プロが教える店舗&オフィスのセキュリティ対策術

思いが身体に与える影響について調べています。
それでタイトルの「ブアメードの血」にたどり着いたのですが、ネットではなく、きちんと書籍になっているもので読んでみたいと探しています。

また類似(?)のもので、コロンビア大学のハーバート・スピーゲルが行なったという実験も興味を持っています
鉛筆をアイロンと思わせて触らせると実際にやけどになったというものです。

両方、もしくは片方だけでも載っている本をご存知でしたら教えてください。

A 回答 (2件)

プラシーボ効果の裏返しの,いわゆるノーシーボ効果の話ですね。



ご質問後段のスピーゲルの実験ですが,
ネタの出どころはスピーゲル自身による次の論文のようです。
全文をダウンロードできるサイトもあります(有料)。

■Nocebo: the power of suggestibility.
 Spiegel, Herbert
 Preventive Medicine. 1997; 26(5): 616-621.
 http://scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&lr=&sa …

私が読んだのは抄録だけで,該当する記述は見当たらなかったのですが,
適当なキーワードでググると論文中のそれらしい部分が検索結果に表示されました。

 In one experiment on controlled imagination, I hypnotized an army corporal
 and gave him the instruction that he would be touched on his forearm with a hot iron.
 When I touched him with a pencil point, he reported pain and within a few ...

この書き方からすると,
実験といってもデータを収集して仮説を検証するようなものではなく,
デモンストレーション的な要素が強いようですね。
ひょっとすると詳細な報告が別にあるのかもしれません。
この実験を紹介する日本語の記事では
アイロンと偽って鉛筆の先で額(forehead)に触れたと書いてあるものが多いのですが,
実際は前腕(forearm)だったことがわかります。

ちなみにスピーゲルは米国の精神医学者で催眠研究の大家。
臨床医学の幅広い領域での催眠の利用に道を拓いた功労者であり,
第二次大戦従軍中に負傷した際,自ら催眠をかけて痛みに耐えたというエピソードの持ち主です。


さて,本題の「ブアメードの血」の件。
この話は「1883年」,「オランダ」,「3人の医師」,「死刑囚」など,
まことしやかなキーワードを纏ってウェブ上で増殖しているようですね。
「相棒」とか「世にも奇妙な物語」とかいったTV番組で取り上げられたことで広く知られるようになったようですが,
いくら探しても引用元を明示した記事が見当たりません。
それどころか「ブアメード」の綴りさえ不明のまま。
心理学や精神医学の教科書にも出てこない話です。
誰かの創作が,ウェブ上で引用を繰り返されるうちに都市伝説化したのではないか
との見解もあるようで,真相は謎に包まれたままです...

ノーシーボ効果の究極の形として暗示によって人を死に至らしめる可能性については,
ホメオスタシス概念や情動のキャノン=バード説で知られる生理学者ウォルター・キャノンが,
いわゆる「ヴードゥー死」に関する1942年の有名な論文の中で肯定的に論じています。
「ブアメードの血」の一件が実際にあった話なら,
時代的にもこの論文の中で言及されていて良さそうなものですが...ないですね。

■“Voodoo”Death
 Cannon, Walter Bradford
 Psychosomatic Medicine. 1957; XIX: 182-190.
 http://www.psychosomaticmedicine.org/cgi/reprint …

同じ論文がこちらにもあります。
リファレンスが割愛されていますが,上のものより読みやすいかもしれません。
同じ号に著者紹介や60年後の視点からのレヴューもあり,参考になります。

■American Journal of Public Health. 2002 October; 92(10).
 http://www.pubmedcentral.nih.gov/tocrender.fcgi? …

ちなみに論文の初出はこちら。
■American Antropologist. 1942; 44 (new series):169-181.


最後に手がかりになりそうな日本語の文献を2つだけ挙げておきます。
ここから先はご自身で探求を深めていってください。
そして「ブアメードの血」の真相が判明したなら...私にもこっそり教えてください。

■心の潜在力 プラシーボ効果
 広瀬弘忠(著)
 朝日選書 朝日新聞社

■偽薬効果
 H. ビーチャー他(著)/笠原敏雄(編) 
 春秋社
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この回答へのお礼

非常に丁寧にありがとうございます。
「ブアメードの血」については都市伝説の可能性もあるのですね。
だとしたらインターネットは怖いなと思いました。
それと同時に一次資料にあたる大切さも身にしみているところです。
ただ「ヴードゥー死」とその論文を紹介していただき、事象としてはあると思っても良さそうですね(厳密な実験をしたわけではなく、状況証拠からのようですが)。

スピーゲルのこともありがとうございました。
語学が苦手な私では、とてもここまで調べる事はできませんでした。

紹介していただいた本は早速注文させてもらいました。

お礼日時:2009/04/19 01:28

#1です。


細かいことですが,
先の回答中の書誌情報に誤りを見つけたので訂正しておきます。

ウォルター・キャノンの“Voodoo”Death論文の初出。
×■American Antropologist. 1942; 44 (new series):169-181.
○■American Anthropologist. 1942; 44 (new series):169-181.

言い訳になりますが,
この1行は直前に掲げたサイトからコピペしたものです。
誤りに気づかないまま転載した責任はもちろん私にあるのですが,
こうしたことの積み重ねで嘘や誤った情報がウェブ上で増殖していくのかと思うと...
くわばら,くわばら(死語)。

もうひとつ細かいことを。
スピーゲルの論文にある“(a hot) iron”を「アイロン」と訳しましたが,
これもまた参照した他の日本語文献(ご質問の文も含めて)に倣ったものです。
しかし,これが洗濯物のしわ伸ばしに用いるあの「アイロン」を指しているものかは判然としません。
ここは「熱した鉄の器具」とでもしておくべきだったかもしれません。

ついでにもうひとつ。
“Placebo”のカタカナ表記として「プラシーボ」と「プラセボ」の2通りが流通しています。
“Nocebo”についても同様に「ノーシーボ」と「ノセボ」の2通りがあります。
いずれも前者が英語風,後者がラテン語風の表記なのでしょう。
医療分野ではラテン語風表記のほうが幅を利かせているように思います。

以上,お役に立てれば幸いです。
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この回答へのお礼

重ね重ねありがとうございます。

お礼日時:2009/04/21 13:33

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