No.3
- 回答日時:
再びJagar39です。
>ではウイルスが残っている間(完治する前)にまた感染してしまう(2次感染?)という事はありますか?
二次感染とは、例えばノロウイルスが感染してズタボロになった腸管粘でサルモネラ菌が増えてさらに悪さを・・・というような場合に使う言葉ですので、この場合は「再感染」とでも言えば良いかと思います。
で、その再感染ですが、起きないわけではないけど起きにくい、というところです。
「起きにくい」というのは、やはり免疫記憶があるからです。まだ感染後間もない頃でしたら自分が排泄したウイルスにまた感染する、ということもあり得ますが、そのような事が起きても症状はシームレスに継続するので「再感染したのか?」とは判らないでしょうね。
それが判るような時期(いったん症状が軽減した頃)になると、徐々に体内に抗体が産生されてきますから、感染は起きにくくなります。
「起きないわけではない」というのは、もちろんノロウイルスの変異が早いという説明がされる場合もあるでしょうが、さすがにヒト1人を経代しただけで抗原性が変わるほど変異するものではありません。従って、「自分が排泄したウイルス」が、「そのウイルスによって体内で誘導された抗体」とマッチしない、ということはないでしょう。
そもそも腸管内というのは、免疫システムから見ると「体内」ではなく「外界」です。
で、腸管粘膜というのは、その「外界」から栄養素を体内に取り入れるための入口なわけです。そこが体内と同じような「異物」を全て攻撃するような免疫システムだと非常にまずいわけです。栄養素やタンパクも攻撃してしまいますし、有用な腸内細菌も攻撃してしまうと困るわけです。
なので腸管粘膜の免疫システムは体内の他とはちょっと異なり、結果的に「異物認識→攻撃」のシステムが甘くなっています。
そんなわけで、腸管で増えるウイルスや細菌に関しては、きれいに「感染防御」を実現できる手段はありません。
ということで、「免疫記憶が生じるので再感染はしにくくなるが、しないわけではない」ということになります。
>また、微量でも便が付着した下着を他の衣類と洗濯してしまった場合や消毒しきれなかった物があったとして、そのウイルスも1ヶ月ぐらいすれば消えてしまうものなのでしょうか?
1ヶ月もかからないでしょう。
概念として、ウイルスは「個体」を対象でものごとを考えることはしません。あまりに小さすぎて光学顕微鏡では見ることすらできないからです。
従って、「個数」という概念もないです。よくサイトに「ノロウイルスは100個ほどのウイルスで感染する」と書かれていますが、それはいわゆる「素人さんへの説明用」の言葉です。そんな個数、数える手段すらありません。
本当は最小感染単位は10^2ほど、という場合、単位は「個」ではなくTCID50とかPFUとかその他諸々の単位が入るのですが、説明しきれないので「個」と書かれているだけなのです。ま、サイトの文を書いた本人も理解していない場合が大半でしょうけど。
なので概念として大切なのは、「ノロウイルスは環境中で1ヶ月ほど生存する」とか言う場合、「1個のウイルスが1ヶ月生きる」のではなく、「最初は10^xあったウイルスが、1ヶ月後もまだ検出できる」ということです。
先の回答に書いたとおり、ウイルスは「環境中では死ぬ一方」の存在で、その死ぬ速度がウイルスや環境条件によって異なるだけです。
つまり、「1ヶ月後にウイルスは残っているのか?」という問題に対しては、「ウイルスの死ぬ速度」ともうひとつ「最初に存在したウイルス量」が解答を導くために必要な数値なわけです。
一般に「ノロウイルスは環境中でも1ヶ月ほどは生存する」という場合、初期のウイルス量は下痢便や吐瀉物を前提としています。これらは1g中に10の9乗"個"ほどのウイルス量がある「濃厚汚染物品」です。
つまり、嘔吐することがなく、トイレで手に付着してしまったとかいう場合のウイルス量は、トータルとして「吐瀉物」よりは10の10乗とか12乗とかいうオーダーで「汚染度が低い」わけです。
従って、この状態をスタートとした時に1ヶ月後にウイルスが残っているはずがない、というわけです。
