
原子の基底準位のスペクトル項の導出をやっと理解したのですが、その後の微細準位への分裂がよく分かっていません。どなたか教えていただきたいです。(できれば101325さんに教えていただきたいです。とても分かりやすくいつも参考にさせていただいているのでw)
・例えばカリウムであれば最外殻の4s軌道のスペクトル項は2S1/2となりますが、なぜその次の励起準位4pで2つに分かれて2P1/2と2P3/2になるかが分かりません。2つに分かれる理由と導出法を知りたいです。
・2つ以上に分かれる場合はあるのですか?カリウムの場合2重項だから2つに分かれたのかなっと思ったんですが、違う気がしてなりません。それならば鉄ならば5重項なので5つに・・・っとなってしまいますし。。
A 回答 (3件)
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No.3
- 回答日時:
> 「最外殻の電子が4s(軌道)にある、カリウムの(基底状態の)スペクトル項」という解釈が少し分かりません、もしかしたら私のスペクトル項の概念などから間違えてしまっているのかもしれません。
おそらく、間違えてしまっているようです。アルファベットが小文字の4sや4pは、電子の入っている軌道(原子軌道)を表す記号です。それに対して、アルファベットが大文字の2Sや2Pは、原子の電子状態を表す記号です。小文字のsやpやdが個々の電子の軌道角運動量を表すのに対して、大文字のSやPやDは、原子が持つ軌道角運動量を表します。原子が持つ軌道角運動量とは、おおざっぱには、電子の軌道角運動量のベクトル和です。
カリウム原子の場合、最外殻に一つの電子しかないので、4s軌道に電子が入っていれば原子はS状態に、4p軌道に電子が入っていれば原子はP状態になります。電子配置で言えば
(1s)2 (2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (4s)1 (4p)0 が2S状態に
(1s)2 (2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (4s)0 (4p)1 が2P状態に
それぞれ対応します。2Sや2Pなどの電子状態は、軌道そのものに対応しているのではなく、むしろ電子配置と対応していると考えたほうが分かりやすいかもです。
ただし、気をつけて欲しいのは、電子状態と電子配置は必ずしも一対一に対応しているわけではない、ということです。例えば炭素原子の場合では、エネルギーの低い原子軌道から順に電子を詰めていくと
(1s)2 (2s)2 (2p)2
という電子配置が得られます。詳しい説明は省きますが、この電子配置には
3P, 1D, 1S
という三つの電子状態が対応します。また窒素原子の場合では
(1s)2 (2s)2 (2p)3
という電子配置に
4S, 2D, 2P
という三つの電子状態が対応します。
慣れていないとつい混同してしまうことですし、混同していてもある程度までは理解できてしまう(経験談)のも確かですが、原子軌道と電子配置と電子状態をしっかり区別して考えるのはだいじです。
> P軌道であることからL=1は分かるのですが、S=1/2というのはどういった解釈で考えればいいのでしょうか?
「P軌道だからL=1」ではなく「P状態だからL=1」です。小文字のlが個々の電子の軌道角運動量を表す(例えばp軌道ならl=1等)のに対して、大文字のLは原子の持つ軌道角運動量を表します。S=1/2というのは、2Pという記号から分かります。Pの左肩に載っている数字が2S+1=2だからS=1/2になります。くどいようですが、小文字のsが個々の電子のスピン角運動量を表す(いつでもs=1/2)のに対して、大文字のSは原子の持つスピン角運動量を表します。
> 励起準位だと電子が無いのに。。と考えてしまいました。
これも原子軌道と電子状態を混同してしまったための誤解ですね。
この回答への補足
ありがとうございました。
他にも化学について疑問や問題にぶつかった時はgooを利用することがあると思うので、お時間がございましたら今後ともよろしくおねがいします。
No.2
- 回答日時:
> 例えば、カリウムの場合最外殻4sのスペクトル項はS=1/2、L=0、J=1/2ですよね?
はい。そうです。もうちょっと丁寧に言うと、「最外殻4sのスペクトル項」よりも「最外殻の電子が4s(軌道)にある、カリウムの(基底状態の)スペクトル項」のほうがいいです。4sが2S1/2になる、と考えるのではなく、2Sが2S1/2になる、と考えて下さい。
> これを教えてくださった計算式に代入すると「L=S≠0」であるため、
いいえ。ちがいます。S=1/2、L=0なので、「L=S≠0」ではなく「L=0またはS=0」の場合になります。
> ...となるため、励起準位4pは2つの微細準位(2P1/2と2P3/2)に分裂すると考えてよろしいのですか?
