一応手元にある量子力学の教科書二冊を調べながら解こうとしてもよくわからなかったのでヒントでもいいので教えてほしいです。
問題 次のような壁を持つ箱型ポテンシャルの1粒子束縛問題を考えよ。
V(x)=∞ (x<0), V(x)=0 (0<x<a), V(x)=Vo (a,x)
と言う条件です。(見にくくて申し訳ありません。)
私はまずシュレーディンガー波動方程式(時間に依らない)を書いて、その後、波動関数の一般解を書きました。
そして境界条件でその一般解を解こうとしました。が形が左右対称ではないからかうまく解けない状態です。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
この問題のポイントは、a<xでV(x)が∞になっていないところ、即ちx=aでポテンシャルの壁の高さが無限大でないところにあります。
もしこれが無限大なら、波動関数ψ(x)に対し「x=aでψ(x)=0」の条件を課すことができすぐに解けるのはご承知の通りです。時間に依存しないSchroedinger方程式は
-(h^2/2m){(d^2/dx^2)+V(x)}ψ(x)=εψ(x) (1)
と書き下せます。ここにhはプランク定数÷2π、いわゆる「hバー」とします(以下同じ)。εはエネルギー固有値です。
0<x<aにおいてはV(x)=0ですから
ψ(x)=C1 exp{i√(2mε)x/h} + C2 exp{-i√(2mε)x/h} (2)
の形の解が出るのもご承知の通りです。ここにC1、C2は定数、iは虚数単位です。
なお0<xでψ(x)=0ですから、x=0でψ(x)が連続であるためにはC1+C2=0でなくてはなりません。これより直ちにC2=-C1が導かれます。
さて問題はa<xです。V0<εなら
ψ(x)=C3 exp[i√{2m(ε-V0)}x/h] + C4 exp[-i√{2m(ε-V0)}x/h] (3)
形の解が出ます。C3、C4は同様に定数です。
V0>εなら
ψ(x)=C5 exp[√{2m(V0-ε)}x/h] + C6 exp[-√{2m(V0-ε)}x/h] (4)
の形の解が出ます。C5、C6は同様に定数です。
ここまでは既にご自身で解かれたことと推察申し上げます。
さて(3)と(4)について少し吟味してみます。
規格化の要請から
∫|ψ(x)|^2 dx + ∫|ψ(x)|^2 dx = 1 (5)
x=0→x=a x=a→x=∞
でなくてはなりませんが、a<xで(3)の形の解だと(5)は発散してしまいます。xをどんなに大きくしていっても|ψ(x)|^2が0に収束しないためです。この場合電子はa<xの領域でも任意の場所で有限の存在確率を持ちうることになり、実は電子は束縛されていないことを意味します。
次に(4)の形の解ですが、x→∞で(4)が無限大に発散する解は物理的要請を満たしません。従って自動的にC5=0が出てきます。
つまり箱の底(0<x<a)では振動し、箱の外(a<x)では指数的に減衰していくようなψ(x)のみが、実質的に意味を持つことが分かります。
またψの値はx=aにおいても連続、かつ滑らかでなくてはなりません(*1)。
連続の要請から
C1 [exp{i√(2mε)a/h} - exp{-i√(2mε)a/h] = C6 exp[-√{2m(V0-ε)}a/h] (6)
整理して
2 C1 sin{√(2mε)a/h} = C6 exp[-√{2m(V0-ε)}a/h] (7)
を得ます。
滑らかさの要請からは
2 C1{√(2mε)/h} cos{√(2mε)a/h} = - C6 [√{2m(V0-ε)}/h] exp[-√{2m(V0-ε)}a/h] (8)
が出ます。
ここでC6/2C1を改めてCとおくと(7)(8)は
sin{√(2mε)a/h} = C exp[-√{2m(V0-ε)}a/h] (9)
{√(2mε)/h} cos{√(2mε)a/h} = - C [√{2m(V0-ε)}/h] exp[-√{2m(V0-ε)}a/h] (10)
と書き換えられます。
(9)(10)の双方を満たしうるεが存在するか考えてみます。存在するなら、それが許されるエネルギー準位ということになります。(9)を(10)に代入して
{√(2mε)/h} cos{√(2mε)a/h} = - [√{2m(V0-ε)}/h] sin{√(2mε)a/h}
- {√(2mε)/h}/[√{2m(V0-ε)}/h] = tan{√(2mε)a/h}
- √ε/√(V0-ε) = tan{√(2mε)a/h} (11)
を得ます。
この方程式は解析的には解けませんので、図的に解の挙動を検討してみましょう。
√ε=tとおくと(11)は
- t/√ (V0-t^2) = tan[{√(2m)a/h}t] (12)