ま、便が付着したり吐瀉物が飛び散ったり、というような場合は、これも例えば0.01gが付着しただけだとしても、ウイルス量は10の7乗"個"もあるわけです。100個すなわち10の2乗個あれば感染が成立するとすれば、便0.01gで10万人に感染させることができるだけの量がある、ということになりますね。
これを洗濯すると・・・
例えば2ケタくらいはウイルスが「死ぬ」としても、まだ10の5乗個のウイルスがあり、しかもそれらは一緒に洗濯した衣類に均等に付着します。
例えば10枚の衣類を洗濯してしまったとすると、1枚に10の4乗個ずつ付着するというわけです。
という具合に計算すると、「トイレで手に付着した」よりは随分リスクが高いことが判ると思います。もちろん「トイレで手に付着」というのは「付着したことが気づかないほどのレベル」という前提での比較ですが。
衣類に「それと判るほど」の付着があった場合は、ハイターなり乾燥機なり、もうひとつ手を打たないと、1ヶ月後にはさすがに残ってないかもしれないですが、半月後ならまだ残っているかも、というレベルの話になりかねない、ということです。
なお、手に付着したノロウイルスは、石けんで手を洗うだけで100分の1に減らせる、ということになっています。
100分の1に減る、と聞けばもうそれで充分じゃん、みたいに思われると思いますが、実は先ほどの話に当てはめると、「10の2乗おちるに過ぎない」ということです。元が10の10乗個なら、10の8乗個になるだけなんです。
塩素系消毒薬、高温処理(報告によって多少異なるが、80℃で5分とか70℃で15分など)は、元のレベルに拘わらずほぼゼロまで落とせる手段なので、「塩素系以外は効かない」という話になっているわけです。
でも、2乗しか落とせない手段でも3つ組み合わせれば6乗落とすことができる、ということなのでまるきり無駄というわけではないのですが。
とても詳しいご回答を有難うございました!
何度も読み返して深く理解する事が出来ました。ノロウイルスを始め、再感染についても大変勉強になりました。
細かい質問に丁寧にご回答下さり感謝致します。
Jagar39さんも感染しないようお気をつけ下さいね。
本当に有難うございました!!
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
獣医師です。
ウイルスについての専門知識を有しています。まず、ノロウイルスは「細菌」ではなくウイルスです。細菌とウイルスはまったく違う存在です。
ウイルスは基本的に遺伝子とそれを包む殻のみから構成されます。なので遺伝子はあってもそれを複製したり遺伝子からタンパク質を合成するシステムを持たないため、自力では「何も」できません。
なので生きた細胞の中に進入し(これを"感染する"といいます)、細胞のシステムを横取りすることによって増殖するわけです。
従って、ウイルスとは「増殖以外の生命活動をしない」と「生きた細胞の中でしか増殖できない」ことの2つを基本事項として覚えてください。
で、上の基本を頭に置いて読んで欲しいのですが、まず体内にウイルスがいる期間ですが、これは他の回答にもあるとおり、ノロウイルスの場合は回復後1週間から2週間、最長1ヶ月ということになっています。
「完治」とされるのは、もちろん「症状がなくなったとき」です。
すなわち、「完治」した後、ある程度の期間はウイルスを排泄し続けるということです。
先の「生きた細胞でしか増殖できない」を思い出して欲しいのですが、生きた細胞ならどの細胞でも良いというわけではなく、ウイルスによって「感染できる細胞」が決まっています。ノロウイルスの場合は「ヒトの腸管上皮細胞」というわけです。
従って、ウイルスが排泄されるのは「便の中に」ということになります。
発症中は吐瀉物の中にも多量のウイルスが排泄されています。これはこの場合の嘔吐が「胃の内容物を吐いている」のではなく、「十二指腸から逆流して吐いている」からです。
さて、排泄されて外界(環境と呼びます)に出てきたウイルスですが、ウイルスは環境中では「何も」しません。生命活動は何一つしません。
細胞に感染できるのは、ウイルスのタンパクの殻が細胞のドアに対する「鍵」になるからなので、環境中の要因によってタンパクの殻の「形」が変わってしまえば、もうそのウイルスは細胞に感染できません。