いいえ。だめです。基底状態のS,L,Jは、励起状態の分裂とは無関係です。これも、4pが2P1/2と2P3/2に分裂する、と考えるのではなく、2Pが2P1/2と2P3/2に分裂する、と考えて下さい。2Pは、S=1/2、L=1ですから、「L>S>0 」の場合になります。この場合は、J=L+S, L-Sの2個の微細準位に分裂します。つまり、S=1/2、L=1の状態(2Pで表される状態)が、S=1/2、L=1、J=3/2の状態(2P3/2で表される状態)と、S=1/2、L=1、J=1/2の状態(2P1/2で表される状態)に分裂することになります。
この回答への補足
計算式の所で初歩的な勘違いをしてしまいすいませんでした。申し訳ないのですか、もう1つ疑問点を申し上げてもよろしいでしょうか?
・励起準位を考える場合は「2Pが2P1/2と2P3/2に分裂する」ということでしたが、P軌道であることからL=1は分かるのですが、S=1/2というのはどういった解釈で考えればいいのでしょうか?基底状態では最外殻電子が1つの二重項であるため、S=1/2と考えることが出来ましたが。励起準位だと電子が無いのに。。と考えてしまいました。励起する電子は基底準位から来るものなので1つの電子、つまりS=1/2は変わらないという考えとなるのでしょうか?
・「最外殻の電子が4s(軌道)にある、カリウムの(基底状態の)スペクトル項」という解釈が少し分かりません、もしかしたら私のスペクトル項の概念などから間違えてしまっているのかもしれません。。今まで何となく微細・超微細準位などに分裂するのを分かりやすいように。。。としか考えていませんでした。
No.1
- 回答日時:
> 例えばカリウムであれば最外殻の4s軌道のスペクトル項は2S1/2となりますが、なぜその次の励起準位4pで2つに分かれて2P1/2と2P3/2になるかが分かりません。
2つに分かれる理由と導出法を知りたいです。http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3923437.html の回答番号:No.2の
「2SはL=0なので、LSカップリングによる準位の分裂はありません。2Pが、LSカップリングによって、2P3/2と2P1/2の二つの準位に分裂しています。」
までを読んでください。納得できないところがあれば、この回答の補足欄でお知らせください。
> 2つ以上に分かれる場合はあるのですか?
2つ以上に分かれる場合もありますし、微細準位に分裂しないこともあります。角運動量の合成規則をつかうと、Jのとりうる値は
J=L+S,L+S-1,...,|L-S|
となりますから、L>S>0 であれば、2S+1個の微細準位に分裂します。0<L<S であれば、2L+1個の微細準位に分裂します(L=S≠0であれば、2S+1個(=2L+1個)の微細準位に分裂します)。L=0またはS=0であれば、Jのとりうる値は J=L+S の一通りしかありませんから、分裂は起こりません。
> カリウムの場合2重項だから2つに分かれたのかなっと思ったんですが、
一般に、スペクトル項がn重項のときにはn個に分かれることが多いのですけど、L<Sのときには分裂の個数はnより小さくなります。カリウムの2Pが2つに分かれるのは、L>S>0 だからです。それに対して2Sが分裂しないのは、L=0 だからです。2重項だから2つに分かれる、と考えるよりも、スピン2重項だから“最大で”2つに分かれる、と考えたほうがいいです。
> 鉄ならば5重項なので5つに・・・っとなってしまいますし。。
5つになってしまっても問題ないです。鉄原子の基底状態は5Dで S=2,L=2 ですから、5つ(J=4,3,2,1,0の5つ)に分裂します。これも、スピン5重項なので最大で5つに分かれる、と考えればいいです。
この回答への補足
適切で丁寧な説明、本当にありがとうございます。
すいませんが下記の質問もよろしいですか?よろしければお願いします。
例えば、カリウムの場合最外殻4sのスペクトル項はS=1/2、L=0、J=1/2ですよね?これを教えてくださった計算式に代入すると「L=S≠0」であるため、2S+1=2となるため、励起準位4pは2つの微細準位(2P1/2と2P3/2)に分裂すると考えてよろしいのですか?
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