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No.2
- 回答日時:
> Iスピンロックは、Hartmann-Hahn条件を満たす事という理解でいいのでしょうか?
はい。とりあえずはそれでいいと思います。
> IIなぜ、スピンロック(CPといった方がいいのでしょうか?)を行うと T1が短くなり、測定時間が短くなる理由もご存知でしたら教えてください。
T1が短くなるわけではないです。
CPを行わない場合(DD/MAS NMR)は、FIDを取り込んだ後、13Cの磁化が熱平衡時の値に戻るまで待ってから次のパルス列を始めますが、CPを行う場合(CP/MAS NMR)は、プロトンの磁化を13Cに移してFID信号を得ているので、プロトンの磁化が熱平衡時の値に戻りさえすれば次のパルス列を始めることができます。つまり、DD/MAS NMRの繰り返し時間は、13Cの縦緩和時間T1Cの5倍くらいの長さにする必要がありますが、CP/MAS NMRの繰り返し時間は、1Hの縦緩和時間T1Hの5倍くらいの長さで済むということです。たいていの試料ではT1H<T1Cなので、その分だけ測定時間を短くすることができます。
また、CP/MAS NMRではプロトンの磁化を13Cに移しているので、13Cの磁化を90°パルスでxy面内に倒すDD/MAS NMRよりも、xy平面内の13Cの磁化が大きくなります。つまり、FID信号が大きくなります(最大でγH/γC倍)。FID信号が大きくなるということは、同じS/N比を得るために必要な積算回数が少なくて済むということですから、測定時間が短くなります。
> IIIスピン列は1Hと13Cと両方書くのが普通でしょうか?
13C-NMRスペクトル測定用のパルス列では、1Hのパルス列を省略することはあっても、13Cのパルス列を省略することはないでしょう。
> IV T1ρHは スピンスピン 緩和時間でしょうか?なぜ 非結晶と結晶で T1ρHの長さが異なるのでしょうか?
T1ρHは、プロトンの回転座標系における縦緩和時間です(ρはrotationの意、たぶん)。
(実験室座標系の)縦緩和時間T1は、静磁場Boの方向(z方向、縦方向)の磁化成分が熱平衡状態のときの値に戻る時定数です。それに対して、横緩和時間T2は、静磁場に垂直な方向(xy方向、横方向)の磁化成分が熱平衡状態のときの値に戻る時定数、つまりxy面内の磁化成分が消失する時定数、さらに言えばFID信号が減衰する時定数です。
スピンロックをかけないと、90°パルスでxy面内に倒されたプロトンの磁化は時定数T2Hで小さくなっていくわけですが、90°パルスの直後にスピンロックをかけると、この磁化が消えていく速さを遅くすることができます。どのくらい遅くなるのかは、スピンロックに使う回転磁場の大きさB1Hと、試料中の分子運動の速さに依存しますけど、たいていの固体試料ではT2H≪T1ρHとなります。
「回転座標系における縦緩和時間」と呼ばれるのは、実験室座標系からプロトンのラーモア周波数(共鳴周波数)で回転する座標系に移ると、静磁場Boが消えて、かわりにラーモア周波数で回転する磁場B1Hが静磁場になり、さらに90°パルスで倒された磁化と磁場B1Hの方向が一致しているからです。ちょっと分かりにくいかもしれませんが、回転座標系に移ったあとはB1Hの方向を縦方向にとる、と考えてください。試料中の分子の熱運動の速さがかなり速い場合には縦緩和時間は静磁場の強さには依存しないのですけど、多くの固体では分子の熱運動はそれほど速くないので、静磁場が強いほど縦緩和時間が長くなります。ということは、B1H≪BoなのでT1ρH≪T1Hとなります。
T1HやT2Hが分子の熱運動の速さによって変わるのと同様に、T1ρHもまた分子の熱運動の速さによって変わります。同じ高分子でも、結晶相と非晶相では分子の運動性が違いますから、それを反映してT1ρHが結晶相と非晶相で違っているのでしょう。
No.1
- 回答日時:
> Spin Lockをするとなぜ いいのでしょうか?
