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律令国家の権力構造について教えてくれますか?天皇と貴族の関係踏まえて教えてください。
政治の変遷は解るのですが、構造が良くわかりません

A 回答 (4件)

 先ずどの時代にあっても「権力の所在」が1人の人物に帰することはありません。

言い換えるならば「1人の人物が全権を掌握した時代」などなかった、のです。「権力」を別の表現で言い換えるならば「権力組織」或いは「システムとしての権力装置」でしょう。
 「律令国家」といっても初期から末期に至るまでの幾つかの段階があるので、一言で括ることも難しい。
御質問の背景から推測して「律令成立期」の説明をするならば、権力装置を構成する機関は「太政官」と呼ばれる官僚組織であって、ピラミッド構造に喩えるならばその頂点には「太政大臣・左大臣・右大臣・内大臣」の職があります。このうち常設のポストは左大臣と右大臣であり、「太政大臣」は「有徳の者がその職責に相応しい」として該当する人物がいない場合には不在でも可、として常設ではありません。
 また太政官という表記も「個人を表す指標」ではなく、一般的には「○○内閣」に相当する機関と理解しても差し支えはありません。ですからそこには様々な「官庁」が存在することになります。
 官庁であるからにはそこに「大臣」やそれに続くポストがあって、それぞれ「大納言」「中納言」等々のポストがあります。
 また「貴族」ですが、これは律令に詳細な規定があって「五位以上の者」を指す語で、このうち上級貴族(三位以上)を貴、四・五位にある中・下級貴族を通貴と呼び分け、職務としての太政大臣・左大臣・右大臣・内大臣を公、大納言・中納言・参議、三位以上の者を卿と呼び、両者を総称して公卿と呼びます。位階と官職は「1対1の関係で」対応します。
 位階と官職の関係は「位階相当制」として詳細な内容が「国史大辞典」(吉川弘文館)や「岩波日本史辞典」などに図示されていますので、そちらを参照していただければよく分かります。
 次いでですが、『吾妻鏡』に記されている「二品」がなぜ源頼朝を示すか、などを調べてみても「武家と公家」の関係を位階(序列)の視点から考察する等の研究は山ほどあります。関心がおありでしたら、それらの研究論文をお読みになることをお薦めします。
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さて、律令国家の組織には神祇官と太政官の二官があるわけですが、政治・行政の中心は太政官で、その中枢にあるのは公卿(議政官)です。

公卿とは三位以上を原則的に指しますが、四位でも参議は公卿です。ただし、太政官の最高政策・意思決定機関の太政官会議に参加できるのは大臣・大中納言・参議(以上を歴史用語で議政官・現任公卿と呼びます)であり、三位以上でも議政官の職にないものは会議に参加できませんので、政治的影響力は議政官と比べ、格段に落ちます。この議政官の下に左右弁官局と少納言局があります。少納言局は侍従を兼任し、小事の奏宣言、内外印の管理などが職務です。これに対して弁官は、左弁官局が中務・式部・治部・民部省、右弁官局が兵部・刑部・大蔵・宮内省を管轄することが職員令(大宝律令は官員令)に定められていますが、実際は左右に関係なく地方官を含め八省以下の諸司を管轄し、議政官の指揮のもと、政務を執行し、太政官符を作成する機関です。太政官は、(天皇-)議政官-弁官-八省・諸国・諸司の流れの中で政務を処理する組織です。また、太政官会議の結果を太政官符の形で下部の諸司に命令し、それが法律(格)として成立しますから、立法権を持っていたことになります(天皇も当然持っていますが)。
一般政務(官政)を見ると、八省以下の官庁は太政官の事務局である弁官に指示を仰いだり、報告する。弁官は必要に応じて指示を与えたり、弁官が大臣(大・中納言の場合も)に指示を仰ぎ・報告したり、直接大臣のもとへ行かせたりする。大臣は他の公卿と討議し、弁官と同じように指示を与えたり、天皇に案件を上げたりします。

