日本史好きのアメリカ人に質問されたのですが、武士は不必要な流血を嫌って、負けたときはトップが切腹して終わりだったのに、なぜ第二次世界大戦では一億玉砕とか本土決戦とか日本国民が最期の一人になるまで戦うと言っていたのでしょうか?
そのとき私が考えて答えたのは、第二次世界大戦の時の軍部は明治のときと違って農家出身の軍人が多かったから、一家心中と同じ感覚で、一人で死にたくなくて国民を道連れにしようとしたのでは、というものでした。
後から考えると、日本は異民族に占領されたことがなかったので、敗戦して占領されたら、男は去勢されて女はレイプされると本気で信じていたのかもしれません。
いろいろ理由があると思うのですが、実のところはどうなのでしょう。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
封建国家から国民主権国家に変わったからです。
そもそも戦争に行く「軍隊」というのは、王様のいる国と民主主義国では全然内容が違いました。これはむしろ日本よりヨーロッパなどの世界を基準にしていますので、アメリカ人の方は世界史をやりなおしたほうがいいのかもしれません。(アメリカは学校でアメリカ史しか習わないので、あまりヨーロッパ史を知らない)
古代において、たとえば有名なスパルタは民主主義国家で奴隷などと市民の違いは「選挙に参加できるかどうか」でした。選挙に参加して「○○国と戦争するかどうか」について決議できる市民(男性のみ)は軍隊に入り、奴隷など選挙権のないものは軍隊には参加できなかったのです。つまり、元々古代から選挙権=徴兵だったのです。
ちなみに王国は日本の武士(幕府や藩)を含めて「○○様の家来」だけが軍隊でした。アラブなどのお金持ち王国は傭兵などお金で呼んでくる軍隊と自分の家来を混ぜて、相手の規模と合わせていましたが、日本では江戸時代まで「○○が家来の××」と言う方式でやっていました。
つまり戦争に負けた時は「○○家の負け」であったわけで、主君が首を刎ねられる代わりに家来たちは農民階級に下る(浪人になり、農民になるか別の藩主の家来になるか)方法が多かったわけです。
フランス革命以降、ヨーロッパから始まった民主革命は、日本でも明治維新と言う形で今までの君主形態(封建主義)からの変更に影響を与えています。
アメリカ人は独立戦争から始まる「民主国家」しか知らないので「国は自分たち市民で守るもの」という前提しかありませんが、確かに日本史をみると「今まで殿様と家来だったのに、なぜ国民一億玉砕」になったのか分かりにくかもしれません。
フランス革命に戻ります。
フランス革命は王政を倒し、民主制にする革命でしたが、この革命後できた民主政府は近隣王国から戦争を仕掛けられます。近隣国の殆どは王国だったので「うちの国に革命が飛び火しては困る」と考えた周辺各国の王が協力してフランス民主政府を倒そうとしたからです。
フランスも王制だった時期は、農民などが兵隊になることはほとんどなく、貴族と志願兵(能力があれば農民から軍学校に行けた)一部徴兵と傭兵で軍隊を賄い、あくまでも「王様の私設軍」であり、領民たちは軍務を負わなかったのですが、革命で王制が倒れると、農民たちを含めた市民は「自分たちで軍隊を作って戦わないと国が無くなってしまう」という危機にさらされたのです。
ここに古代のスパルタ時代やローマ時代の市民兵の概念が復活して国民=選挙民=兵隊、と言う近代国家と近代軍の考え方がでてきたのです。
(蛇足ですが、この方式と元の王制の間で揺れている間に、兵を率いて抜群の成績をあげたナポレオンが「自分が統治すればフランスは無敵」と考えそれを指示した部下=国民たち、が支持したので皇帝になったのです)
明治の日本は天皇を中心とした国家を作りましたが、実際には「幕府が無くなったので、官僚は幕府から借りる。軍隊は当面の間薩長土肥から都合するけど、周辺国が攻める前に国民兵を作る必要がある」となりました。フランス革命の後の大変さも知っていたでしょうし、なにより西洋国は「その国が無政府状態とか軍事力で勝てるなら植民地化してしまう」という時代だったからです。
ですから、日本国は大急ぎで「天皇の臣民=市民=国民=兵隊」という風にする必要がありました。江戸時代の末期、武士階級は人口3%程度と言われていたので、それではとても近代的な国民軍には人数が足りないので、急いで徴兵制度を整え、明治6年に徴兵令を発布したのです。
ただ、その前段階として今まで「農民」であり、藩や幕府などの政治にはまったく無頓着だった庶民を、今後は「市民」として育てる必要があったので、明治2年には「四民平等」にし、同5年には義務教育を推進します。このような中で「市民」を育て、近代的で西洋的な国民軍を作ることを目指したのです。
さて、軍隊そのものの技術的な点については、外国から船や兵器を買い、お雇い外国人に指導してもらえば形はつきます。しかし、どうにもならないのが「いままでのほほんと生きてきた庶民たちに『お国を守る意識=市民意識』を植え付けること」でした。
この点において、アメリカ人は最初から「王を持たない庶民たちが独立した以上、自分たちで国を守るのは当たり前」という前提であり、日本とは全く違ったのです。
しかし、そのアメリカも実際には移民の国ですから「俺戦争なんて関係ない。アメリカが戦争してヤバイなら、別の国に移民すればいい」と言う人も実際にいた(今でもありえる)わけです。その点に関していえば「先祖代々の土地を守る!」という意識のないアメリカ人のほうが「愛国心」が薄いともいえます。
