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こんにちは。
光吸収などで起こるイオン化過程における軌道緩和(電子再配置)について質問があります。

イオン化エネルギーの求め方として、複数の考え方があると思います。
まず一つ目は、凍結軌道近似に基づくクープマンズの定理から求める考え方で、基底状態における分子軌道の軌道エネルギーから計算する方法です。もう一つは、基底状態の全エネルギーと、電子状態を最適化したイオン化状態の全エネルギーのエネルギー差から計算する方法です。

これについて、僕は今まで前者はかなり荒い近似であり、後者は励起状態の軌道緩和を含めている分、比較的信頼できるものであると考えていました。しかし、よくよく考えてみると、イオン化が電子再配置よりも圧倒的に早いタイムスケールで瞬間的に起こるものだとすると、イオン化の瞬間は基底状態とイオン化状態の軌道エネルギーに違いは少なく、凍結軌道近似を使うのもあながち悪くないのではと思うようになりました。

むしろ、もう一つの方法である、基底状態と電子状態を最適化した励起状態の全エネルギー差からイオン化エネルギーを求める方法では、電子状態が最適化された状態を終状態と考えて計算するわけで、もしも電子状態の最適化よりもイオン化の方が圧倒的に早いとすると、おかしいような気がしてきたのです。

そこで質問なのですが、イオン化にかかる時間と電子再配置(軌道緩和/電子状態の最適化)にかかる時間にはどのくらいのオーダーの差があるのでしょう?イオン化がほんの一瞬で起こるなら、凍結軌道近似で求める方が正しいのではないかと思います。もしそうではなく、イオン化と電子再配置の早さが同じようなオーダーであれば、それら2つが同時に起こることとなり(イオン化しながら電子再配置もする)、上記のどちらの方法もあくまで近似的にしかイオン化エネルギーを求められないことになると思います。

A 回答 (3件)

> つまり、《中略》後者の求め方を信頼しています。



はい。いいと思います。

XPSの化学シフトについては、よく分からないです。すみません。
ちょっと無責任な回答になりますけど、何がシフトに大きく影響するのかは、ケースバイケースなんじゃないかなと思います。
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この回答へのお礼

どうもありがとうございます。まだ疑問が残る部分はありますが、かなりすっきりしました。XPSについてはまた自分でよく考えてみることに致します。

お礼日時:2009/02/01 23:41

軌道緩和という“現象”が、実際のイオン化過程で起こる訳ではないです。

軌道緩和とは、「中性分子の分子軌道を使って計算したイオン化状態の全エネルギーは、電子状態を最適化したイオン化状態の全エネルギーとは違いますよ」ということを、少し気取って言っているだけですので、「軌道緩和にかかる時間」を考えても意味が無いです。あえて答えるなら、どんな時でも一瞬で起こる、つまり、「イオン化しながら電子再配置もする」という答えになります。

凍結軌道近似に基づくクープマンズの定理から求めたイオン化エネルギーが、近似の荒さのわりに実験値に近い値になるのは、ハートリーフォック近似(平均場近似)では電子相関(電子が互いに避け合って分子中を動いていること)を無視しているためです。ふつうは凍結軌道近似による誤差と平均場近似による誤差が互いに相殺する方向に働くので、凍結軌道近似を使うのもあながち悪くない、ということになります。

基底状態の全エネルギーと、電子状態を最適化したイオン化状態の全エネルギーのエネルギー差から計算する方法(ΔSCF法)では、凍結軌道近似による誤差はなくなりますけど、平均場近似による誤差(電子相関を無視したことによる誤差)が残ります。そのため、ΔSCF法で求めたイオン化エネルギーの値は、クープマンズの定理から求めた値と比べて、あまり改善されません。むしろ悪くなることもあります。

ΔSCF法の値があまりよくないのは、上述の通り、電子状態の最適化よりもイオン化の方が圧倒的に速いからではなく、クープマンズの定理で起こっていた、「誤差の相殺」がなくなるためです。じっさい、クープマンズの定理で電子親和力を求めると、凍結軌道近似による誤差と平均場近似による誤差が同じ方向に働くので、全く役に立たない値が得られます。また、軌道緩和と電子相関の両方の効果を計算に含めれば、クープマンズの定理から求めたイオン化エネルギーよりも実験値に近い値が得られることが知られています。

なお、いずれの場合でも、あくまで近似的にしかイオン化エネルギーを求められない、という点は変わらないです。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。つまり、

・イオン化には時間というものはなく、瞬間的に起こる。
・イオン化した瞬間にはすでに電子状態は最適化された状態にある。

ということでいいのでしょうか?
とすると、電子相関を含めた手法(MP2やDFT)で基底状態とイオン化状態の全エネルギー差を求めるのが最も信頼できる方法、ということでいいですか?

(ちなみに実際に僕が使っているのは、DFTの遷移状態法を用いて、イオン化対象の軌道の占有数を0.5個にした時の軌道エネルギーからイオン化エネルギーを求める方法と、もしくは上記のようにDFTの全エネルギー差から求める方法であり、今の僕の解釈では後者の求め方を信頼しています。)

そして、我がままで申し訳ないのですが、もしよろしければこの疑問の発端となった光電子分光の解釈に関する質問(http://oshiete1.goo.ne.jp/qa4673216.html)にもお答え願えると嬉しいです。物理の方の掲示板で質問いたしました。101325様なら答えがわかるかも、と思いまして。。そちらでは基底状態での電子状態とイオン化状態の安定性というものにどういった関係があるのか疑問があり、この質問と関連するものです。

お礼日時:2009/02/01 15:51

私の専門の中心からかなり外れるので、寝言程度に聞いて欲しいです。


遷移はやはり時間を含んだ過程の量子論で説明すべきものだと思います。
また緩和時間は軌道間相互作用に関係し、分子までいくと分子の格子緩和も考慮する必要があると思います。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。時間を含むシュレディンがー方程式の登場ですね・・あまり触れたことがないです(笑)単分子の遷移というものに時間という概念があるのかどうか難しいところですね。そもそもこのとき、イオン化時間というのはどう定義されるべきものなのかもわからずにいます。脱励起の寿命とかの話ならなんとなくはわかるのですが。。

お礼日時:2009/02/01 15:35

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