No.4ベストアンサー
- 回答日時:
> 三酸化硫黄や硫酸、過塩素酸などの超原子価化合物
超原子価化合物の定義は、人によって違ったりするので厄介なのですけど、これらの分子は超原子価化合物には含めないことが多いです。「シュライバー・アトキンス無機化学」には
「たとえばSO4^2-の共鳴構造にはS原子価殻に12電子をもつものが含まれるけれども、S原子がオクテットの電子をもつようなルイス構造も一つ描けるので、SO4^2-は超原子価化合物ではない」(上巻56ページ)
とあります。この本によると、オクテット則を満たす構造式が一つでもあれば超原子価化合物とはいわない、とのことです。三酸化硫黄や硫酸、過塩素酸は、#1さんの回答にあるようにオクテット則を満たす構造式があるので、この定義によれば超原子価化合物ではないです。
ただし、IUPACの定義
http://dx.doi.org/10.1351/goldbook.HT07054
をみても、オクテット則を満たす構造式が一つでもあれば超原子価化合物とはいわない、と書いてあるわけではないので、これらの分子を超原子価化合物に含める人もいます。ウィキペディア日本語版と英語版では、超原子価化合物の例としてリン酸イオン (PO4^3-)を挙げています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E5%8E%9F% …
http://en.wikipedia.org/wiki/Hypervalent_molecule
また、ウィキペディア独語版の「硫酸イオンの構造」の説明文中に、硫酸イオンの結合と超原子価は分子軌道のエネルギー準位図から説明できる、という記述があります。
> なぜd軌道を結合に使えないはずのs,pブロック元素がオクテット則をオーバーするのか
価電子が非局在化するからです。
> 分子軌道法で説明していただけないでしょうか。
PCl5の結合は、分子軌道法を使うと、3中心4電子結合で説明できます。
http://www.frad.t.u-tokyo.ac.jp/~miyoshi/InCh200 …
SF6の結合も、おおざっぱには3中心4電子結合で説明できます(S原子の3px,3py,3pz軌道を使う)。しかしこの考え方だと、3s軌道が空になって電子が入らない、ということになって、「エネルギー準位の低い分子軌道から電子を詰めていく」というルールに反してしまいます。そこで、真面目に分子軌道法でSF6を取り扱うときには、上のリンク先にあるように、結合性のa1g軌道に2電子、結合性のt1u軌道に6電子、非結合性のeg軌道に4電子が入っていると考えます。
SO4^2-は、あまり良い図ではないのですけど
http://de.wikipedia.org/wiki/Sulfate#Struktur_de …
の図(クリックすると大きくなります)のように、シグマ結合が4つとパイ結合が3つあるので、S-Oの結合次数は (4+3)/4=1.75 になります。
H2SO4やHClO4の分子軌道は、SF6やSO4^2-のそれよりも複雑になります。学部レベルの教科書でこれらの分子の分子軌道が載っているものは、私は見たことがないです。
教科書に載っていそうなのは、SO2でしょうか。
http://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Sulfu …
リンク先の図では
HOMO: 硫黄の非共有電子対
HOMO-1:パイ結合
HOMO-2:酸素の非共有電子対
HOMO-3:パイ結合
HOMO-4:酸素の非共有電子対
HOMO-5:酸素の非共有電子対
HOMO-6:酸素の非共有電子対
HOMO-7:シグマ結合
HOMO-8:シグマ結合
のように対応付けすることができます。
SO2のSO結合は、二重結合になることがわかります。
SO3は、SO2と似たようなエネルギー準位図になりますが、原子数が多い分だけ複雑になります。
> 超原子価化合物の分子軌道について説明している本
分子軌道法の良いところは、原子価結合法とは違って、オクテット則を破っている分子でも満たしている分子でも、まったく同じように取り扱うことができるところです。ですので、まず分子軌道法についてしっかり学ぶのがいいんじゃないかなと思います。教科書としては、
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa4415255.html
の回答番号:No.5に挙げた本の[1]と[2]をお勧めします。
また、「オクテット則」、「混成軌道」、「共鳴構造」という概念は、分子軌道法とは相性の悪い概念なので、分子軌道法を本気で勉強するときには、この三つを頭から追い出しておいたほうがいいです。
超原子価化合物に関しては、図書館にこもって、「無機化学」という書名の教科書の該当箇所を手当たりしだいに読むのがいいです。大学の中には、高校生にも図書館を開放している大学もありますので、お近くの大学図書館に尋ねてみてください。一冊だけ挙げるなら、「シュライバー・アトキンス無機化学」の上巻です。
分子全体に非局在化するからオクテットは考えなくていいんですね。
超原子価化合物について、よく分かりました。一般には硫酸や過塩素酸はそう言わないんですね。
硫酸の分子軌道は今はまだよく分からないですが、二酸化硫黄のは分かりやすいです。
硫酸だけでなく、PCl5やSF5は私もちょっと悩んでいたのでこれもすっきりしました!
