「2015年、酒を飲んで車を運転し、3人を死傷させ実刑判決を受け出所してきた女に対し、遺族が損害賠償を求めていた裁判で、大阪地裁はアルコールと事故との因果関係を認め、女に対し約6200万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。『諦めずに訴えてきたことが報われたといいますか、少しいい報告が(娘に)出来るなっていうのが、凄く大きいです。』(亡くなった娘(24)の母親) 」
という、酷い、疑問点がいっぱいのニュースが流れております。
損害賠償請求額は、原理的には死亡者の推定生涯年収等から推定生活経費を差し引いた額で計算されると思います。
しかしこのニュースでは、遺族が損害賠償を求めていた裁判で「アルコールと事故との因果関係を認め」、女に対し約6200万円の支払いを命じた、とあります。
そうなりますと、
1、酒と事故の因果関係が無いなら損壊賠償をしなくて良いのか
(遺族にとっては相手が酒を飲んでいなかろうが、損害を受けたのですから酒の有無は関係無く損害分を支払ってもらいたいのでは?)
2、一定の損害賠償はするものの、酒を飲んでいなかったのなら「過失は少ない」(=過失分以外は不可抗力なので諦めろ)と判定され、算出した請求額は満額弁済しなくて良しとなるのか?(これは有りそうな話です)
3、そもそも酒を飲んでいて事故を起こして、「因果関係なし」などという判決が有り得るのかどうか?(そんな論法がまかり通るなら、誰でも酒は飲んでいたが運転能力には支障なかったと主張するのでは? そんな“屁理屈”のような阿保噺、初めて聞きました。弊職の見識が狭いからなのでしょうけども)
4、マスコミが損害賠償と慰謝料をごっちゃにしているのでは?
(慰謝料であれば、相手の飲酒有無で変わることは良く有る事かと)
といった疑問が浮かびます。
この4つの疑問について、ある程度回答を考えられる方はいらっしゃいますでしょうか…?
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
判決文を見ないと確かなことは言えないですが、
このニュース記事にいう、アルコールと事故の因果関係とは、
民法709条の権利侵害と損害の間の因果関係をいうのではないようです。
この記事の因果関係とは、「過失による」「権利侵害」を認定したことを指していると思われます。
(アルコールの影響により判断力などが減弱していたため、ブレーキを踏めず、自転車に衝突した)
アルコールと事故の因果関係という文を、権利侵害と損害の間の「因果関係」とみるのはミスリードでしょう。
従って、アルコールの影響の有無と損害賠償責任の有無は関係なく、たとえアルコールの影響がないと認定されたとしても、(事故を起こしたのは過失が肯定されるので)損害賠償請求は(満額)認められたでしょう。
なので、1、につき、酒によらない事故でも、同額の損害賠償責任となったと思います。
(遺族は、刑事で、自動車運転処罰法3条の処罰を望んでいたのに、より罪の軽い、同法5条で処罰されたので、応報感情的に不満があったのでしょう。民事の判決で過失認定に際しアルコールの影響に言及されたことで、その不満が多少なりともやわらいだのではと推測します。この遺族の主張に沿った過失認定がされたことを持って、「因果関係」を認めたとの記事になっており、法的にはミスリードを誘う文章になっていますが、ニュース記事としては被害者の遺族の主張に沿った判決であること(及び(本来比較の対象とならないはずの)刑事の判決との齟齬のように見えること)に、ニュースバリューを見いだしたのではないかと推測します)
同様に2、についても、アルコールの影響は、権利侵害と損害の間の因果関係の話ではない(過失の認定の話)ので、酒を飲んでいなくても額は満額でしょう。慰謝料額はアルコールのせいで増加されたかもしれません。
3、酒を飲んでいようといまいと、自動車事故で被害者が死んだら、事故と損害の間の因果関係が否定されることはあり得ません。上記のように、この判決は過失認定に際してアルコールの影響に言及したものと思います。言うなれば過失「により」(因果関係ある)権利侵害(事故)が起きたということです。
4.人の死亡という身体侵害の不法行為ですから、財産上の損害(逸失損害)と同時に精神上の損害(慰謝料損害)を請求できます。遺族は両者を合わせて請求しており、裁判所はそれぞれを算定して合計6200万円の判決となったということでしょう。不法行為損害賠償請求事件では通常のことです。(飲酒の有無にかかわらず)
shareholder様
ご回答、有り難うございました。
ある程度、疑問点は解消されました。
しかしmbs社の記事は、ミスリードを誘うような“悪い”記事ですね……
そもそも、
「遺族が損害賠償を求めていた裁判で、大阪地裁はアルコールと事故との因果関係を認め、女に対し約6200万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。」
と記載されていますから、酒との因果関係を認定されて初めて、賠償請求が認められたのか? 酒が絡まなければ、死亡事故を起こしておいて賠償しなくてよいのか?
という疑問が出発点でした。
しかし、shareholder様のご回答にある、
「酒によらない事故でも、同額の損害賠償責任となったと思います」
というご回答で、全てはハッキリ致しました。
結局、慰謝料分だけは多少上がった、というだけの記事だった訳ですね……
「6200万円の支払いを命じた」というのは、本来は「元々認められていた6000万円に加え、200万円の増額を認めた」、というようなニュアンスの記事だった訳ですね……
mbsにしてやられました……
No.3
- 回答日時:
損害賠償請求額は、原理的には死亡者の推定生涯年収等から
推定生活経費を差し引いた額で計算されると思います。
↑
違います。
損害賠償には、治療費や通院費、休業損害、慰藉料、
逸失利益の賠償などを含みます。
質問者さんが指摘しているのは、その中の
逸失利益だけです。
1、酒と事故の因果関係が無いなら損壊賠償をしなくて良いのか
(遺族にとっては相手が酒を飲んでいなかろうが、損害を受けたのですから
酒の有無は関係無く損害分を支払ってもらいたいのでは?)
