2023年3月7日の、H3ロケット打ち上げ失敗の原因は、120Vまでしか加えてはいけないトランジスタに、190Vの電圧を繰り返し加えた結果、トランジスタが破損したという、壊れて当たり前の、「お粗末」な事故原因でした。
この、あきれ果てた、しょうもない事故原因により、搭載していた、280億円の地球観測衛星「だいち3号」も失われました。人間のやる事ですから、ミスは避けられません。むしろ、ミスを発見しただけ、「偉い」と誉めてやるべきでしょう。
しかし、こんな初歩的なミスを防ぐ手段は無いのでしょうか? 最近、流行りの、AIを使って、ミスを発見させるとかできないのでしょうか?
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トランジスタに過電圧!H3ロケット失敗の調査報告がアップデートされました。
No.3
- 回答日時:
私はこの分野の専門家(設計も品質管理もやっていた)ですが、あり得る典型的な設計ミスですね。
定格が120VのPNPトランジスタに190Vをかけてしまったという単純な話ではないようです。
第2段目のエンジンを点火させるのに(リレーの)ソレノイド(コイル)を駆動する設計になっていたようですが、その瞬間にサージ性の逆起電力(コイルサージ)が発生し(この過渡現象は電子回路の設計を専門とする人なら知っていて当然)、それが190Vに達したということのようです。
コイルの駆動電圧(定格電圧)は120Vよりもずっと低いはずなので、この段階での設計ミスはなかったと思えますが、コイル駆動時にコイルサージが発生しそれが190Vにもなるということを見落としたんでしょう。電子回路設計の初歩レベルではよくある失敗です。
この具合の悪い設計は1996年に開発が始まったH2Aロケットから存在していたようで、そのまずい設計が四半世紀も気が付く人がいなかった、というのはお粗末です。
120VのPNPトランジスタに190Vのサージが加わっても、すぐに破損はせず(耐えていた)、何度か点火させるテストをやっているうちに破損が進み、ついに本番で事故になった…というのが真実みたいです。
No.4
- 回答日時:
第二段エンジン点火の電気系統の3つのコンポーネントを構成する各パーツについて、新たな故障シナリオが追加されたということですね。
故障シナリオ
No. コンポーネント パーツ
―――――――――――――――――――――――――
× 1 PNP MOSFET
× 2 PNP FETリード線
△ 3 PNP ソレノイドリード線
× 4 ハーネス シールド結線部
× 5 ハーネス シールド結線部
× 6 ハーネス シールド結線部
× 7 ハーネス コネクタ
△ 8 エキサイタ コンデンサ
△ 9 エキサイタ コンデンサ
△ 10 エキサイタ 貫通フィルタ
△ 11 エキサイタ トランジスタ
× 12 エキサイタ トランジスタ
× 13 エキサイタ トランス
× 14 エキサイタ ダイオード
△ 15 エキサイタ フィルタ組立
△ 16 エキサイタ 発振回路部
△ 17 エキサイタ 発振回路部
△ 18 エキサイタ トランジスタ 【新規追加】
この新たな故障シナリオを含めて18件中の9件が「現時点では可能性は否定できない(△)」となっています。18件目だけが原因と確定したわけではありませんね。有力な原因かもしれませんが。
設計者が十分なサージ耐圧を考慮していなかったとは考えにくいです。少なくとも無限大の耐圧を想定することはあり得ない。設計段階でサージ耐圧を低く見積もったのか、十分な耐圧を持たせていたのに想定外の要因でそれを上回ったのか、等々。真の原因を究明しなければ、失敗の原因が明らかになったとは言えないし再発防止策も立てられません。
--------------
H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況について
https://www.jaxa.jp/press/2023/05/20230525-1_j.h …
(抜粋)
■ 故障シナリオの検証結果【シナリオNo.18】エキサイタ内部トランジスタの故障
● シナリオ詳細(時系列)
i. 地上点検時、SEIG(エキサイタ電源ON)時に、エキサイタ内部の電気的発振動作により、内部で使用されているトランジスタに絶対最大定格以上の電圧が印加される。
ii. 上記を繰り返すことにより、徐々にトランジスタを損傷し、電圧耐性が低下。
iii. フライト中のSEIG(エキサイタ電源ON)にてトランジスタが定格以上の電圧に耐えきれず降伏(短絡)し、過電流に至る。
● 検証方法(実施中)
・ 回路モデルに基づく電圧波形シミュレーションにより評価を行う。
・ エキサイタ内部でのトランジスタ印加電圧波形を計測する。
・ トランジスタの実力としての耐圧量を、部品単体試験により調査する。また最大定格を超過する電圧を印加した場合の故障の様態を調査する。
・ エキサイタとしての耐性確認試験を実施する(試験用エキサイタを実際に故障するまで連続動作させる)。
● 検証結果(一部)
・ 回路モデルに基づくシミュレーションの結果、最大定格以上の電圧を印加している可能性があることが判明。
・ エキサイタ内部の電圧波形を実測したところ、実際にトランジスタの最大定格を超過する電圧が印加されていることが判明。これらから、現時点では本シナリオが発生した可能性は否定できない。
--------------
H-IIAから発生していた共通事象とのことですが、逆に言えば46号機まで問題は起きなかったわけで、極めてレアな問題だったとも言えるでしょう。
