NHKのまいにちドイツ語11月号92ページ Maria Theresia in Ungarnの2節目4行目~10行目までの文です。
;da nun diese auch insbesondere unserem teuren Koenigreich Ungarn Verderben drohen ・・・
このdieseはGefahrenを指し主語、drohenが動詞でですが、これは自動詞しかないようですね?3格をとって、
「迫る」という意味になりそうですが、「危険がまたとりわけわれわれの大切なハンガリー王国に迫っているので、・・・
ということになるでしょうか。その場合、このVerderbenは何格で(4格?)drohenとどうつながりますか?
訳は「この危険はとりわけ、愛するハンガリー王国にも破滅をもたらそうとしています」となっています。
他動詞としての使い方があるのでしょうか?
また5行目のso wollten wir dies den edlen Staenden desselben nicht ・・・で、diesは前の文全体を指し、desselbenは
「ハンガリーの」で前のden edlen Staendenにかかりますか?
9行目の,in so vieler Geschihiten Denkmalen ・・・はin Denkmalen so vieler Geschichitenが普通の順序ではないかと
思うのですが、詩でもないのに何故前後しているのでしょうか?
いろいろ質問しましたが、教えていただけると大変助かります。よろしくお願いいたします。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
drohenは「迫る」と訳されていて、それはそれでいいのですが、「脅す」というのがもとの意味です。
「迫る」「~しそうだ」というときは、zu不定詞句も使います。Feuer im Dachgeschoss, die Flammen drohen sich auszubreiten.
屋根裏階の火事、炎は広がろうとしている。
drohenを「脅す」の意味で使うときは、「何で脅すか」は言わないのが普通です。インターネット上に、わずかながらjm. mit et. drohenの用例がありますが、現代のドイツ語としては正しい用法ではないと思います。それを言いたい場合は、類語のbedrohen(他動詞)とmitを使い、jn. mit et. bedrohen(人=4格+mit3格)のようになります。
もう一つdrohenの類語でandrohenという他動詞があります。これは、3格と4格の両方を使い、jm. et. androhen「ある人をあることを以て脅す」となります。drohenには現在このような用法はなく、辞書にも載っていません。しかし古い時代にはあったようで、グリム兄弟が編纂した古いドイツ語の辞書には、jm. mit et. drohenよりも、jm. et. drohenの方がよく使われると出ています。古語が多いので読みにくいですが、下のページで、第4項と第6項に説明があります。第6項には「他動詞(transitiv)」とあります。
http://woerterbuchnetz.de/DWB/?sigle=DWB&mode=Ve …
4. mit etwas drohen etwas androhen, gebräuchlicher als die construction mit dem acc., wovon unter 6 die rede sein wird.
6. transitiv. wie andräuen, androhen.
つまり、先ほど現代のドイツ語としては正しくないといったjm. mit et. drohenはグリムの時代にも少なく、むしろ他動詞的な用法、jm. et. drohenの方が使われていたことになります。
いずれにしても古いドイツ語の用法で現在は使われない形ですが、
Die Gefahren drohen unserem Königreich Ungarn (3格) Verderben (4格).
その危険は、我々のハンガリー王国を破滅でおびやかす。
というのがこの文の核です。
diesが指すのは直前の文ではなく、その前のDie betrübte Lageからumgebenまでと考えるべきでしょう。直前の文は、理由を表すdaで始まる複文なので、diesを隠しておくべきではない理由を述べています。desselbenは直前のUngarのことなので、den edlen Ständen desselbenは「ハンガリーの貴族階級たちに」という意味になります。なお、テキストにも説明がないのでお気づきではないようですが、verborgenは「隠しておく」、unverborgenは「隠しておかない」ですから、nicht unverborgenでは、論理的に考えると再び「隠しておく」になってしまい、文の内容と矛盾してしまいます。こういうnichtの用法も古いもので、後続の否定語を強調するために重複しているだけで、unverborgenを否定する意味はありません。
Denkmalenの位置ですが、詩でなくても、格調高い文書の場合、2格を前に出すことがよくあります。マリア・テレジアの演説ですし、もとはラテン語です。このドイツ語訳自体も古い時代のものなので、ラテン語で書かれた国王の演説なら、このような文体になるのが自然だと思います。なお、ここもちょっと説明を加えますが、テキストの訳は「幾多の逸話の記憶の中で」となっています。語注には、「記念碑」の意味では通常複数形はDenkmälerになるので、ここでは雅語で語源の「記憶のしるし」の意味に解釈した、とあります。この説明には少々疑問があります。たしかにDudenの辞書には、Denkmaleという複数形には雅語(gehoben)という表示があります。しかしグリムのドイツ語辞典を見ると、昔はDenkmälerとDenkmaleの両方の形があったようで、Denkmaleだから違う意味になるとはいえないようです。現在はDenkmälerの方が普通なので、古形のDenkmaleは雅語としてのみ使うというだけではないかと思います。グリムの辞書には、「記念碑」の意味でDenkmaleを使っている例として、ゲーテの「親和力」第2部第2章の一節を引用しています。
Es gibt mancherlei Denkmale und Merkzeichen, die uns Entfernte und Abgeschiedene näher bringen.
