図のように、x-z方向に無限に広く
厚さが無視できる2枚の導体板が距離2d(m)をあけて
平行におかれている。z軸正の向きに、単位長さあたりの
電流密度J(m/A)の一様な定常電流を各導体板にながした。
このとき次の各問に答えなさい。
問1 各領域(i)y<d,(ii)|y|<d,(iii)y>dにおける磁束密度ベクトルBをそれぞれ成分で示しなさい。
問2 ベクトルポテンシャルベクトルAは電流と同じ方向であるとして、各領域(i)y<d,(ii)|y|<d,(iii)y>dにおけるベクトルポテンシャルベクトルAをそれぞれ成分で示しなさい。ただし、y=0の平面における
ベクトルポテンシャルをベクトルA=(0,0,A₀)(A₀は任意の定数)としなさい。
大学院入試、電磁磁気学の問題です。
問1は恐らくビオサバールの体積積分を使うと解けると思ったのですが、体積のとらえ方が分からずに詰まってしまいました。
問2は「y=0の平面におけるベクトルポテンシャルをベクトルA=(0,0,A₀)(A₀は任意の定数)」の使い方とまたしても体積積分の体積のとらえ方が分かりません・・・
そもそもあまり自分の考え方に自信がないので、着目すべきポイントが間違っていればご指摘下さい。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
問1、問2とも、(i)は y<-d ですよね。
その下で解答いたします。私もNo.2さんが仰るとおり、アンペールの法則を用いる方が手っ取り早いと思います。
問1.
まず1枚の導体板が作る磁束密度を計算してみます。右側の導体板に着目してみましょう。導体板上の電流は、z軸方向を向く直線電流の集まりと見なせます。導体板が無限に広いため、場を考える位置(点Pとします)をy軸上に取っても一般性を失いません。そこで導体板上の微小要素(Xo, d, 0)~(Xo+δx, d, 0)間を流れる微小電流が、点P(0, d+Yo, 0)に作る磁界δHの大きさは、アンペールの法則より、
δH=(J*δx)/(2π*R) [ここでRは、R^2=Xo^2+Yo^2 を満たす]
よって磁束密度δBは、
δB=μ*(J*δx)/(2π*R) →{1} [ここでμは透磁率である(問題では与えられていませんが、これが無いと解答ができません。真空であれば値を入れることで回避できますが、それすら定義されていないため)]
向きはx軸方向に対し、θだけy軸正の向きに傾いた方向です。[ここでθは、tanθ=Xo/Yo を満たす]
次にδBの向きをx軸成分と、y軸成分に分解します。ただしy軸成分は、導体板上の微小要素(-Xo, d, 0)~(-Xo-δx, d, 0)間を流れる微小電流が、点Pに作る磁束密度のy軸成分と相殺されます。すなわち、y軸方向には磁束密度は発生せず、x軸方向のみとなります。x軸方向の磁束密度δBxは式{1}より、
δBx=μ*(J*δx)/(2π*R)*cosθ →{2}
導体板は無限に広いことを考慮すると、1枚の導体板が作る磁束密度Bは式{2}より、
B={x=-∞→∞}∫δBx=μ*J/(2π)*{x=-∞→∞}∫cosθ/R*δx →{3}
※ テキスト入力であるため、関数f[x]の定積分の表記を{x=a→b}∫f[x]dx とさせていただきました。
ここで点(Xo, d, 0)から点Pへ引いた線分と、点(Xo+δx, d, 0)から点Pへ引いた線分との成す角をδθとすると、δx*cosθ=R*δθが成立することを利用し、式{3}の積分変数をθに変換すると、
B=μ*J/(2π)*{x=-π/2→π/2}∫δθ=μ*J/2 →{4}
以上は、d<y について解いてきましたが、y<d では、アンペールの法則を考慮するとBの方向が式{4}と真逆になります。よって1枚の無限に広い導体板が作る磁束密度は、
d<y のとき、#B=(μ*J/2, 0, 0)
y<d のとき、#B=(-μ*J/2, 0, 0)
※ テキスト入力であるため、ベクトル表記を#Xとさせていただきました。
左側の導体板も同様であるため、導体板間では磁束密度は相殺され、導体板外では2倍になりますので、
(i) (-μ*J, 0, 0)
(ii) (0, 0, 0)
(iii) (μ*J, 0, 0)
問2.
磁束密度ベクトル#Bと、ベクトルポテンシャルベクトル#Aの間には、
#B=#∇×#A →{5}
の関係があります。また#Aは「電流と同じ方向」、すなわちz軸方向のみですので、#A=(0, 0, Az)とおいて式{5}を解くと、#B=((∂/∂y)Az, 0, 0) となります。このAzを求めるためには、Bを変数yで積分することになります。
(i) Az=∫(-μ*J)∂y=-μ*J*y+Co →{6} [Coは積分定数]
y=0においてAz=Aoより、Co=Ao ですから、解答は (0, 0, -μ*J*y+Ao) //
(ii) 磁束密度が存在しないため、解答は (0, 0, Ao) //
(iii) (i)の要領により、解答は (0, 0, μ*J*y+Ao) //
いかがでしょう?
