アプリ版:「スタンプのみでお礼する」機能のリリースについて

アミノ酸の研究をしている理系大学生です
芳香環の静電的な相互作用のとりえ方について分からない点があります

ベンゼン環は電離、分極も生じておらず、疎水性が高い分子です
疎水性が高いといことは水溶媒においても水分子と水素結合を介さないはずです

しかし、ベンゼン環は陽イオンなどとπ-カチオン相互作用や、π-π相互作用を取り得ることが分かりました

どちらも静電的な相互作用のはずなのに一方はとりえて、他方はとりえないのはなぜでしょうか

ベンゼン環は分極は生じていないですが、π電子雲と呼ばれる電子がベンゼン環の上下方向に存在していて、この電子雲が関係しているのだろうと思うのですが、よくわかりません

詳しく教えていただけないでしょうか

A 回答 (2件)

基本的には、質問者さんがお考えになっている通り、ベンゼン環や他の芳香環は疎水性が高いものです。


たとえば、ベンゼンを水に混ぜ込んだ場合、相分離してしまってベンゼンと水はお互い弾きあうでしょう。これは、水は水同士で相互作用(水素結合)した方がはるかにハッピーなので、あえてベンゼンを中に入れたがらないためです。質問者さんが描かれている通り、ベンゼンと水の相互作用(水素結合なり双極子相互作用なり分散力なり・・・)は弱いため、水分子間のネットワークを壊してまでベンゼンとなじむ必然性がありません。
この現象を、我々は疎水性相互作用と呼びます。実際に相互作用の大半を担っているのは、水同士の強い相互作用であって、別に疎水性化合物同士で強い相互作用をするということではありません。
ようするに、水が大量にいる(溶媒のように)なっている場合、こうした非常に弱い、芳香環と水(あるいは他のプロトン源)の相互作用は無視しうるほど弱いものです。ですが、有機溶媒の中、タンパク質分子の中や、高分子の網目の中、あるいは結晶の中のように、水がほとんど存在しない状況にあるベンゼン環はどうでしょうか。
質問者さんが書かれているとおり、芳香環には上下にパイ電子があります。これは電子というくらいなので、正電荷と相互作用します。真上に近い位置にプロトンなりカチオンなりを置いた場合、静電的に引き合うでしょう。実際に、ベンゼン環の真ん中は負に帯電していることは知られており、ちょうど良い位置に存在する正電荷と引力相互作用を生じ舞ます。アルコールなどの水素原子は正に分極しているため、正電荷よりは程度は弱いでしょうが、ベンゼン環と静電相互作用しうるでしょう。
なお、この手の現象で有名なものに、アントラセンなどのアセン類の結晶構造があります。隣の分子のC-H結合が、別の分子のパイ電子系に向かって位置する形で結晶化します。これは、C-H結合がわずかにH+に分極するため、C-H-パイ相互作用を起こすからです。
なお、パイ-パイ相互作用はまた別の話です。質問者さんはベンゼンの水素結合の例で出していますが、間違いです。これは水素結合のような通常の静電相互作用とは違うものとされていて、誘起双極子間の相互作用(いわゆる、分散力、ロンドン力と呼ばれるもの)として説明されています。ちょっとわかりにくいのですが、これもパイ電子に起因しています。隣り合う二個のベンゼン環を考えた場合、パイ電子の分布は瞬間ごとにゆらいでいます。一個のベンゼン環のパイ電子のゆらぎは、隣のベンゼン環のパイ電子分布に影響し、結果として瞬間的に電荷同士の引き合いが生じます。これが延々と繰り返されて、両者の間に引力が生じるというものです。
なお、上述したように、普通の芳香環を混ぜた場合は、C-H-パイ相互作用する形、ようするに両者は積みかさらない形が一般には有利ですが、芳香環が大きくなったり、何かむりくり積み重なるような工夫をすると、パイ-パイ相互作用した構造になります。
    • good
    • 2
この回答へのお礼