大規模システムの開発に携わった経験から言えば、巨大で複雑なシステムは完全無欠ということはあり得ません。形あるものはいつか壊れる・設計ミス(ハード/ソフトのバグ)は最初からある(絶対ないという証明はできない)のが大前提です。
不幸にして大問題が発生したとき、それが単純な原因だったということはしばしばあります。その単純な原因が見つからなかった原因が単純とは限りません。経験者なら実感できると思います。
No.5
- 回答日時:
>120Vまでしか加えてはいけないトランジスタに、190Vの電圧を繰り返し>>加えた結果、トランジスタが破損したという、壊れて当たり前の、「お粗
>末」な事故原因でした。
これを読んでカチンときた人はやっぱりいるようですね。
技術的なストイックさ、そして謙虚さは日本の美徳でもあり強みではありましたが、他人や先輩、エラい人の意見を鵜呑みにせず、技術的に「違うものは違う」とはっきり言う。
日本の未来も安泰だと思います。
(1)まずは故障シナリオの1つとして追加されたにすぎない点は注意です。
(2)確かにJAXAの報告書p.49(資料47-1)の記述を見ると印可電圧の最大電圧をあまり評価していなかったとも読み取れるので、額面通りであればその点は難かなとは思いました。
(サージ電圧が原因と聞いて最初、他の稼働装置や電源からのノイズで内部部品に想定以上の電圧が(条件により時々)印可されたパターンかとも思いましたがそっちではないようですね)
対策としても、部品選定そして回路シミュレーションですか...。確かに最近の流行ではあるのですが(皮肉)、そういう精密設計で限界を責めるより、何も考えずに部品定格を倍にしたほうが良いと思うんですよね(異端的な考え...)。
ただ素人なりに考えると、おそらく重量とか部品価格とかがシビアで余裕度があまりとれないんでしょうね。
定格を越える電圧が印可されることを見逃していた。
一周廻って方向性としては間違ってはいないのが何とも口惜しい所ですが、ただそれだけを上げて批判するだけでは「考えが浅い」というか「全くわかっちゃいねえなお前」って言われても仕方がないと思います。
No.6
- 回答日時:
5月25日の最新の発表では、ソレノイド(コイル)に流す電流を切ったときに発生するサージ性の逆起電力(コイルサージ)が原因でトランジスタの定格電圧を超えてしまった(定常状態では定格電圧を超えない)、という説明をしていますね。
定常状態では定格電圧を超えることはなく(その点での設計ミスではなく)、特殊な状態のとき(ソレノイドコイルに流す電流を切るというのは、必ず存在するので特殊とは言えないかも知れないが)に出る一瞬のサージが定格電圧を超えてしまった、ということみたいです。
「120Vまでしか加えてはいけないトランジスタに、190Vの電圧を繰り返し加えた結果、トランジスタが破損したという、壊れて当たり前の、「お粗末」な事故」とは性質が違う過電圧です。
このサージがどのくらいの電圧になるかは簡単に計算で出せるものではなく、実際にやって実測しないと分かりません。
それが想定を超えたのか、そもそもサージ吸収回路を設けておくことを忘れたのか、5月25日の発表の段階ではまだ分かりませんが。
No.7
- 回答日時:
後出しじゃんけんでなら必ず勝ちます。
じゃんけん前に、確実に勝つことを予測するのは困難です。
じゃんけんで負けた後に、負けたことを責めたり「どうすれば勝てたか」を単純に議論しても意味がありません。
もちろん、どれだけのことを想定して、どこまで「確認、検証」しておくかは、技術者の技量と経験と「勘」によるところが大きいでしょう。
ただし「出来るだけ幅広く想定して対策しておく」ということにはコストと時間がかかるので、今回のH3ロケットのような「コストダウン」が至上命令の場合には、その「念のためにやっておいた方がよい」部分を最小限まで切り詰めた(切り詰めさせられた)ということが仇になっていることは間違いないでしょう。
日本のモノづくりや工業製品が世界を席巻できたのは、そういった「出来るだけ幅広く想定して対策しておく」ことによる信頼性・品質の高さにあったわけですが、それを「コストダウン」や「コスパ、タイパ」で切り詰めたときにどこまで維持できるのか、どこまで切り詰めてよいのか、リスクとベネフィットを評価するシステマティックな方法論が必要なのでしょうね。
No.8
- 回答日時:
>定格電圧を間違えて部品を取り付けるとか、
>こんな失敗なら、近所の下手な電気屋でもやりますよ。
電源系のサージ電圧の見積もりって、スイッチング系の
電源設計の鬼門の一つなんだが・・・
絶対町の電気屋じゃできませんよ。
定格電圧を選ぶまでが大変なんだから・・・
結局、負荷の内容や負荷変動も考慮して綿密にシミュレーションして、実験して初めてできるんだけど
金と時間がものすごくかかります。
No.9ベストアンサー
- 回答日時:
>しかし、高々、千円程度のトランジスタの為に、搭載していた、
>280億円の地球観測衛星「だいち3号」が海の藻屑と消えたのも
>事実でしょう。
それは載っけると判断した側の問題。
Falcon9だって打ち上げが安定するまで2回の爆発炎上ヘて
10年近くかかってる。当然リスクは予想すべきでしょう。
初の実験機にお宝乗せて飛ばしたのが悪い。
スーパーへビーも爆発炎上したけど、所定のテスト項目をクリアしたので
大成功ということになってます。これからも有人飛行に向けてガンガン使い捨てて問題を洗い出す予定になってます。
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