準抗告について教えてください。
<例>
森友学園 籠池夫妻が保釈・籠池夫婦の保釈決定に検察が準抗告
学校法人「森友学園」の補助金詐欺事件で、大阪地裁が籠池前理事長夫婦の保釈を認める決定をしました。検察側は、これを不服として準抗告しています。
学校法人「森友学園」の前理事長・籠池泰典被告(65)と妻の諄子被告(61)は、大阪府豊中市で建設中だった小学校の工事をめぐる国の補助金や学園が運営する幼稚園への府や市の補助金などおよそ1億8000万円をだまし取った詐欺などの罪で起訴されています。
2人は去年7月に逮捕されて以降、家族との接見も禁止されていましたが、弁護側が今月7日に2度目の保釈請求を行い、大阪地裁が23日付けで認める決定をしました。
一方、検察側は、この決定を不服として準抗告していて、今後、別の裁判官が保釈決定が妥当かどうか判断することになります。(24日04:04)
質問です。
① 準抗告とは、簡易裁判所の決定に不服なら→地方裁判所に異議申し立て(準抗告)
地方裁判所の決定に不服なら、高裁ではなく→その地方裁判所に異議申し立て(準抗告)ですか?
② 異議申し立て=準抗告ですか?
③ 準抗告は、検察側からも、また弁護側からも、できますよね?
最終的には、最高裁判所まで特別抗告ということで出来ますか?
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
どういう順番で書くのがわかりやすいか難しいところだけど。
(1)質問の結論
(2)総論
(3)質問の解説
って順番にしておきますか。
(1)質問の結論
①違います。
②違います。
③前段は半分正解、後段は事案次第。
―――――――――――
(2)総論
基本が理解できていないので基本から大雑把に説明します。刑事訴訟の話限定。民事はまた違います。
I.まず、法律用語としての「裁判」とは大まかに、「裁判体(裁判所または裁判官のこと)の意思表示(雑ですけど、法律上一定の効果を発生する判断を表明することだと思ってください)を内容とする訴訟行為」のことですが、その種類が理論上3つあります。判決、決定、命令です。
・判決とは簡単に言えば、口頭弁論を要し、当該審級において最終的となる裁判「所」の裁判(終局裁判と言います)のこと(例外はあります)。典型的には無罪の判決、判決をもってする公訴棄却など。
・決定とは簡単に言えば、口頭弁論を要しない裁判「所」の裁判のこと。
・命令とは簡単に言えば、裁判「官」の裁判のこと。
違いは、「どんな」裁判かと「誰がする」裁判か、です。
大雑把に言えば、法令上、口頭弁論を要する判断か否かで、判決と「決定及び命令」に分かれ、裁判所がする判断が「決定」であり、裁判官がする判断が「命令」になります。
なお法文上は、「命令」の語は決定について使われる例もあります(e.g.略式命令)。
II.そしてこの裁判に対して「不服申立て」の手続きがあります。
裁判所の判断がおかしいから正せという主張です。
この不服申し立ては大きく分けて「上訴」と「異議」があります。
・上訴は「上級審(広く言うと格上の裁判体)に対する不服申立て」、つまり、例えば地裁なら高裁(時に最高裁)に対してする不服申立てのことです。
・「異議」とは「上級審以外、大まかに言えば同一審級に対する不服申立て」です。つまり、地裁の裁判ならその裁判をした地裁に対して「考え直してくれ」と主張することです。
この内、「上訴」はさらに種類が分れます。
・上告は「判決」に対する上級の法律審への不服申立て。
・控訴は「判決」に対する上級の事実審への不服申立て。
・抗告は「決定」に対する上級審への不服申立て。
・準抗告は「命令」対する不服申立て(刑訴法429条)
なお、
・検察官等の処分に対する不服申立て(刑訴法430条)
も準抗告と言いますが、手続き上は全く別ものと解してかまいません。そこで「命令」に対する不服申立てに限定して話をします。
因みに準抗告は法令用語ではありません。内容的に抗告に準じるという意味で準抗告と理論上呼ばれるだけです。基本的には抗告同様に上訴の一種に分類されますが、上訴とは多少違うところもあります。
このくらい理解していればいいですかね。
――――――――――
(3)質問の解説。
①どこが違うかもうお分かりでしょう。
・「裁判所」ではなく「裁判官」です。
・「決定」ではなく「命令」です。
・「異議」ではありません。
したがって正しく書き直すと
「準抗告とは、
・簡易裁判所の裁判官がした裁判=命令に対して→管轄地方裁判所に対してする不服申立て
・地方裁判所の裁判官がした裁判=命令に対して→当該裁判官の所属する地方裁判所に対してする不服申立て
のこと」
です。
準抗告は一種の上訴なので「上級審に対して」申立てるのが本筋ですが、その対象が命令という裁判「官」の裁判である関係上、簡裁以外の場合には、その裁判官が所属する裁判「所」になってます。
その代わりと言っては何ですが、準抗告に対しては「合議体の裁判所で決定をもって行う」ことになっています。裁判官単独より合議体の裁判「所」の方が「上級」と考えていいでしょう。その意味で「広く言えば格上の裁判体」というわけです。
この記事に限りませんが、報道は結構大雑把です。厳密に言うなら、保釈を認めたのは大阪地方裁判「所」ではなく大阪地方裁判所所属の裁判「官」です。でなければ準抗告はあり得ません。
②もうお分かりですね。準抗告は「異議」ではありません。
異議と不服は違います。「異議」は法律用語です。「不服」は法律用語じゃありません。一般用語です。区別のついてない人も多いけどね。
③前段について、不服申立ての利益がある限りはできます。そもそも裁判所の判断に対しては原則として不服申立てができるのであり、不服は当事者双方にあり得ます。ですから、制度的に不服申立てを認めていない場合以外は基本的に双方が不服を申し立てることができます。
もっとも、双方がと言っても、一方について満額回答ならその当事者は不服があるはずがないので不服申立ての利益がありません。その場合にその当事者は不服申立てはできません。
例えば保釈を認めない命令に対して検察官は準抗告の申立てはできません。
後段については事案次第です。刑訴法405条に定める事由があればできるしなければできません。憲法違反と判例違反だけなので通常はまずないと思っていいでしょう。
例えば、保釈を認めない裁判があったとしてその裁判に当たって勾留されていない別の罪を一資料として考慮することはできますが、直接の理由にすることは最高裁判例違反になるのでその場合には特別抗告ができます。
その他参考として、質問者自身の別の質問
「準抗告」とは?https://oshiete.goo.ne.jp/qa/10515522.html
のNo.2の回答を読んでおきましょう。
No.1は「決定」「命令」の用語すら理解していないので無視していいです。
以上
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