この回答への補足
ただしy軸成分は、導体板上の微小要素(-Xo, d, 0)~(-Xo-δx, d, 0)間を流れる微小電流が、点Pに作る磁束密度のy軸成分と相殺されます。
微小電流と磁束密度が相殺される理由が分からないのですが・・・
No.5
- 回答日時:
No.3と同じ者です。
>ただしy軸成分は、導体板上の微小要素(-Xo, d, 0)~(-Xo-δx, d, 0)間を流れる微小電流が、点Pに作る磁束密度のy軸成分と相殺されます。
文章で伝えることが下手くそで、申し訳ありません。
微小要素(-Xo, d, 0)~(-Xo-δx, d, 0)は、微小要素(Xo, d, 0)~(Xo+δx, d, 0)と、y軸に対して線対象の位置にあります。
貴殿ご指摘の微小要素が点Pに作る磁束密度の方向は、アンペールの法則(微小要素が点Pに作る磁束密度の向きを、右ネジの法則で回してみて下さい。)より、向きはx軸方向に対し、θだけy軸負の向きに傾いた方向です。ここで磁束密度をx軸成分と、y軸成分に分解します。このx軸成分は、大きさは同じですが、向きは微小要素(Xo, d, 0)~(Xo+δx, d, 0)が作る磁束密度の向きのx軸成分と真逆になります。ということで、x軸成分は相殺されて0になることをお伝えしたかった次第です。
No.4
- 回答日時:
#2さんが示唆する方法、あるいは#3さんの方法で、磁界(磁束密度)は簡単に求まりますが、問2の答えから問1を導く事もできますよ。
ベクトルポテンシャルは、静電界問題の電位にそっくりな形をしている事を利用しましょう。http://www.f-denshi.com/000TokiwaJPN/32denjk/140 … の下部の表、電場と磁場、φとAの式に着目してください。両者の違いは、「 ρ / ε 」 と 「 μ j 」 にすぎません。
同極性でρに一様帯電した平行平板の間の電界は零、電位は一定、外部には距離の一次の電位傾斜があり、電界gradφは、ρ / ε ですね。この静電界の知見から出発すれば、ベクトルポテンシャルを積分計算する必要はありませんし、磁束密度も自明です。 Ax = Ay = 定数、Az は、y のみの関数ですから、B = rot A の大きさは電界の大きさと同形で、x軸方向になるだけです。 電界が「 ρ / ε 」 だから磁束密度は「 μ J 」です。なお、Azは便宜上 y=0で Ao(任意定数)にしろと言っています。無限遠で零と置いたのでは、y=0 で無限大になり、表現に難があります。Bを求める目的では変化分しか使いませんからAoは任意定数で良いのです。
No.2
- 回答日時:
この問題,難しい積分で苦労するよりも,
解の形を予想した上で,
積分形アンペールの法則
∫ H dl = nI
にもっていく方が早いです。
線積分は,xy平面上の長方形の四辺を走らせます。
ただし,解(磁束密度のxyz成分とその座標依存性)
をある程度予想できた後に適用する段取りですが。
[磁束計算手法に関する私見]
電磁気学は,いろんな物理量といろんな物理法則が出てくる上に,
多重積分や偏微分方程式など数学的扱いが大掛かりなので,
勉強しにくい学問だと思います。
ビオ・サバール則は,基本法則ではあるが,案外使えない。
面倒な積分が必要になることが多いと思います。
しかも,媒質の透磁率が一様でないと使えない。
透磁率が場所に依存する場合でも使えて,普遍性を持つ法則が,
アンペールの法則です。
特に,積分形アンペール則が,いろんな局面で使いやすいと思います。
同じアンペール則でも,微分形にするとrotという演算子のイメージが難しく,
ベクトル解析の数学が重いので使いにくい,
というのが個人的経験です。ただし,電磁気学を応用する分野によるかもしれません。
返事が遅れまして申し訳ないです。
なるべく重くない考え方・計算、汎用性のある法則で解くのが
理想なのですか~。
ご回答ありがとうございます。
No.1
- 回答日時:
この問題,直観的に考えると,とても簡単な磁束分布になることが分かります。
「z方向の無限長直線電流の周りの磁界」は高校物理レベルですが,
その重ねあわせです。
ビオ・サバールを使ってゴリゴリ計算しはじめる前に,
「どんな磁束分布になるか」のイメージをつかみ,
磁力線のポンチ絵を描いてみることをお勧めします。
イメージをつかみ,直観的な答えを予想した後で,
それを厳密に示すために,どんな数学的手法を使うか
検討するという段取りでしょう。
無限長直線電流の周辺磁界を積分するのか,
ビオ・オサバールで積分するか,
マックスウェル方程式に書いてみるのか,
ラプラス方程式の境界値問題に持っていくか,
そもそも,自分はどの手法なら使いこなせるのか,
(電磁気で使う数学はけっこう重たいので,
院入試の限られた回答時間内に,
使いこなせない手法に手を出すと失敗します。)
なお,問題文の「単位長さあたり電流密度J(m/A)」は,
J [A/m] のミスタイプかな?
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