1930年代日本がファシズムへのみちを進むなか、宗教弾圧も強くなってきました。
その一例として、PL教団の前身の「ひとのみち教団」の大弾圧を調べました。
「ひとのみち」は、天皇崇拝を強調し教育勅語を教典とする体制支持の新宗教ですが、天照大御神を太陽であると説いたのを天皇への不敬とみなされて弾圧されたとのことです。
取調べでは、「天照大御神は三種の神器を皇孫ニニギノミコトに渡した、天照大御神が太陽ならば太陽には手がないのにどうして神器を渡すことができるのか?」という質問で信者を問い詰めたとありました。
天照大御神が太陽神であって全能の神であることは、国家神道に反するとは思えませんし、不敬になるとも思えないのですが、なぜこれは咎められたのでしょうか。
もちろん単なる粗探しで、本当の理由は新宗教の台頭を規制したかったのでしょうが、それにしてもなぜ天照大御神を太陽神と言うことが理由になるのでしょうか。
日本書紀は少し読みましたが、そこには天照大御神が太陽神であったと書かれていた気がするのですが。
天照大御神は戦前は太陽神ではなかったのでしょうか?
御回答おねがいします
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
取調べでは、「天照大御神は・・・渡すことができるのか?」という質問で信者を問い詰めたとありました。
とありますが、これは取調官の単なる言いがかり揚げ足取りでしょう。
「ひとのみち教団」の大弾圧というのは、単に言葉遣いがどうのという問題とは異なります。
当時の歴史的、政治的な背景で生まれた弾圧です。
教義の内容がどうのこうとだけお考えになられると混乱や誤解が生じてしまいます。
当時は現在では想像できないかと思いますが、信仰も思想も国家の管理の元におくということが重要な課題で実施されていました。
宗教についてもやかましい規定があり、神道も国家神道、教派神道と厳密に区分されていました。
国家神道 - Wikipedia
ja.wikipedia.org/wiki/国家神道
教派神道 - Wikipedia
ja.wikipedia.org/wiki/教派神道
皇室に対しては不敬罪という法律もありました。
「ひとのみち教団」は御存知のとおり、弾圧された昭和12年に突然生まれたのではなくそれ以前からあって活動を広げていました。
弾圧も「ひとのみち教団」だけではなく、その2年前には大本教という教団も弾圧を受けています。
国家の統制を乱す集団は全て弾圧排除するということが行われていた時代だったとお考えください。
共産主義の排除も新興宗教の排除も同じレベルの事件です。
「ひとのみち教団」が天照大御神を信奉し、教育勅語を教義に掲げていたことを、国家機関以外の人間が無許可で思想を広げていると看做されただけです。
平たく言えば、勝手に国家政府の肩代わりをするなということです。
天照大御神云々も皇祖神という考え方がありましたから、民間人が勝手に皇室の皇祖についてとやかく口出しをするな、天皇を畏れぬ不敬の輩だということです。
教育勅語も天皇のお言葉とされていましたから、それを玩具にするとは何事か、という現在の感覚では不可解な論法です。
天照大御神の宗教上の性格や定義づけとは無関係な問題だとご理解ください。
現在は太陽神という言葉も簡単に使えますが、当時は相当慎重に取り扱う必要がありました。
記紀神話の神々は天皇の祖先とされる皇祖神が多数含まれていますので、余程慎重に言葉を選ぶ必要がありました。
芥川龍之介も記紀の時代の小説を書いて不敬罪に問われています。
ということで、最後のご質問「天照大御神は戦前は太陽神ではなかったのでしょうか?」につきましては、歴史的宗教的な範囲では現在と変わりません。
戦前は現在の考え方に皇祖神として天皇と結びつける考え方が加わっていました。
一般にはこの付け加えられた皇祖神としての性格が重要視されていました。
いずれにしましても、宗教や思想の弾圧の歴史を調べるには、その当時の価値観だけではなく政治的な思惑が絡んできますので非常にややこしいです。
その当時の社会情勢や政治情勢も併せて調べるようにされることをお勧めします。
ご回答ありがとうございます。
教義の内容についての不敬罪適用はあくまでも揚げ足取りで、歴史的・政治的な背景から見ると信仰も思想も国家の管理の元におくことを求めた弾圧であったということですね。
その揚げ足取りの理由としては、皇祖神である天照大神を独自に解釈することは危険であり不敬であったと。
ご助言のとおり、政治情勢もあわせて調べようと思います。
わかりやすいご回答大変助かりました。ありがとうございました。
No.4
- 回答日時:
宗教団体の教主は、自らを最高の地位に置きたがります。
オーム真理教の麻原教祖が良い例です。
天照大神を信奉する教団でも、教主がご本尊同様に崇められたり、教団が皇大神宮並みもしくはそれ以上に尊いなどの教義が含まれれば(こじつけであっても)、十分に不敬罪の対象にされました。
当時の『神国日本思想』は、現代の『金王朝』と比較しても、甲乙付けがたい狂気の存在としか評価出来ません。
単に「太陽神を信じたから」だけの弾圧ではありません。
ご回答ありがとうございます。
天照大神を信仰すること自体はともかく、その信仰が伊勢や出雲よりも「真の」「正しい」信仰と主張するにいたるとまずいわけですね。
またほかの回答者様にあったように、そもそも天照大神を天皇から一足飛びに信仰することは時に天皇の施政に異議を呈する可能性をもたらすと。
天照大神を信仰することは、なまじ体制翼賛っぽく見えるだけに政府にとっては獅子身中の虫だったのかもしれませんね。
ご回答ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
神と神様は違うのです。
