宅建の勉強を始めたばかりで、意味不明な質問でしたが、教えて頂き、感謝致します。
No.1
- 回答日時:
「どうしても思いつかなくて・・・。
」思いつこうとするからいけないのです。
六法を出して,民法の目次を見ながら,第二編に掲げられた物権を一つ一つチェックすればよいでしょう。
第2章:占有権:時効取得者が占有しているのだから,「矛盾」することはありえない。
第3章:所有権:矛盾する。
第4章:地上権:矛盾しない。
第5章:永小作権:矛盾しない。
第6章:地役権:矛盾しない。
第7章:留置権:時効取得者が占有しているのだから,「矛盾」することはありえない。
第8章:先取特権:担保物権として優先弁済効がある(民法303条)から,矛盾する。
第9章:質権:担保物権として優先弁済効がある(民法342条)から,矛盾する。
第10章:抵当権:担保物権として優先弁済効がある(民法369条)から,矛盾する。
ありがとうございます!
先取特権、質権、抵当権は、時効取得者の所有を害するから、消滅すると考えればいいのでしょうか?
以前、教えて頂いたように、地役権、永小作権、地上権は行使し続けていれば、消滅しないということですか・・?
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