↑
酒云々は過失の問題でしょう。
例え損害が発生しても、過失がなければ
賠償責任は生じません。
これを過失責任の原則といいます。
無過失でも、責任を負うことはありますが、
その場合は法令でそのむね規定されます。
そういう規定がなければ、過失責任の原則が
適用されます。
2、一定の損害賠償はするものの、酒を飲んでいなかったのなら「過失は少ない」(=過失分以外は不可抗力なので諦めろ)と判定され、算出した請求額は満額弁済しなくて良しとなるのか?(これは有りそうな話です)
↑
過失の有無と程度を区別する必要があります。
賠償責任が発生するためには過失の存在が必要になります。
ここでは過失の有無だけが問題になり、程度は問題に
なりません。
ただ、故意や重過失の場合は、軽過失に比して慰藉料が増えることが
あります。
3、そもそも酒を飲んでいて事故を起こして、「因果関係なし」などという判決が有り得るのかどうか?(そんな論法がまかり通るなら、誰でも酒は飲んでいたが運転能力には支障なかったと主張するのでは? そんな“屁理屈”のような阿保噺、初めて聞きました。弊職の見識が狭いからなのでしょうけども)
↑
あり得ます。
因果関係というのは、Aが無ければBは無かった
という条件関係が基本になります。
酒を飲んでいて事故を起こした場合ですが、酒を飲んで
いなかったとしても、事故は発生した、という場合は
因果関係が無い、ということになります。
4、マスコミが損害賠償と慰謝料をごっちゃにしているのでは?
(慰謝料であれば、相手の飲酒有無で変わることは良く有る事かと)
↑
損害は、物に発生する場合と、精神に発生する場合があります。
精神に発生した損害賠償を慰藉料といいます。
故意、重過失の場合は慰藉料が多くなる場合があります。
tanzou2様
詳細なご回答、有り難うございました。
ご回答の最初にある、
「違います。
損害賠償には、治療費や通院費、休業損害、慰藉料、逸失利益の賠償などを含みます。
質問者さんが指摘しているのは、その中の
逸失利益だけです。」
のご指摘ですが、ご紹介させて頂いております通り、「遺族が損害賠償を求めていた」と記載されてますので、被害者は死亡している、と解釈出来ますので、「治療費や通院費、休業損害」は、わざわざ損害賠償に含めなかったのであります。(この件は、本件論旨には大して影響はありませんが)
しかし、ご指摘のように「損害賠償」には「慰謝料」も含まれる、という点を失念しておりました。
ご指摘、有り難う御座います。
「故意や重過失の場合は、軽過失に比して慰藉料が増えることがあります」
のご回答についても、思った通りのご回答であり、安心致しました。
「酒を飲んでいなかったとしても、事故は発生した、という場合は因果関係が無い、ということになります。」
というご回答の部分なのですか、「酒を飲んでいなかったとしても、事故は発生した」かどうかなんて、客観的に、全く推論できませんよね。
酒を飲んでいなかったら歩行者を見落とす事はなかっただろうとか、もう少しハンドルを早く切れたはずだとか……
だからこそ、飲酒して事故を起こした場合、ほぼ自動的に「飲酒と事故との因果関係が認められる」と一般市民は思っている訳です。
そもそも「酒を飲んで車を運転し、3人を死傷させ実刑判決を受け出所してきた」
と報道されているのに、何を今更、酒は飲んだが事故とは関係ないなどとホザくのか?!と、皆疑問に思う訳です。
そういう当然の疑問点に、このマスコミが答えない、というところに本件の問題が有るのだと改めて分かりました。
(ひょっとして、そもそも「飲酒して運転した」かどうかさえ未確定のまま交通刑務所に収監されていたのか?そんなバカな…?)
まあ、結局、慰謝料分だけは多少上がった、というだけの記事だった訳ですね……
まだ、モヤモヤは残りますが、取り敢えず有り難うございました。
No.4
- 回答日時:
1.飲酒していなくても賠償義務はあります。
2.飲酒をしていなければ「事故回避努力(ブレーキやハンドル操作)」を
するだろうから賠償金額に差が生じたかも知れない。
3.シラフでは到底事故を起こすような状況では無かったが、
飲酒による影響で酩酊したり、ボーッとしたりして事故を起こした。
4.治療費、葬儀代、精神的苦痛などを踏まえて算出した慰謝料を賠償せよ、ですね。
zipang_style様
ご回答、有り難うございました。
1は、当然そうですよね!
マスコミ(mbs社)のミスリード表現は不埒。
2は、[もし飲酒をしていなければ(物理的な)被害が少なかったかどうか]、という話ではなく、[物理的な被害状況が同じである場合に、“同じであるにも拘わらず”、酒を飲んでいた方がより多額の損害賠償額を払わせられるかどうか]、という疑問でありました。
しかし、貴殿回答にある「精神的苦痛」は大きくなる可能性は有りますから、精神面での損害賠償、つまり“慰謝料”が多くなると理解致しました。(反面、物理的な損害賠償額は同額)
3の、「酒を飲んでいて事故を起こして、「因果関係なし」などという判決が有り得るのかどうか?」という疑問につきましては、貴殿も「飲酒による影響で酩酊したり、ボーッとしたりして事故を起こした」とご回答されていますので、「因果関係無し」などという判決は有り得ないと益々確信致しました。
4につきましては、“慰謝料”が精神的な“損害”の賠償額であると理解致しました。
丁寧なご回答、有り難うございました!
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