民法の質問です。
AがBに建物を売却し、BがCにその建物を賃貸し、実際に引き渡されました。しかし、AからDが建物を譲り受け、登記をしたことで、Dが所有権を得ました。
そして、この場合に、DがCに建物の明渡を請求したとします。
この点に関して、大判S4.3.1と大判S5.5.28は、賃貸人(B)が後に賃貸権限を失っても、賃借権の対抗力は失われないとしています。
しかし、Dが所有権を取得した時点で、BC間は他人物賃貸借となり、BC間で債権的に有効となるに止まります。そのため、Dからの明渡請求に際しては、CがBかりの引き渡しにより対抗要件を備えたことは、もはや抗弁としての効力を失うのではありませんか?
宜しくお願い致します。
A 回答 (2件)
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No.2
- 回答日時:
建物の賃貸借なので,民法だけで判断すべき事案にはなりません。
賃貸借の目的になっている建物について,賃借権に遅れて物権を取得した第三者に対する建物の賃借権者の対抗要件は,基本法である民法の605条では登記だとされていますが,その特別法である借地借家法31条1項では,登記がなくても建物の引き渡しがあればOKだとされています。
所有権の第三者対抗要件は登記(民法177条)であるため,登記をしなかったBは登記をしたDに対抗できませんが,これは対抗要件の問題であって,不動産の売買や所有権の有効性の問題とは別の話です。Bは真実の所有者であり第三者対抗要件を備えていたAと建物の売買を行い,その所有権をAから取得しています。第三者対抗要件を備えていないだけで,真実の所有者はBです。そのBが権限に基づきCとの間で賃借権を設定しているので,賃借権もまた有効です。
ところがAが,自分に登記名義があるのを奇貨として,自分には所有権がないにも関わらずDに不動産を売却しました。Aには権利がないのでAが権利を処分できるわけはない(権利がないところに権利が生じるなんてことはない)はずですが,不動産の取引の法的安定性を図るため,登記を有する者が「自分が権利者です」と主張することを認めています。Aから当該建物を購入したDが背信的悪意者でないのであれば,Bの登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者になるので,その両者間では先に対抗要件を有することになった者が勝つということになるのですが,別にこれはあくまでも対抗要件についての問題であり,AB間の売買契約や,Bの所有権の効力を否定するものではありません(そののち,Dが背信的悪意者であることをBが証明できれば,Bは登記なくしてDに所有権を対抗できます。またそもそも論として,BはAに対して登記なくしてその所有権を主張できます)。
Bはその所有権の第三者対抗要件を有していないだけで所有権を失ったわけではありません。所有権が消滅してしまったわけではないので,その権限に基づいて設定されたDの賃借権も消滅することはなく,またDは建物賃借権の第三者対抗要件を有するがゆえに,CはDに対抗できるということになるとしたのだと思います。
No.1
- 回答日時:
Dが所有権を取得した時点で、BC間は他人物賃貸借となり、BC間で債権的に有効となるに止まります。
そのため、Dからの明渡請求に際しては、CがBかりの引き渡しにより対抗要件を備えたことは、もはや抗弁としての効力を失うのではありませんか?↑
御指摘の通りなのですが、それでは結果が
妥当でないので、賃借権は物件化しており
対抗要件を備えた不動産賃貸においては
第三者に対抗出来る、と説明します。
以下、参考までに。
甲が所有の土地を、乙に売却した。
その後、同じ土地を丙に売却した。
丙が先に登記を得た。
丙は乙に勝つ。
これは御存知だと思います。
これ、よく考えるとオカシイのです。
甲が乙に売却した時点で、甲は無権利になって
います。
無権利者の甲から土地を譲り受けた丙が
所有権を取得出来るはずがありません。
動産なら即時取得がありますが、不動産には
そんなモノありません。
そして、登記は対抗力しかありませんので
先に登記を得た丙が勝つ道理がありません。
それで学者は四苦八苦して色々な説を考え
ました。
相対的に移転しただけだ、
登記を得ない間は不完全取得に過ぎず、その反面
甲には不完全ながら所有権はあるのだ、
登記を得た時点で始めて所有権が移転するのだ、
いっそのこと登記に公信力を認めたらどうだ。
等々です。
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