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- 回答日時:
懐疑するとは、自分がもうすでに分かっていると言うことを疑うことです。
もう分かっていると言うものの中には、人の物を盗んではいけないとか、人を殺してはならないとか、私は今生きているとか、昨日私仕事に行ったとか、学校に行ったとか、それこそ全てを疑ってみることによって、自分が本当に分かっていることは何なのか、自分が分かっていると思っていたのに実はそれが誤解であり、自分は分かっていなかったのだということは何なのかなどを一つ一つ見つけて行く態度を懐疑論的な態度と言います。この態度を実際に実行して究極まで押し進めたのがモンテーニュの『随想録』です。この本はとても面白いですから、是非読むことをお薦めします。岩波文庫で手に入ります。超高等な話から超下ねたの話まで、人間の行為のあらゆることを一つ一つまな板に挙げて、これでもかこれでもかと、我々がもう分かっていると思っていた考え方を覆してくれます。この態度を徹底的に進めて行くと、結局我々は何も分かっていないばかりでなく、何も結論を出すことができないと言うことになってしまいます。したがって、全てのことに対して判断を中止せざるを得ないと言う結論にまで到達してしまいます。事実モンテーニュは、自分の座右の銘は「我、何をか知る」であると言っています。今様に言えば、「私は何かを知っているのだろうか?」です。彼はもし誰かが「私は何も知らない」と言ったら、貴方が間違っていることを説得する論理を提示していますし、「私は何かを知っている」と言っても、貴方が間違っていることを説得する論理を提示してしまいますから。
このように、モンテーニュの出現によって、懐疑論は究極的には判断の中止という非生産的な結論を導き出すことになってしまったのです。ところがデカルトがその後それを逆手に取り、全てを疑っても、それを疑っている自分がいる事は疑えないと言う結論に到達しました。それを彼は「我思う、故に我あり」と表現しました。ですから、判断が一つで来たのです。そこで、デカルトの懐疑論は、建設的(あるいは生産的)懐疑論と呼ぶことができます。
デカルトは近代哲学の父と呼ばれていますが、この意味で、デカルトの出現を用意したのはモンテーニュなのです。ですから、近代哲学を本当に理解したいなら、モンテーニュは必読の書です。
この回答への補足
>>懐疑するとは、自分がもうすでに分かっていると言うことを疑うことです
よくわかりました。ありがとうございました。
下まで読ませていただきました。詳しく書いていただきありがとうございます。 勉強になりました。 随想録 買って読んでみようと思います。
ちなみに人為的地球温暖化懐疑論 の意味が知りたくて質問させて頂きました。
本当にありがとうございました。
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