となります。左辺、右辺それぞれから
y= - t/√ (V0-t^2) (13)
という関数と
y= tan[{√(2m)a/h}t] (14)
という関数を作ります。これをy-t平面にグラフとしてプロットし、その交点を求めれば良いわけです。
(13)はt=0でy=0となり、徐々に減少してしてt→√V0で急激に-∞に発散します。まず最初にt=0、y=0で(13)(14)が交点を持ちますが、ここからはψ(x)=0というつまらない解しか出ません。
V0がある程度大きければ、π/2 < {√(2m)a/h}t < 2πや、5π/2 < {√(2m)a/h}t < 3πなどの領域でも交点を持ちます。
それらが許されるエネルギー準位ということになります。実際にグラフを描いて確かめてください。
もしV0が無限大ならば(13)=0、よって(14)とは{√(2m)a/h}t=0, π, 2π, 3π,...で交点を持つことになり、当然ながら壁の高さが無限大の単純な量子井戸の結果に帰着します。これに比べV0が有限である場合は、対応する準位εは少しずつ低くなるということになります。
なお恐縮ながら自信のない部分が多々ありますので、検算しながら読んで頂ければ幸いです。
*1 ポテンシャルの変化が∞である場所(例えば、本問題のx=0)では、滑らかさの条件は満たされません。
回答有難うございました!!本当にわかりやすく丁寧に回答してくださって助かりました。一応検算しながら解いてみましたが、ψ(a)の境界条件の所でiが抜けてた程度で回答には差し支えありませんでした。
図を書いた時なるほどと思いました。答えを知ってから考えるとこのような形になるのは自明のように思いました。Eが大きくなればそれだけ有限のポテンシャルVoに近づくのでそれだけ漏れてしまうのですね。
重ね重ねありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
「'」、「"」はxでそれぞれ1回、2回微分することを表わします。
「ち」はhbar(=h/(2π))です。シュレーディンガー方程式(時間に依存しない):
-((ち^2)/(2 m))ψ" = Eψ (0<x<a) [1]
-((ち^2)/(2 m))ψ" = (E - V。)ψ (a<x) [2]
束縛問題なので0<E<V。の場合を考えます。
[1]の解 ψ=A cos(kx) + B sin(kx); (ち^2)(k^2)/(2 m) = E, k>0
[2]の解 ψ=C exp(кx) + D exp(-кx); (ち^2)(к^2)/(2 m) = V。- E, к>0
ここで、γ=2 m/(ち^2) とおくと
k^2 + к^2 = γV。 [3]
規格化の必要から、C=0, x=0でψ=0 だからA=0.
x=aでの値の連続条件 B sin(ka) = D exp(-кa) [4]
同、導関数の連続条件 B k cos(ka) = -D к exp(-кa) [5]
[5]を[4]で割ると(cotはtanの逆数)
k cot(ka) = -к [6]
これを[3]に代入して
(k^2)(1 + cot(ka)^2)) = γV。 [7]
となって、kについての方程式が得られます。cotが周期関数なので一般には複数の解があります(解は1個かもしれないし、無いこともあります)。この方程式は数値的に解くしかありませんが、とにかくいくつかのkの値が求められたとすると、それぞれに対応するEの値もわかります。
[6]より、cot(ka)は負でないといけないので、π/2<ka<π、3π/2<ka<2π 等です。
したがって、γV。a^2 ≦(π/2)^2だと粒子を束縛できません。(つまり、幅aが狭すぎたり、V。が低すぎたりすると粒子を束縛できません。)
上記は完全な解答ではないので検算、仕上げをお願いします。
回答ありがとうございます!とてもわかり易い解答で助かりました。Umadaさんの方から検算してみたのですが、解き方がちょっと違って色々解き方があるんだなと思いました。
私は(3)式にa^2、(6)式にaをかけて、Kaをy軸、kaをx軸にして交点を出しました。教科書の典型問題は、左右対称(x<0も有限ポテンシャルVo)の形しかのっていなかったので、ちょっと戸惑ってしまったんだと思います。質問する前も考えたんですが、もう少し自分で考える力を養わないといけないと反省しました。結局、sin型の形しかでてこないんですね。もし左右対称なら、cos型も考えないといけません。むしろ教科書より簡単な問題なのではないかと思います。
本当にありがとうございました。
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