![](http://oshiete.xgoo.jp/images/v2/pc/qa/question_title.png?5a7ff87)
http://okweb.jp/kotaeru.php3?q=1072956 の#6に次のように書かれています。
「出願甲(特許請求の範囲の発明C、明細書中の発明A、C)、この出願の出願公開前である1年2ヶ月後に同一出願人による出願乙(特許請求の範囲の発明A)があり、出願乙を先の出願とした国内優先権主張出願丙(特許請求の範囲の発明A、B)をした場合、
出願丙は、特許請求の範囲に記載された発明が異なりますから、特許法39条では、拒絶されません。同一出願人ですから特29条の2でも拒絶になりません。
このようなことが認められると、発明Aについて、出願甲の先願権により、他者の後願を拒絶可能にできるとともに、出願丙の特許権が発生したら、これに伴う独占排他権が最長出願丙の出願日より20年まで発生し、実質他人の発明を21年2ヶ月排除できることになり、制度を設けた趣旨と反するような気がします。」
しかし、全体として何が言いたいのかよくわかりませんでした。
「このようなことが認められると」という部分と「制度を設けた趣旨と反する」という部分から、この出願丙は発明Aについて出願乙を基礎とした優先権主張が認められないと言いたいようにも推測できます。
でも、回答文の最初の方には、「試験委員もつとめられた後藤晴男先生も著書「国内優先と国際出願」のなかで、国内優先にはパリ条約4条C(2)に相当する規定はないので、ご質問のような発明Aについて国内出願し、その後同一出願人がまったく別個に発明A,Bについて出願した場合、後の方の出願から発明A,Bについて優先権が発生するとしています。」とも書かれています。
本当のところはどっちなのでしょうか?
回答文の後半に対して私が解釈したことの方が正しいとしたら、後藤晴男先生は著書中で嘘を書いているということでしょうか?
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
「国内優先権制度は、先の出願に係る発明(基本的又は原理的な発明)を基礎として、これに改良発明、追加的発明、新規事項を含む拡張発明、上位概念で表現した包括的発明等の関連発明を取り込んだ新たな出願を可能とするために設けられた制度であり、パリ条約による優先権制度の趣旨を国内出願にも拡大する目的で規定されたものであり、さらに出願人から優先権の主張がされた場合において、競合出願、重複審査及び重複公開による不釣合を避けるため、特許法42条1項本文により、その基礎とされた先の出願については、一定期間の経過により取り下げられたものとみなすと定められたもの」です(平成12年4月26日東京地裁判決)。
従いまして、出願人から「優先権の主張がされない」場合、後からの出願(「特許請求の範囲において発明A、Bの双方が権利主張されている出願」とします)は、先の出願(「特許請求の範囲において発明Aのみが権利主張されている出願」とします)とは全く別個の競合出願に他ならず、発明Aは、審査の際に特許法第39条第1項をもって拒絶されます。
「優先権の主張がされている」場合、発明Aは、優先日を基準に審査され、一方、発明Bは、優先権主張を伴った後の出願の日(現実の出願日)を基準に審査されます。もちろん、優先権主張出願である後の出願が特許法第39条第1項をもって拒絶されることはありません。
~ということは既にご存知でしょうから~
出願甲(特許請求の範囲の発明C、明細書中の発明A、C)があり、
出願甲の出願公開前である1年2ヶ月後に同一出願人による出願乙(特許請求の範囲の発明A)があり、
出願乙を先の出願とした国内優先権主張出願丙(特許請求の範囲の発明A、B)がある場合、
発明Aについての優先権主張日は出願乙の出願日です。そして、出願丙は、出願甲の出願日から出願乙の出願日までの間に発明Aが公知公用技術/公知公用技術から当業者が容易想到な技術になっていれば特許法第29条第1項/第2項をもって拒絶され、そうでないにしても、出願甲の出願日から出願乙の出願日までの間に発明Aが他人から出願されていれば、その他人の出願が公開されることで特許法第29条の2をもって拒絶されます(もっとも、この他人の出願も「出願甲に記載された発明である」として特許法第29条の2をもって拒絶されます)。
そうでなければ、優先権主張をしない出願であっても、「発明Aが最初に記載された明細書が提出された最初の出願日(=出願甲の出願日)まで遡って技術水準を斟酌する」ことになります。
言い換えれば、このようなことが許されるのであれば、出願甲に発明Aを開示しながら特許請求の範囲に記載しないことで「発明Aに独占排他権は必要ない」という態度を示したにも関わらず、審査基準日が最初の出願日まで遡及されることがなくなった(優先権が主張できなくなった)時点において、その態度を翻した出願人の「技術水準は、最初の出願日まで遡及して斟酌せよ(=新規性・進歩性は、出願甲の出願日を基準として判断せよ)」という主張を認めることになり、出願人にとって極めて有利となります。こちらこそ、不合理です。
後藤氏は、このこと(優先権の主張をしない場合、後の出願が優先権主張の利益を享受することはない)を念頭に入れて論じておられると思料します。
~普通に考えて、こんなバカなことする出願人はいないだろうなぁ。私だったら、発明Aの出願日遡及効果を享受するため、出願甲を分割するもん。分割出願は国内優先することができないから、発明Bを加えたければ、これこそ優先権主張をせずに別個に出願します。発明A、Bが密接に関連するなら、出願甲が公開される前に~
「出願丙は、特許請求の範囲に記載された発明が異なりますから、特許法39条では、拒絶されません。同一出願人ですから特29条の2でも拒絶になりません。」
はい。「他人の出願がなければ」その通りです。
「このようなことが認められる(「特許法39条/特29条の2で拒絶されない」の意味かな?)と、発明Aについて、出願甲の先願権により、他者の後願を拒絶可能にできるとともに、出願丙の特許権が発生したら、これに伴う独占排他権が最長出願丙の出願日より20年まで発生し、実質他人の発明を21年2ヶ月排除できることになり、制度を設けた趣旨と反するような気がします。」
これを何回読んでも、ウラを返せば、「特許権の消滅後は、出願甲は、他者の後願を排除する能力を失う」と書かれてあるようにしか思えないのは私だけか??
