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たとえば、金属Aと金属Bがあって同じ条件(加熱や酸素導入量を変えたり)で表面を酸化したとします。
酸化しやすい金属と酸化しにくい金属って、何か定量化されているものなのでしょうか?(金属と酸素の結合エネルギーとかの値によって酸化のしやすさが決まるとか)

わかりにくい質問だったかもしれませんが、よろしくお願いします。

A 回答 (1件)

128yenさんが仰るように、確かに「酸化され易い金属」「酸化されにくい金属」という言い方はしますよね。

この時の「酸化のされ易さ」には二つの意味があると思います。
(1)時間はどれだけかかってもよいので、最終的に果たして酸化されるのかされないのか
(2)酸化されるとして、その反応は速いのか遅いのか
このうち(1)については私が申し上げるまでもなく、熱力学的な計算で判定されます。128yenさんが質問で仰っている「結合エネルギー」はこちらに関係するわけです。ところが、最終的に酸化物に至るにしてもその反応がとんでもなく遅いことは往々にしてあることですから、実際的な感覚での「酸化され易い/されにくい」とはあまり合致しなさそうです。

実際的な「酸化され易い/されにくい」は(2)の速度論的な考えの方が近いと思われますが、こちらも一筋縄ではいかなさそうです。
「酸化」という過程には下の図に示すように大きく分けて
(A)反応容器内に導入した酸素が、金属の表面に到達する
(B)表面に到達した酸素が内部に侵入し、拡散して界面に至る
(C)酸素が界面で反応する
の3つがあります。当然ながらどれが律速かで話が変わってきます。


○○酸素分子
↓     ○○  (気相、時に液相)
   ○○ ↓
━━━━━━━━━━━表面
        ○○
  ○○    ↓ (酸化層)
  ↓  ○○
───────────界面

          (下地=未反応層)


酸化が目的であれば、通常は反応容器内に十分な酸素を供給しますから(B)(C)のいずれかが律速になります。これは物質によってさまざまです。また温度域によって律速過程が(B)(C)の間で遷移するものもあります。
固体中の拡散係数は通常exp(-E/kT)に比例しますから、もし(B)なら温度の影響はこれで見当がつきます。(Eは拡散の際のエネルギー障壁、kはBoltzmann定数、Tは絶対温度)(C)の反応律速についても、反応速度はexp(-E/kT)に比例しますから同様に考えられます。(ここではEは活性化エネルギー) お気付きかと思いますが、拡散律速でも反応律速でも温度を上げれば反応は速く進みます。
拡散律速であるか反応律速であるかは、酸化層の厚さが時間tとともにどのように変化するか実験することで判定できます。時間に比例して厚くなるなら反応律速、(酸化開始からの)時間の平方根に比例するなら拡散律速です。なお反応の結果できる膜がポーラスで拡散が速かったり、あるいは揮発性で表面から飛散するな物質だったりすれば反応律速となることも自明です。
金属とは少し外れますが、半導体の分野ではシリコン上に絶縁膜としてSiO2膜を形成する過程が重要であるのはご存じかとも思います。このためSiO2中での酸素の拡散係数や、反応の速度定数についてはくわしく調べられています。(こちらについて詳しく知りたければ「半導体プロセス」のような本で「(シリコン)酸化膜形成」について探してみて下さい)

というわけで、
- 「酸化のしやすさ」は、酸化膜中での酸素の拡散係数と、界面での酸素の反応速度のいずれか(律速する方)で決まるものである
- 拡散係数・反応速度については全ての物質について詳しく調べられているわけでなく、一覧表のような形で入手できるとは限らない
という辺りになると思いますが、いかがでしょうか。
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この回答へのお礼

非常にわかりやすいご回答ありがとうございました。
正直1つも回答がないと思っていましたので、とても感激しています。
拡散のことは全然頭にありませんでした。
酸素の拡散係数をもうちょっと勉強してみたいと思います。

本当にありがとうございました。

お礼日時:2003/01/30 16:18

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