遠く離れた人や亡くなった人を私たちに身近に感じさせる記念碑や記念品がある。
また、Denkmalには、過去に書き記された作品(erhaltene schriftliche Werke der Vorzeit)という意味もあります。これもグリムに出ています。哲学者カントの著作の中に、Denkmaleという複数形とともに、「in den Denkmalen der Geschichte」という用例があります。そう考えると、in so vieler Geschichten Denkmalenというのは、「あらゆる歴史について書き遺されているもの」、という意味にもとれます。そのあとにberühmte(よく知られた)という形容詞がつながるので、「記憶の中でよく知られている」というのはしっくりこないようです。
ここから、以前の回答の訂正と補足があります。先日、用事があって、オーストリアの友人とメールで連絡し合っていたのですが、今までの回答で気になっていた点があったので、ついでに問い合わせてみました。
まず、「mit in die Uni」という文章がありましたが、あのあとNHKの語学のホームページの「~さんが学んだ表現」とかいう書き込みのページに、誰かが「in die Uni(強調)」と書いていました。番組中にそういう説明があったのでしょうか。友人の答えは、mitnehmenのmitはもちろん一番後ろに来るのが原則ですが、強調するものをあとに持ってくることがあるということで、mitはやはり文法的には副詞ではなく、mitnehmenの前綴りとなるそうです。Ich nehme ihn in die Uni mitでも当然まちがいではないわけで、どちらも可能ということになります。この点に関しては、NHKのテキスト通りであっていました。
ただ、Der schwarze Todの文の方は、私の解釈が正しいようです。die Trommel rührenは、やはり宣伝するという意味の慣用句で、太鼓を叩くという意味ではないそうです。welchesも私の解説通り関係代名詞ではなく、was für ein fürchterliches Spielと同じ意味になります。そしてこのSpielは、不足するSiechknechtの後釜を探して毎日大騒ぎしている状況のことを指しているそうなので、私の回答通り、太鼓を叩く音ではありません。私は、昔のことなので、ひょっとして本当に太鼓を叩くことがあったのかと気になって、それも尋ねてみましたが、少なくとも学校の歴史の時間などではそのようなことを習った覚えはないので知らない、とのことでした。Siechknechtという語も死語で、友人も今回初めて聞く言葉だそうです。
この友人は作家で、言葉については信頼できるので、ほかの過去の回答についても確認したいと思っています。今回は、ほかにOKWaveの質問に回答したときの疑問もあったので、一度にたくさんでは悪いと思い、以上の二つについてだけ確認しました。今回のDenkmaleについても、機会があったら聞いてみます。
Tastenkasten先生、ありがとうございます。
>drohenには現在このような用法はなく、辞書にも載っていません。しかし古い時代にはあったようで、グリム兄弟が編纂した古いドイツ語の辞書には、jm. mit et. drohenよりも、jm. et. drohenの方がよく使われると出ています。
古い時代のドイツ語ですか。bedrohen,androhenも併せてご説明いただきありがとうございます。
>テキストにも説明がないのでお気づきではないようですが、verborgenは「隠しておく」、unverborgenは「隠しておかない」ですから、nicht unverborgenでは、論理的に考えると再び「隠しておく」になってしまい、文の内容と矛盾してしまいます。こういうnichtの用法も古いもので、後続の否定語を強調するために重複しているだけで、unverborgenを否定する意味はありません。
気がつきませんでした。ありがとうございます。
>詩でなくても、格調高い文書の場合、2格を前に出すことがよくあります。
そうなのですね。
>グリムのドイツ語辞典を見ると、昔はDenkmälerとDenkmaleの両方の形があったようで、Denkmaleだから違う意味になるとはいえないようです。
>in so vieler Geschichten Denkmalenというのは、「あらゆる歴史について書き遺されているもの」、という意味にもとれます。そのあとにberühmte(よく知られた)という形容詞がつながるので、「記憶の中でよく知られている」というのはしっくりこないようです。
先生の訳が正しいと思います。すばらしいです。
申し訳ございません。テキストに「強調」という説明がありましたが、見落と。していました。でもmitが副詞として使われる例もたくさん引用していただき、とても勉強になりました。
>die Trommel rührenは、やはり宣伝するという意味の慣用句で、太鼓を叩くという意味ではないそうです。welchesも私の解説通り関係代名詞ではなく、was für ein fürchterliches Spielと同じ意味になります。
以前のことまで気にかけていただき恐縮です。ありがとうございました。NHKのテキストは先生に編纂していただきたいです。
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