とりあえずは、スピンロックはCPに“必須”である、と考えてください。1Hから13CへのCPを起こすために必要な、Hartmann-Hahn条件
γH B1H = γC B1C
(γH,γCはそれぞれ1Hと13Cの磁気回転比で、B1H,B1CはそれぞれγH Bo,γC Boの角周波数で回転する振動磁場の強さで、Boは静磁場の強さ)
を満たすためには、1Hと13Cの両方のチャンネルにラジオ波(それぞれγH Bo,γC Boの角振動数で振動する電磁波)を送る必要があります。
> 1Hは、SLSLDDとなっていますが、これは操作の順番を示しているのですか?
はい、そうです。その通りです。その通りなのですけど、最も原理的に単純な測定操作を考えると、SLとDDは全く同じ操作になります。つまり、SLもDDも「強さB1H、角周波数γH Boの回転磁場を1Hに送る」という同じ操作で実現できます。違うのはその目的で、SLはプロトンをスピンロックするために、DDは13Cとの双極子結合を切るために、それぞれの操作を行います。
> 1HのSLを行うときに13CはCPを行うということでしょうか?
1HのSLと13Cの“SL”を同時に行うと1Hから13CへのCPが起こる、と考えたほうが分かり易いかもしれません。便宜上、「13Cの“SL”」と書きましたけど、CPを行っているときは、逆に、1Hチャンネルの方をCPと書いた方が、「何のためにスピンロックをかけているのか」が明解になるので、分かり易くなると思います。
例えば日本電子の「固体 NMR 実践編」
http://www.jeol.co.jp/technical/ai/nm/solid-nmr. …
の11ページ図2-7を見てください。
御質問の添付写真の記法では、このパルス列の1Hチャンネルは
90°| SL | DD |
という書き方になります。
逆に、御質問の添付写真のパルス列の1Hチャンネルを「固体 NMR 実践編」の記法で書くと
90°| SL | CP | DD |
という書き方になります。
このように書くと、添付写真のパルス列は
(1)
操作:1Hは90°パルス,13Cは何もしない
目的:プロトンの磁化をxy平面に倒す
(2)
操作:1HはSL,13Cは何もしない
目的:プロトンをスピンロックしてプロトンの磁化がT1ρHの時定数で減衰するのを待つ
(3)
操作:1HはCP,13CはCP
目的:プロトンの磁化を13Cに移す
(4)
操作:1HはDD,13CはFID取り込み
目的:プロトンをデカップルした13CのFID信号を取得する
という一連の操作によりNMRスペクトルを測定していることが分かります。
1Hチャンネルの操作だけを見ると(2),(3),(4)の操作は全く同じことをしているように見えるのですけど、13Cチャンネルで何をしているのかに気をつけて見ると、その操作の目的と結果が見えてきます。添付写真を見る限りでは、結晶相と非晶相でT1ρHが違うことを利用して13C NMR スペクトルを各相のスペクトルに分離しているんじゃないかな、と思います。
本当に分かりやすいご説明ありがとうございます。 フランス語の授業で全く分からなかったので本当に嬉しいです。
お忙しい所申し訳ないのですが、もう少し教えて頂きたい事がございます。
Iスピンロックは、Hartmann-Hahn条件を満たす事という理解でいいのでしょうか?
IIなぜ、スピンロック(CPといった方がいいのでしょうか?)を行うと T1が短くなり、測定時間が短くなる理由もご存知でしたら教えてください。
IIIスピン列は1Hと13Cと両方書くのが普通でしょうか?
IV T1ρHは スピンスピン 緩和時間でしょうか?なぜ 非結晶と結晶で T1ρHの長さが異なるのでしょうか?
お忙しい所申し訳ございませんが、教えて頂けますと大変助かります。
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