「特許発明と同一の発明」は、特許権が消滅したとしても、他人が特許を取得して独占することはできないはずなのだが・・・?
それに、特許法第29条の2に基づいて後願を排除し得るのは、「特許請求の範囲に記載された発明」ではなく、「明細書又は図面に記載された発明」だから、発明A、Cは、出願甲の出願時点でいわゆる「拡大された先願の地位」を獲得するはずなのだが・・・?
そもそも、普通の国内優先出願を考えても、この理論では発明Aについて他人の出願を最大で21年しか排除できないことになる。「他人の出願を排除する(=他人の出願が特許になることを阻止する)」ことと、「特許権として独占する(=排他独占権を得る)」ことって、全く別の概念のはずなのだが・・・?
ということで、この一文は、「拡大された先願の地位による後願排除期間」と、「特許権としての排他独占期間」とを混同した人の誤解釈であると推察しました。
この回答への補足
後藤晴男先生も著書「国内優先と国際出願」を調べてきました。
パリ条約4条(c)(2)、(4)のような「最初の出願に限る」という制限規定は特41条2項にはないから、国内優先権の主張の基礎となる出願は最初の出願でなくてよいという説でした。
これが絶対に正しいのかどうかはわかりませんが、私なりに次のように考えてみました。
(ア)この質問で問題にしているケースについて:
出願甲から発明Aをクレームに含ませた優先権主張出願をしたり発明Aに係る分割出願をしたりすることなく別個に出願しても、ただ単に出願日が後になってしまって出願人が損をする(甲と乙の間の他人の出願や実施等によって特許が取れなくなる)恐れがあるだけで、第三者に格別な不利益が及ぶわけではない;
(イ)q=1072956の質問に関して:
後の方の出願を優先権の基礎とした優先権主張出願をしても、後の方の出願又は優先権主張出願は、先の出願で発明Aをクレームしていれば39条で拒絶されるだけ、先の出願で発明Aをクレームしていない場合又は先の出願を取下げた場合にもやはりただ単に出願日が後になってしまって上述のように出願人が損をする恐れがあるだけで、第三者に格別な不利益が及ぶわけではない;
従って、日本の特許法にはパリ条約4条(c)(2)に対応する「優先期間は、最初の出願の日から開始する」(言い換えれば、優先権主張を伴わない2つ目の出願には発明Aについての優先権は発生しない)という規定を敢えて設ける必要はない。
結果として、q=1072956の質問に関しては、後の方の出願からも発明A、Bについて優先権が発生するということになると解釈しました。
以上の結論に論理的に誤りがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。
>~普通に考えて、こんなバカなことする出願人はいないだろうなぁ。私だったら、発明Aの出願日遡及効果を享受するため、出願甲を分割するもん。分割出願は国内優先することができないから、発明Bを加えたければ、これこそ優先権主張をせずに別個に出願します。発明A、Bが密接に関連するなら、出願甲が公開される前に~
仰る通り、机上論に過ぎない事柄です。
>「出願丙は、特許請求の範囲に記載された発明が異なりますから、特許法39条では、拒絶されません。同一出願人ですから特29条の2でも拒絶になりません。」
>はい。「他人の出願がなければ」その通りです。
さらに他人による実施・文献公知の事実もないという条件が加わることに気がつきました。
>「このようなことが認められる(「特許法39条/特29条の2で拒絶されない」の意味かな?)と、発明Aについて、出願甲の先願権により、他者の後願を拒絶可能にできるとともに、出願丙の特許権が発生したら、これに伴う独占排他権が最長出願丙の出願日より20年まで発生し、実質他人の発明を21年2ヶ月排除できることになり、制度を設けた趣旨と反するような気がします。」
>これを何回読んでも、ウラを返せば、「特許権の消滅後は、出願甲は、他者の後願を排除する能力を失う」と書かれてあるようにしか思えないのは私だけか??