早速の回答ありがとうございます
おかげ様で少しずつわかってまいりました

ベンゼン環同士のπ-π相互作用のご説明で疑問に思ったのですが、ベンゼン環のπ電子とは誘起双極子なのでしょうか、(永久?)双極子という認識でいたのですが…

水分子とベンゼン環の相互作用について、いまだ分からない点について再度質問してもよろしいでしょうか

(1)例えば水分子一つとベンゼン一つだけが存在する系と水分子二つのみが存在する系を比べた場合、系内の双極子/双極子相互作用だけで考えるとどちらも同様に取り得るのでしょうか
どちらも取り得るが、電気陰性度などの電子の偏りの度合いの違いから、水分子同士の方が静電的な相互作用は強いのでしょうか

(3)(1)の観点以外にも、双極子/双極子相互作用以外にも結合に関わる因子が存在して、その因子の寄与も全部含めると、ベンゼン環と結合するより、水同士で結合していた方が安定ということでしょうか

(2)さらに、実際に溶液中で水分子は大きな水素結合ネットワークを形成しているために、相乗効果による別の力が働き、水素結合自体を強めているのでしょうか

質問が多くなってしまいましたが、もしご存知であればよろしくお願いいたします

お礼日時:2014/12/01 21:30

補足についてです。



>ベンゼン環のπ電子とは誘起双極子なのでしょうか、(永久?)双極子という認識でいたのですが…

ベンゼンには双極子はありません。そもそも、分子の中の電子が双極子というのはおかしいです。
ベンゼン環の電子分布は対称でどこにも双極子はありません。分子が対称なので当たり前です。
もちろん置換ベンゼンだと大なり小なり双極子は生じますが、パイ電子の関与する相互作用に話を絞ればそんなに違いはありません。

コメントが不足していましたが、C-H-パイなどのパイ電子を含む相互作用の場合、C-H(O-Hでもなんでも良いですが)は永久双極子ですが、パイ電子側は双極子によって誘起された誘起双極子の源となります。
パイ電子はσ電子に比べるとはるかに動きやすい(分極しやすい、柔らかい)ため、容易に他の双極子(電荷でも良いが)の影響を受けて誘起双極子を生じ得ます。ベンゼンのみならずパイ電子化合物の特徴の一つです。

(1)例えば水分子一つとベンゼン一つだけが存在する系と水分子二つのみが存在する系を比べた場合、系内の双極子/双極子相互作用だけで考えるとどちらも同様に取り得るのでしょうか
どちらも取り得るが、電気陰性度などの電子の偏りの度合いの違いから、水分子同士の方が静電的な相互作用は強いのでしょうか

水同士だと通常の水素結合になります。永久双極子ー永久双極子の相互作用で、非常に強いものです。
(ただし水素結合は指向性が高い相互作用であるため、単に静電的なものとしてとらえるのは間違いですが)
水とベンゼンだと、永久双極子ー誘起双極子となってずっと弱くなるでしょう。定量的な値は専門的な論文を当たる必要がありますが。

(3)(1)の観点以外にも、双極子/双極子相互作用以外にも結合に関わる因子が存在して、その因子の寄与も全部含めると、ベンゼン環と結合するより、水同士で結合していた方が安定ということでしょうか

水素結合というものを全て双極子の相互作用に含めて良いのか?という問題がありますが、水と水(あるいはアルコールなど)の相互作用は、ベンゼンとのそれにくらべ圧倒的に強いことは間違いないでしょう。
どれくらい強いのか?ということは今でも専門的な研究が理論・実験の両面でされている問題です。
多環芳香族のカゴ構造の中に閉じ込めた数個の水分子の場合でも、水同士が強い水素結合によって氷のような構造を取ることは知られています。

(2)さらに、実際に溶液中で水分子は大きな水素結合ネットワークを形成しているために、相乗効果による別の力が働き、水素結合自体を強めているのでしょうか

数個の水分子クラスターの個々の水素結合に比べ、巨大なネットワークを作っている時は結合強度が高まっているのでは?ということでしょうか?私も専門外なので分かりかねます。
一本一本の結合の強さは孤立したクラスターの方が強いのではないかと思うのですが、はっきりとしたデータは持ち合わせていません。
    • good
    • 1
この回答へのお礼

お礼が遅れてしまいました

アミノ酸の研究をしていますが、このような分野についての専門知識を持っていなかったため大変助かりました

おかげ様で、研究のために今後勉強するべき内容の指針も大まかに立ちました

ありがとうございました

お礼日時:2014/12/07 13:41

お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!