だから実はアメリカは国家を上げて「アメリカ人として星条旗に忠誠を誓い。国家を守り、社会を発展させるんだ!」と言う教育をいまでも行っています。
質問者様に発端の質問をしたアメリカ人に聞いてみてください。アメリカ人は「国家への忠誠」を子供の頃から刷り込まれていて、星条旗もすべての学校の黒板の上に掲げられていますし「忠誠の誓い」も100%と言えるレベルでアメリカ人たちは唱和できるはずです。
参考:
この動画で唱和してのは幼稚園児ですが、アメリカの殆どの公立学校では毎日、胸に手を当てて黒板の上の星条旗に向かってこの誓いを唱和します。(右手で左の心臓の上に手を当てます。つまり「心臓を捧げよ!」という誓いです)
キム一族を神格化する北朝鮮も真っ青ですが、「国民国家」であり「国民が国を守る意思を持つこと」を教育するのは結構大変なことなのです。
で、明治以後の日本に戻ります。
では日本でアメリカの星条旗に匹敵するものはなんでしょうか?はい、天皇ですね。だから明治以降「国民国家日本の象徴として」元首でもある天皇に忠誠を誓う方式を採用したのです。これを子供の頃から効率よく教えるためのものが教育勅語であり、黒板の上の明治天皇の肖像画であったわけです。日本はアメリカのように革命的独立戦争を経験していないので「国旗」という分かりにくい象徴ではなく「天皇」という現存する「日本国の統一王」を利用したのです。
(この部分を良く理解したアメリカは、GHQ占領政策を円滑にするため、天皇を処刑せず利用したと言われています)
で、このやり方が効きすぎちゃったんですね。日本人には・・・
アメリカが移民の国であるように、そもそも西洋人というのは「簡単に国外に行っちゃう」人たちだったわけです。中国人やインド人などもそうで、外国に華僑や印僑(母国を離れて、外国で母国のコミュニティを作ることを○僑と言う)はたくさんいます。
なぜなら、ヨーロッパにしても中国インドなどにしても「政府(国)はいずれ滅んで、別の政府(国)になる」という歴史的な事実があるからです。
ですから、元々移民であるアメリカ人を含めて「国家が無くなるかもしれないギリギリの時に、自分たちが国(今の政府)と心中するのはバカバカしい」という意識があるのですが、日本国しか知らない日本人にはそういう意識が全く無かったし、そういう(国と政府は同じではない)考え方すら一般的には知られていなかったのです。
そして、太平洋戦争まではそれで上手く行っていました。なぜならずっと勝っていたから・・
ところが対米戦はそれまでと全然違う総力戦で、なにせ日本の国力はアメリカの1/30でしたから、勝てるわけがなかったのです。
そして大本営は精神論ばかり振りかざして、戦況も嘘を尽く始末。でも日本国民は他の国の人と違って「この国がヤバければ脱出しよう」という意識がほとんどないので、国が「一億総玉砕!」といえば、それに従うしかなかった、ともいえます。
つまり明治以降、国民国家を作ってきたのが「大成功」ではあったのですが日本には「他の国の状況を知っていたり、政府や国を信用しない一定勢力」がないので、国民が一丸となって破滅に向かってしまい、それをギリギリで止めたのが天皇のご聖断だった、ということです。
質問者様の考えた「異民族に占領されたことが無かったから」というのは正しい、といえますが、その前に「近代的な国民国家を作る方針と日本の国民性が一致して、全国民が一体となって動いた」からそうなったといえます。そういう「全国民が一体」となったのは明治政府の方針で「近代民主主義的国民国家」を作ったからです。
この「全国民一体」というのはいまでもそうですね。東日本大震災の時も「全国民一体」となって危機をのりこえました。特に夏の計画停電なんて「欲しがりません勝つまでは」の戦時中とまったく同じだったといっていいでしょう。
外国が驚いたのは「日本には政府や国を信用しない人が居ない」ということなのです。
日本が一億総玉砕となったのは、
1 明治以降、近代的国民と言う教育を受けていたから
2 他国のように「政府を信用しない」という歴史的な知恵がなかったから
です。
逆をいえば、日本は日本ができてからまったく体制の変化していない「国=天皇(政府)=領土=国民」の国であるといえます。世界中でみて1500年もの間「国体が変化しなかった国」は日本しかありません。そこに市民意識がくわわったことで、死に物狂いで「一億総玉砕」になれた、ともいえます。
回答ありがとうございます。
詳しい説明のおかげで、頭の中で国家の概念が整理できました。
1500年も続いた自然国家って、やっぱり日本って世界でも特殊な国なんですね。
No.6
- 回答日時:
相手が白人だから日本人固有の美学とか風習は通用しない、そう思ったんじゃないですかね。
ちなみに太平洋戦争末期に日本に示された条件は近代戦争史では非常に稀なド厳しい「無条件降伏」です。これってなにされても構いません、って条件です。不要な流血を嫌おうがなんだろうが知ったこっちゃない、連合国の好きなように扱うよ、と。
死んだほうがマシって考えても不思議はなかったかも。
回答ありがとうございます。今のアメリカ人なら、水族館のイルカショーが可哀想とか言って、水族館や動物園の入園者が減ってるくらいですし、わざわざ戦中の日系人強制収容のことをドイツ人は強制収容されなかったのに、ごめんなさいと謝ってくれた人もいたくらいですから、こうはならなかったんでしょうね。
No.5
- 回答日時:
質問の前提が間違っていると思います。
・すべての武士が流血を嫌っていたのか?
