
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
ベンゼン環への親電子置換反応は、まず陽イオンなどの親電子分子がベンゼン環のπ電子と錯体を形成し、次にそれが6カ所の炭素のどれかと結合しσ錯体を形成し、元々、その炭素に結合していた官能基が脱離する事によって反応が完結します。
σ錯体を形成するときに6カ所の炭素のどこに行くかと言うことがオルト、メタ、パラ配向ということになりますが、この配向性は途中で生成するσ錯体の安定性で説明されます。σ錯体が安定化するかどうかは置換基が電子供与性か電子吸引性かどうかに影響を受けますが、電子供与、吸引に関しては、σ結合を経由したI効果とπ結合を経由したM(メソメリー)効果があります。
I効果は、電気陰性度が効くので、ハロゲン、酸素原子、窒素原子などがベンゼン環に直接結合した場合は、電子吸引性となります。
しかし、これら原子が有する孤立電子対はM効果では電子供与性に働きます。メチル基はI効果では電子供与性でM効果でも電子供与性です。
メチル基の場合は水素原子が超共役という考え方で、M効果を発揮します。
ハロゲンはI効果で電子吸引性なので、ハロゲン原子が結合したベンゼン環では電子密度が低下し、親電子置換反応自体の速度は低下します。
しかし、M効果では電子供与性なのでオルト、パラ配向性を示します。
ベンゼンを基準とした相対反応速度は、トルエン;24倍、ターシャリブチルベンゼン;15.7倍、クロロフェニルメタン(ClCH2φ);0.302倍、クロロベンゼン;0.033倍、ブロモベンゼン;0.030倍となります。
また、ベンゼンの6個の同等な水素原子のうち1つが置換される速さに比べてオルト、メタ、パラ位の1個の水素が置換される速さを比べた案分速度比では、トルエン;オルト42倍、メタ2.5倍、パラ58倍、ターシャリブチルベンゼン;オルト5.5倍、メタ4.0倍、パラ75倍とどの位置の速度も速くなるのに対し、塩素化メチル基の場合、オルト0.29倍、メタ0.14倍、パラ0.951倍、塩素では、オルト0.029倍、メタ0.0009倍、パラ0.137倍、臭素では、オルト0.033倍、メタ0.0011倍、パラ0.112倍となり、どの場所の速度も遅くなります。
ターシャリブチルのオルト位の速度が遅いのは置換基の立体障害によるオルト効果だと考えられます。
塩素化メチルの場合、塩素の電子吸引性により反応速度が遅くなっているにもかかわらず、オルトパラ配向を示すのは2つの水素原子による超共役効果だと考えるべきでしょう。
No.4
- 回答日時:
rei00 です。
psa29 さんの回答を拝見して追加回答(回答訂正?)です。先の私の回答の
> ハロゲン化ベンジルの置換基はハロゲン化メチル
>(X-CH2-)で電子供与性です
ですが,間違っていた様ですね。他の部分に関してはあっているはずですが・・・。
psa29 さんは反応速度比を出しておられますが,私の手元には生成物の異性体比がありました。
反応速度はベンゼン1に対してトルエン 25(促進)に対して,クロロメチルベンゼン(Cl-CH2-φ)0.71(抑制)です。異性体比は,トルエン:オルト 58,メタ 4,パラ 38(オルト・パラ配向性顕著)に対して,クロロメチルベンゼン:オルト 32,メタ 15.5,パラ 52.5(メタ異性体もかなり生成)です。
明らかにクロロメチル基(Cl-CH2-)は電子吸引性ですね。電子吸引性置換基ですからメタ配向性になるはずです(実際,メタ異性体もソコソコ生成してます)が,オルト・パラ体の方が多いのは psa29 さんお書きの超共役効果でしょう。おそらく,トルエンのオルト・パラ配向性も超共役効果によると思えます。
つまり,誘起効果(I効果)は反応速度に影響が現れ,共鳴効果(R効果)は配向性に影響が現れます。よくある例が psa29 さんもお示しのハロゲン化ベンゼンですね。
以上,majoruma さんには誤回答についてお詫びいたします。「専門家」なんてしておきながらお恥ずかしい次第です(今回は反省を込めて「一般人」です)。お許しを。
psa29 さん,訂正ありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。
No.2
- 回答日時:
既に指摘がある様に「有機化学」の教科書には必ず載っている事ですが・・・。
まずは教科書の芳香族化合物の反応の所などを再確認して下さい。> メチル基などは電子を環に押し出すと考えて、
これはσ結合(σ電子)を通しての効果(誘起効果,Inductive effect,I効果)ですので,「共鳴(Resonance)」には関係ありません。「共鳴効果(Resonance effect,R効果)」はπ結合(π電子)を通しての効果です。
> どちらもオルトパラ配向性と考えてよいのでしょうか?
アルキル基(トルエンのメチル基,CH3-)は電子供与性です。ハロゲン化ベンジルの置換基はハロゲン化メチル(X-CH2-)で電子供与性です(勿論,電子吸引性のハロゲンが付いている分だけ,電子供与性の程度は弱くなります)。
以下,説明のために置換気が付いたベンゼン環炭素(イプソ位)を1番とし,順に2(オルト),3(メタ),4(パラ),5(メタ),6(オルト)と炭素に番号を振ります。
【電子供与性置換基が付いた場合】
置換基が電子を押し出すために,置換基とイプソ位(1番)炭素間の電子密度が高くなります。そのため,この電子に反発するようにイプソ位(1番)炭素付近の電子がオルト位(2番,6番)炭素側へ偏ります。結果,オルト位(2番,6番)炭素の電子密度が高まります。その結果,電子間の反発を避けるように,メタ位(3番,5番)炭素の電子がパラ位(4番)炭素側へ偏り,結果として,メタ位(3番,5番)炭素の電子密度が低下し,パラ位(4番)炭素の電子密度が高まります。
【電子吸引性置換基が付いた場合】
上と同じ様に考えていくと,オルト位(2番,6番)炭素の電子密度が低下し,メタ位(3番,5番)炭素の電子密度が高まり,パラ位(4番)炭素の電子密度が低下する事が分かります。
電子密度が高まる事は求電子反応が起り易くなる事を意味し,電子密度が低下する事は求電子反応が起り難くなる事を意味しています。したがって,ベンゼン環上での通常の反応である求電子反応の場合は,電子供与性置換基はオルト・パラ配向性を示し,電子吸引性置換基はメタ配向性を示します。
直接は研究していませんが,有機化学の基礎ですので「専門家」としておきます。
No.1
- 回答日時:
有機化学の基礎の教科書には必ず記載があると思いますが、以下の参考URLが参考になりますでしょうか?
「置換基の配向性」
蛇足ですが、
●http://tuk.t.u-tokyo.ac.jp/~hosoyama/report/ogn_ …
(有機化学シケプリ)
ご参考まで。
参考URL:http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2515/chem …
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