良いサイトを教えてくださってありがとうございます。かなり納得できました。
オクテット則や混成軌道などは分子軌道から取っ払って考えたほうがよさそうですね。
やっぱり無機化学の教科書を手当たり次第に読んでいくしかないですか……
ここらへんにはあんまり専門的な教科書を取り扱ってる本屋がないです。
でも「コットン・ウィルキンソン・ガウス 基礎無機化学」っていう面白そうな本を見つけたので頑張って理解しているところです。
今私が使っている分子軌道の本は「三吉和彦/著 化学結合と分子の構造」という本なんですが(結構面白いです)
「オクテットが満たされる」ってくどいんです、これは原子価結合法から入ってきた人が納得しやすいようにしているんですね。
教えていただいたqa4415255の本も買ってみます。
今回は本当にありがとうございました。これでまた一歩科学の本質に近づけたような気がします。
No.3
- 回答日時:
そもそも「なぜd軌道を結合に使えないはずのs,pブロック元素がオクテット則をオーバーするのか」という疑問自体が意味のあるものに思え
ないのはなぜだろう. 「d軌道が結合に使えない」のは単純にエネルギーの差によるはずだったと思う. で, 分子軌道で考えるなら「複数の原子が適切な数の原子軌道を持ち寄り分子全体で混成した結果もとよりもエネルギー的に有利になる」かどうかだけを判断すればよく, そこには「d軌道」とか「s軌道」とかの区別はないですよね.!そういえばそうですよね!
分子軌道法は分子全体に非局在化してるので、オクテットなんて考える必要がないんですね。
ありがとうございました。少しわかったような気がします。
No.2
- 回答日時:
#1の方ではありませんが…
>硫酸や過塩素酸などの各結合は二重結合に相当する長さと強度のはずですが……
そんなことはありません、過塩素酸の方は二重結合に近いとは思いますが、特に硫酸の方はほとんど二重結合と単結合の中間ぐらいの値のはずです(確か)
>±2以上の形式電荷をもつものはほとんど共鳴に寄与しないそうですよ。
そうだとしたら、炭素化合物はほとんど共鳴に寄与しないことになってしまいます、ソースはどこでしょうか?
>大学でも単結合と教わるのですか?
共鳴構造を持ち、二重結合性を持つぐらいの説明でしょうか
>硫酸の二重結合性
そうなんですか、勘違いしていました。
大学でもあまりその辺は教わらないのですかね。
でもその二重結合性はどこからくるのでしょう……
>共鳴寄与
すいません、形式電荷という言い方が悪かったようです。
供与結合で電子を相手より多く電子を渡す・受け取る場合
あまり大きな分極を起こす構造はほどんど共鳴に寄与しない、です。
本屋で見た無機化学か分子軌道法の本に書いてありましたが……信用してはいけないでしょうか?
No.1
- 回答日時:
済みません。
「三酸化硫黄や硫酸、過塩素酸」は超原子価化合物ではありません。
超原子価化合物はSF6とかチアチオフテンの中央硫黄みたいな奴です。
私はそいつで学位とりました。
硫酸は(OH)2S^2+(-O^-)2、過塩素酸もHO-Cl^3+(-O^-)3です。
いずれも完全に電離するとS^2+(-O^-)4]^2-、Cl^3+(-O^-)4]^-のテトラヘドラルの対称性を獲得します。
三酸化硫黄はO=S^2+(-O^-)2でC3vの対称性があります。
いずれも中心元素の非結合電子対が酸素に配位しています。
3sp3構造でd軌道は全く不要です。
そうなんですか?
でも硫酸や過塩素酸などの各結合は二重結合に相当する長さと強度のはずですが……
それに、±2以上の形式電荷をもつものはほとんど共鳴に寄与しないそうですよ。
私は高校生なのですが、大学でも単結合と教わるのですか?
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