この時、太政大臣・摂関(大臣を兼任しても)は政務に関与しないので、左大臣(いない場合は右大臣以下中納言まで)が主導します。左大臣は一上(いちのかみ)と呼ばれ太政官の筆頭であり、朝議を主宰し、太政官会議(議政官会議・公卿会議)を主導するので大きな権力を有することになります。王朝国家の時代になりますが、藤原道長は摂関・太政大臣に長くならず、左大臣・一上として政務の中心にあり(摂関の実質である内覧は就任)、政権を維持した経緯もあります。
また、議政官の構成も大事な要素です。717年に藤原房前が参議になりますが、父右大臣不比等と2名に議政官となります。これは、それまでの各有力氏から1名議政官から出ていた体制から大きな変化をもたらすことになります。736年には議政官8名中4名が藤原氏(不比等の四子)により占められ、以降も10名前後の議政官中3~5名を占め、太政官をリードしていきます。
天皇と貴族との関係ですが、律令は天皇の独裁が可能な制度設計ですし、自分の考えを推し進めることもありますが、政治は相対的な関係ですので、制度がそのままの権力関係を規定する訳ではありません。議政官会議にしても会議前に侍従・蔵人等を通じて天皇の意向を踏まえる場合も多く、また天皇も太政官から上がってきた案件について意見を差し挟むこともあり(多くは原案通り)ます。しかし、左大臣(もしくは右大臣)は天皇の意向も配慮しつつ、通常は一上として議政官会議を背景として、執政の臣として政治をリードしたと考えられます。
なお、摂関・太政大臣については、基本的に議政官ではなく、太政官の政策遂行・会議にタッチしません。天皇の後見であり、天皇の代行や代理者としての性格が強いと思います。仲麻呂・道鏡・藤原良房・基経の四名が該当しますが、天皇が幼少であったり、傍系からの即位であったり(擁立の臣)する中で、ある面大政委任の意味があったように思います。

摂関・太政大臣や律令は文書主義なので詔勅・太政官符・論奏などについてももう少し詳しく書いた方が良いとは思いますが、長くなってしまいましたのでこの辺で終わりにします。
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この回答へのお礼

長々とありがとうございます。参考にさせていただきます。

お礼日時:2011/05/06 19:01

「律令国家の権力構造」とは非常に難しい質問ですので、お望みの内容になるのか自信がありませんが、わかる範囲で。

政治の変遷はお解りになっているとのことですので、解っていることを書いてしまうかもしれませんが、説明の必要がある部分を最小限としますので、ご容赦ください。
まず、律令国家の概念で考えると、大化の改新(乙巳の変)から10世紀頃まで。902年の最後の班田が画期となり、個別人別支配・課税から、土地課税支配の王朝国家体制に移行するまでと定義し、特に奈良時代と呼ばれる頃を最盛期とする政治体制と考えると、権力の核は2つ、もしくは3つあると考えられます。1-天皇、2-大臣・大中納言(参議)などの太政官議政官貴族層、3-太上天皇です。
この権力の核のバランスについて参考になるのが恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱です。
天皇と太上天皇の関係については、この乱が勃発する前に孝謙上皇は淳仁天皇に対して、「今の帝は常の祀りと小事を行ひ給へ、国家の大事と賞罰二柄は朕行む」として天皇大権を取り上げたこと(天皇大権は天皇御璽とともに淳仁天皇のもとにあったとの説もあり)。律令で太上天皇の扱いは天皇と同等としており、中国の退位した皇帝(太上皇)の臣下扱いとは違い、特異性があります。孝謙天皇に対する聖武上皇、淳和・仁明天皇に対する嵯峨上皇のように上皇の方が優越性を持っていることがあり、平城上皇は嵯峨天皇の朝廷と並び称される二所朝廷と呼ばれ、遷都の命までも出しています。ただし、この直後薬子の乱の失敗で引退生活となりますが。
恵美押勝の乱は太政官と天皇の関係についても示唆を与えてくれています。仲麻呂は太政官印(外印)を確保し、天皇御璽(内印)及び駅鈴についても淳仁天皇の手元にあることにより、間接的に確保していたものを、争奪戦の結果孝謙上皇側の有に帰し、近江に走って敗死します。この間、仲麻呂側は太政官印を用いて太政官符(命令書)を発行し、孝謙上皇側はこの効力を否定する通達を出しています。また、孝謙上皇側に淳仁天皇を軟禁?された仲麻呂は塩焼王(氷上塩焼)を今帝と称するなど、当然といえば当然ながら、天皇の存在なくしては太政官の存在はないことになります。かといって仲麻呂が太政官符を発行したことは効果があるためで、すべての官司に命令できること、六位以下の位記の捺印は太政官印であること(五位以上は天皇御璽)、詔・勅にはその実施を命じる太政官符を添えるのが原則であったことなど、太政官・太政官符は大きな権力・権威を有したものと考えられる。中国でも皇帝と宰相との関係は微妙で相対的な関係であり、天皇と大臣等太政官の議政官の関係も似たような性質を持っていたと考えられます。
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この回答へのお礼

ありがとうございます。参考にさせていただきます。

お礼日時:2011/05/06 19:01

律令国家においては、権力は職分に付与される。


http://homepage1.nifty.com/kitabatake/kani-houro …
これです。

ということで、権力を握るとは、人事権を握ることです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E8%A6%A7
内覧として、文章を閲覧・発行できることが摂関政治のキモで、摂関政治の典型とも言われている道長は実は摂政を一年くらいしかやっていない。
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