天照大御神は神ではなく神様なのです。神様は元々は人間だったのです。天照大御神は人間の名前があります。たとえば天満宮の神様も菅原道真と言う人間です。神話の世界に出てくるのはご先祖としての神様なのです。日本では山や岩を御神体とするが、それは抽象的な神であって神様ではないのです。人間とは無縁の存在です。太陽も人間とは無縁です。縁とは親子の縁起のことで、神話の神様は現代人と縁起で繋がっているのです。西洋のキリストは人間なのだが、神様ではなく神として概念付けされた点が日本と異なるのです。それはキリストには子がいないからです。
ご回答ありがとうございます。
人間の先祖であり元々は人間だった「神様」と、人間と無縁な「神」の区別が日本にはあるということですね。
そうなると、「神様」の天照大神と「神」としての太陽神がなぜ一般的に結び付けられて考えられてきたのでしょうか。
難しい問題です。
刺激的なご回答ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
今回初めて聞いて、ちょこっと調べてみたのですが、言われるように背景には新興宗教に対する宗教弾圧が広くあったようで、ひとのみち教団のものもその1つのようですね。
で、理由としては『天皇といえども、その心根を正すために神から苦痛が与えられる』という教義が不敬罪にあたるとされたようです。
でもまぁ、これも含めて言いがかりに近いものだったのかもしれません。
むしろその半年前に(教祖に当たる)御木徳一が少女に対する強姦猥褻で逮捕されてあっさり認めているので、何教だったか忘れましたがフリーセックスで信者を増やした宗教と同様に思われていたのかもしれません。
不敬罪でつかまったときに、幹部に当たる人に丸山敏雄という人が居たのですが、この人が後に分かれて倫理研究所というものを創っているようです。この倫理研究所の人で、当時の研究をしている方が居るようです。ネットでは残念ながら内容を読むことができませんでしたが、参考になればとリンクを張っておきます。(この程度、すでに知ってるかもしれませんが)
「ひとのみち」教団弾圧事件の考察
http://www.rinri-jpn.or.jp/images/business/resea …
『倫理研究所紀要』第21号 平成24(2012)年8月発行
http://www.rinri-jpn.or.jp/business/research/01/
ご回答ありがとうございます。
『天皇といえども、その心根を正すために神から苦痛が与えられる』
なるほど、それはかなり挑戦的な教義です。
天照大神を奉るということは、そのような意味もあったのですね。
『倫理研究所紀要』記載の論文、今度拝読させていただきます。
ご説明いただいた上に文献まで教えていただきありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
昭和天皇が天皇になったのは、若干25歳の時です。
大雑把に言ってしまえば、その若さゆえに軍部にいいように利用され、「現人神(あらひとがみ)」として神格化されたのです。
要は生きた神様、そのお方の治める国を守るために闘ってこい!という名目で、
赤紙で徴兵された人々は、出兵を余儀なくされていたんですね。
こうした世相の中で、日本書紀に記述された太陽神・天照大御神を信仰するという教団があったら、軍部からの迫害・弾圧を受けるのは明白です。
全ては時代と言いますか、その時代の施策次第で、国民への影響・その認識が変わってしまうのは古今東西同じようなものです。
戦後、昭和天皇は「人間宣言」をなさって、自分は神ではなく人間であると宣言されてます。
ただそれまでの時代は国家神道として、「天皇=神」という人々の認識が強かったのです。
それだからこそ逆に、GHQから派遣されて来たマッカーサー元帥は、天皇制の廃止を行わなかったのです。
当時の日本を平和的国家に変えるための求心力として、天皇制廃止は拙いと判断したからです。
おかげで、と言うべきか、天皇制は世界でも類を見ない長い歴史を持った皇族(王様の血筋)として、現在にまで至っているのです。
三権分立ですべての統治権は放棄することになりましたが、政治家では出来ない、皇室外交が可能なのも日本の利点でもあります。
大抵の国は王様を殺してしまって、民主主義なり共和主義なりに移行しているので、
皇室が残っている国は決して多くありません。
元々神道は、八百万の神を認める多神教です。
その神様たちが、みんなこぞって出雲(島根県)に集まる時期ということで、
10月の和名は「神無月(かんなづき)」と呼ばれるでしょう?
ですから、天皇は神であると未だに信じている人たちが国家神道=一神教と、八百万の神がいる神家神道・杜家神道等の対立は、どうしても避けられないのです。
そういった意味で、戦前も天照大御神は太陽神であり続けられましたが、軍部の煽動による「天皇=ただ一人の現人神」という施策方針に逆らうのが恐ろしくて、口をつぐんでいたというのが実際のところかと思います。
因みに太陽神に対する位置にいる神としては、月の神・月読尊(つくよみのみこと)という神様がいます。
天照大御神が姉、すぐ下の弟が月読尊、更にその下の弟が日本武尊(やまとたけるのみこと)です。
大正時代、平塚らいてうが「原始、女性は太陽だった」と主張したのも、天照大御神は太陽神だという記述に準拠した発言だったのかもしれませんね。
お詳しいご回答ありがとうございます。
「天皇=ただ一人の現人神」をたてまつる国家神道は、神道といっても特殊だったということですね。
平塚らいてうの言葉にあるように、一般的な意識としては天照大神は太陽神であらせられたが、天皇の権威と関係するため微妙な立場であったと。
不勉強で、国家神道が他の宗派神道とこんなにも微妙な関係にあるとは目から鱗でした。
ご回答たいへん助かりました。ありがとうございました。
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