・どの日本人が「一億玉砕」とか言っていて、それは日本人のすべてだったのか?
この二つが満たされない限り、アメリカ人の質問は一部の意見のみを取り上げて比較した「偏向的なもの」と言わざるを得ません。
回答ありがとうございます。一部の意見のみ取り上げているのは事実ですが、それが主流派だったのなら、この質問の前提は問題ないと思います。
全員一致でなければ無意味ということでは、何も動かないです。でも質問の前提が国家体制の違いを無視したという、別の意味で間違ってたみたいです(笑)
No.3
- 回答日時:
>負けたときはトップが切腹して終わりだったのに
終わりではありませんね。
普通は一族郎党打ち首か良くて遠流で家臣は落ち武者狩りで殺される。
領民は資産だから領地とともに勝者のものになる。
>なぜ第二次世界大戦では一億玉砕とか本土決戦とか日本国民が最期の一人になるまで戦うと言っていたのでしょうか?
戦中だから、武士の時代も同じ戦闘中にいい加減に戦って負けたら殿様が切腹するから良いよ等とは言いませんよ。
本土決戦は日本を防衛するのだから敵が侵攻してくればそうなるのは当然だし何処の国でも同じでしょう。武士だって自分の領地に攻め込まれる前に降伏して切腹することは無いでしょうね。
違いはトップが切腹したか縛り首になったかの違いだけですね。
他国に本格的に侵攻されたことが無く他国に侵略、暴虐を繰り返しているアメリカ人の歴史観が異常なのはしょうが無いが日本人が判らないのは困ったものですね。
回答ありがとうございました。
外国の戦争だと異民族同士が戦うので皆殺しですが、領民が殺されないのは日本の特徴ですね。
外国だと街の周りに城砦がありますもんね。
No.2
- 回答日時:
明治維新は武士道を否定した近代化ですので。
ある意味、軍人は武人と真逆の選択をします。延長線ではない。そして太平洋戦争って、明治元年から74年も経っているわけで、今から75年前の戦前の価値観って、やっぱり今と真逆でしょ?
一億玉砕とか本土決戦とか日本国民が最期の一人になるまで戦うと言っていたのは、
アメリカが本土空襲に攻めてきたからであって、本土空襲になるまでは一億玉砕火の玉だなんてアジテートはしていません。
戦局がマジに本土決戦になったら、どの国だって国家総動員の戒厳体制になります。
回答ありがとうございました。
一億玉砕という言葉が本土空襲以降に出てきたというのは知りませんでした。
他国の歴史だから知らないのは当たり前ですが、あるアメリカ人女性と話してたら戦前の天皇が政策を決定できると思っていて、焦って天皇は承認しかできませんでしたよ、と説明しました。
日系アメリカ人男性は、天皇に決定権がないのは知っていたけど、本土空襲は知らなかったです。日本のお城の話をしてたときに、戦中にいくつかのお城が焼失したと言ったらビックリしてました。
原爆は有名ですが、各都市の本土空襲は外国人にはあまり知られてなくて、東京大空襲の人間が炭になっている写真を見た台湾人は一瞬息が止まってました。
No.1
- 回答日時:
明治維新で武士道の精神が消えたからです。
明治以前と明治以降で日本人を同じ尺度で捉えないほうがいいです。
回答ありがとうございます。
武士道の定義を調べてみましたが、定まった定義がないようです。
自分的には昔に比べて薄まったものの、武士道はいまだに日本人の道徳・倫理観の中に生きているんじゃないかと思います。
現代日本人の多くが宗教を真剣に信仰していないのに、道徳感があり、マナーや順法精神が発達しているのは、常識の中に武士道や儒教精神が溶け込んでいるからだと思うのですが、回答者の仰るとおり、時代や社会制度とともに人の考えは変わるので、明治以前と以降の日本人を一緒くたにするのは間違いでした。
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