ウイルスは増殖以外の生命活動をせず、その増殖は細胞に感染しなければできないので、「細胞に感染することができなくなった」ことをもって「ウイルスが死んだ」と言います。
というわけで、ウイルスは全て環境中では「死んでいく一方」の存在です。
ですが、死ぬ速度にはウイルスによって差があるわけです。
環境中で死ぬ速度が速いウイルスを「環境抵抗性が弱い」とか言いますが、最弱はRSウイルスやインフルエンザウイルスあたりでしょう。
ノロウイルスは逆に「最強」の部類に入ります。
吐瀉物を処理したりするときにウイルス粒子がエアロゾルとなって舞い上がり、カーテンや衣服に付着した場合、消毒しないと1ヶ月くらいは感染性を保っている、つまり「生きている」そうです。
なので「嘔吐」した場合は厄介なのですが、嘔吐していない場合、もしくは嘔吐してもトイレまで我慢できた場合(ノロウイルスの嘔吐は十二指腸からの"反射"なので、まず意志で"トイレまで我慢"することは不可能です)は、汚染場所がトイレだけなので対策は比較的容易です。
消毒は塩素系の消毒薬しか効きません。
ただ、石けんは界面活性作用によって物理的にウイルス粒子を排除できますし(排除できる量は知れてますが)、ヨード系が若干効果があるようだ、という報告もあります。
またウイルスによって程度に差がありますが、タンパク質から構成されているので熱には弱いです。ノロはその中でも最強の部類に入りますが、それでも70~80℃の熱だと数分から十数分で不活化できるそうです。
ウイルスの耐熱性は、温度が高ければ短時間で、低い温度なら長時間かければ効果は同じ、と考えて良いです。基本としてウイルスの耐熱性を示す指標に「56℃30分」がよく使われます。これに耐えるか耐えないかで、「つえーウイルス」か「よえーウイルス」を分けるのですが、ノロはもちろん「つえーウイルス」です。
なお、このような「不活化条件」を決めるには、様々な処理をしたウイルスを培養できるか、という試験を実施します。
ノロウイルスは培養自体がまだできていないので、このような不活化試験は実施できません。
なので、最も近縁なネコカリシウイルスというウイルスを使って不活化条件が出されています。
なお、一般の方には誤解されやすいのですが、ウイルスの環境抵抗性と「感染力」はあまり関係がありません。
ウイルスの感染力は、「発症した動物が排泄するウイルスの量」と「新たな感染に必要なウイルスの量」の比で決まります。当然、前者>後者となるほど「感染力が強い」というわけです。
環境抵抗性はあるファクターにはなりますが、ほとんどの場合それほど重要ではありません。どのみち「ウイルスは環境中では死ぬ一方」だからです。
その意味でも、ノロウイルスは最強の部類です。
というわけで嘔吐していないので、対策は比較的容易です。
トイレの消毒と食器の消毒、衣服はハイターかあるいは乾燥機で、ほぼ家の中のウイルスはゼロにできるでしょう。
凄いっ!!大変分かりやすいご回答を有難うございました!!
説明の仕方も素晴らしいと思いました。
ではウイルスが残っている間(完治する前)にまた感染してしまう(2次感染?)という事はありますか?
また、微量でも便が付着した下着を他の衣類と洗濯してしまった場合や消毒しきれなかった物があったとして、そのウイルスも1ヶ月ぐらいすれば消えてしまうものなのでしょうか?
引き続き恐縮ですが、ご回答頂けると助かります。宜しくお願い致します。
No.1
- 回答日時:
症状がおさまっても、通常は1週間、長くて1ヶ月も便の中にノロウイルスが排泄されます!回復したつもりでも、人に感染させる恐れがあるので、油断禁物!
感染力は非常に強く、数個―100個程度のウイルスが口に入るだけで感染します。
ノロウイルスは培養して増やすことができないため、研究に制約が多く、大流行の原因究明も簡単ではなさそうだ。
http://www.city.sapporo.jp/shiroishi/oshirase/to …
ノロウイルス感染者のふん便やおう吐物から,ヒトの手などを介して,二次感染(間接的に感染)しますから,何時までもそこいらには居ないようです.
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