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民法202条2項の意義がよくわかりません。
民法202条2項
占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

民法202条2項の意義について、他の質問者に対する回答も確認したのですが、よくわからなかったためどなたかご教授お願いいたします。
202条2項が占有の訴えに対して防御方法として本権を主張することを禁止し、反訴として本権を主張することは禁止していないということですが、このように本権の主張を防御方法と反訴に分け、防御方法としての本権の主張のみを禁じる意義はどこにあるのでしょうか。

防御方法としての本権の主張を禁じても、反訴としての本権の主張ができる以上、合一確定の要請から占有訴権(占有回収の訴え等)は妨げられてしまうのではないでしょうか。たとえば、原告が占有権に基づく占有回収の訴えを提起し、当該訴訟の第一審継続中に被告が予備的反訴として所有権に基づく妨害排除請求(?)を行えば、結局のところ原告は占有権に基づく回収はできなくなりますよね?
とすると、防御方法としての本権の主張を禁じた202条2項の趣旨が滅却されてしまうように思うのですが、この点をどのように理解すればよいのでしょうか。

たとえば、訴外AがY所有の自転車を盗み、これを友人のXに保管させていたとします。たまたまX宅を通りかかったYがこれを発見し、自転車をY宅に持ち帰ったものとします。ここで、Xが占有回収の訴えをYに提起し、Yが予備的反訴として本権に基づく妨害排除請求を行ったとき、裁判所はいかなる判決をすべきでしょうか。結局、Xは自転車を回収できないのではないでしょうか。とすれば、202条2項の意義は滅却されてしまうのではないか。

A 回答 (2件)

>202条2項の意義は滅却されてしまうのではないか。


ご説のとおりである。本条の趣旨は、自力救済の禁止であるのに、反訴を認められば自力救済を容認したのと同じであろう。かかる疑問は当然なため、反訴を限定的に解する有力説もある。

しかし、残念ながらこれは通説ではない。
なぜなら、ありていに言えば、この説は、条文の文言に素直ではない。これにつきる。
202条1項は「妨げない」とあるのみで、この文言を素直に読めば、本権に関する被告の抗弁を封じたものと読む他なく、民事訴訟法上の反訴まで禁じるものであると読むのはとうてい不可能である。

質問者の設例でいえば、自力救済に及んだXが結局自転車を取り戻したとしても、結局Xに自転車は戻って来るのであるが、占有回収の訴はYが勝訴するため、場合によってはXは賠償責任を免れないであろう(民法202条)

また、質問者もご承知のことであろうが、窃盗罪(刑法235条)では、占有説が通説であるから、自力救済に及んだXは窃盗の罪を問われる。現実はこちらの方で、自力救済を防止する法の目的は達せられるじゃろうな。
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この回答へのお礼

いつも丁寧な解説ありがとうございます!

一応、占有訴権の認容判決をとることで損害賠償請求ができるという点で、被告からの反訴が予想される場合であっても占有の訴えを起こす実益はあるのですね。

大変勉強になりました。

お礼日時:2012/05/14 13:46

 民法202条2項については,実質的に意義のない規定と解するのが一般的です。


 現行民法の起草者は,占有訴権を占有者に対する仮の救済と位置づけ,本権の問題に決着が付いていなくても占有が認められればひとまず保護するという考え方を採っていたようですが,このような制度の実効性を確保するには,占有訴権について本案の訴訟より迅速に処理できる民事保全制度のようなものを設ける必要があったところ,そのような立法的手当てを怠ったため,結局は意味のない制度になってしまったというのが通説的理解です。
 要するに,民法202条2項は一応法律の条文に残っているので条文に書かれていること自体は守る必要があるが,法制度としては明らかな欠陥品でありその意義など重視する必要はなく,同項に明文の規定がない反訴についてまで202条2項の趣旨から禁止すべきではないと解されています。
 民法は,既に110年以上も前に制定された法律なので,条文の中には明らかな失敗作や死文化したものも多く,最近になってようやく大規模な見直し作業が進められるようになった段階です(現在の検討対象は債権法部分なので,占有訴権はまだ見直しの対象に含まれていませんが)。そういう古い条文にいちいち意味があるとは思わない方がよいと思いますよ。
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