そうなんです。独占権取得と他人の特許取得の排除とを混同しているように思えました。
>ということで、この一文は、「拡大された先願の地位による後願排除期間」と、「特許権としての排他独占期間」とを混同した人の誤解釈であると推察しました。
やはりそうでしたか。納得しました。
ただ、「出願丙は発明Aについて出願乙を基礎とした優先権主張が認められるのかどうか」、つまり、出願丙中の発明Aの出願日が乙の出願日と見なして新規性・進歩性等についての審査が行われるのかどうかという点には、まだわからない点があります。
換言すれば、出願乙には発明Aについて優先権が発生するのかどうか、という点です。
後藤先生の説をもう一度確認してみたいと思います。
有難うございました。
No.3
- 回答日時:
受験生の方は、ゼミでの指導者の方などに真偽の程は確認されるとよいと思います。
なお、やや意地悪的に間違いを配した回答につき、お詫び致します。
後藤先生の「国際出願と国内優先権」のp203-204には、以下のように記載されています。
「国内優先権の主張の基礎となる出願は、最初の出願でなくてよい。パリ条約による優先権の主張の基礎となる出願は、パリ条約の同盟国における最初の出願に限られるけれども(パリ条約4条(2)、(4))、特許法42条の2等にはそのような制限規定はない。」
特許法ではなぜこのような制限規定を設けなかったのでしょう。
発明Aについて国内出願し、その後同一の出願人が、まったく別個に発明A、Bについて出願した場合では、後の方の出願を国内優先権の主張の基礎としても、発明Aについての国内出願の存在により、特39条1項に違背することになり、このような国内優先権の主張をする利益がないから、あえて制限する必要もないと考えたからであると思われます。
なお、蛇足部分で記載した場合には、出願甲(特許請求の範囲の発明C、明細書中の発明A、C)があり、
出願甲の出願公開前である1年2ヶ月後に同一出願人による出願乙(特許請求の範囲の発明A)があり、
出願乙を先の出願とした国内優先権主張出願丙(特許請求の範囲の発明A、B)がある場合では、特39条の拒絶理由はなく、出願乙についての特29条、29条の2等の拒絶理由がなければ、出願丙は、登録されてしまいます。
このような場合まで、想定し特許法が制限規定を設けなかったのかは不明です。
制限規定を設けなかったのは、特許権の存続期間を特許出願の日から20年とした制度趣旨に反するように思えます。
この回答への補足
長くなったので補足欄に書かせていただきます。
最初に、他の質問への回答の補足をこちらで行なう必要はありません。
どうしても補足したければ、管理者にメールを出して追加回答をお願いして下さい。
>なお、やや意地悪的に間違いを配した回答につき、お詫び致します。
これは意味がわかりません。
この回答には意地悪な間違いを意識的に盛り込ませてあるという意味でしょうか?
補足をお願いします。
>特許法ではなぜこのような制限規定を設けなかったのでしょう。
>発明Aについて国内出願し、その後同一の出願人が、まったく別個に発明A、Bについて出願した場合では、後の方の出願を国内優先権の主張の基礎としても、発明Aについての国内出願の存在により、特39条1項に違背することになり、このような国内優先権の主張をする利益がないから、あえて制限する必要もないと考えたからであると思われます。
この部分は私のこの質問とは少し話が逸れますので簡単に済ませておきますが、「出願人に利益がないから制限を設けない」ということではなくて、「第三者に不当な不利益が及ぶようなことが特段ないから制限を設けない」ということなのではないでしょうか。
立法趣旨とは基本的にそういうものだと考えます。
さて、以下がこの質問の本題になります。
>出願乙を先の出願とした国内優先権主張出願丙(特許請求の範囲の発明A、B)がある場合では、特39条の拒絶理由はなく、出願乙についての特29条、29条の2等の拒絶理由がなければ、出願丙は、登録されてしまいます。
>このような場合まで、想定し特許法が制限規定を設けなかったのかは不明です。
>制限規定を設けなかったのは、特許権の存続期間を特許出願の日から20年とした制度趣旨に反するように思えます。
日本の特許法は先願主義です。
換言すれば、何年も前に発明していても、存続期間は「出願した日から」20年です。
このことを考えれば、ako23さんの解釈には無理があることがおわかりかと思います。
発明してから出願するまでに何年も間を置くのは出願人の自由です。
敢えて公開したくないことだってあります。
どうもまだNo.2で出てきた「後願排除期間」と「排他独占期間」との違いについて完全には整理ができていないように見受けられます。
「後願排除期間(の開始)」と「排他独占期間」は別問題なんです。
もう一度よく考えてみて下さい。
出願甲で発明Aをクレームせずに明細書に記載してただけの場合でも、出願甲が公開されれば、甲の出願の日より後に他人がした発明Aに係る出願は、
≪その後に出願甲と同一の出願人が発明Aに係る出願乙を別途しようがいまいが、≫
“未来永劫”特許されません。
当然ながら、
≪さらにその後に優先権主張出願丙をしようがしまいが、≫
何ら関係ありません。
従って、乙に発明Aについての優先権が認められても認められなくても、『特許権取得』(=後願排除権の始まり)という点で他人に及ぶ影響は何もありません。
逆に、甲の出願の後であってその公開前に他人が発明Aを実施していたり学会発表したりした場合、その後に同一出願人が出願甲の優先権主張せずに別途発明Aに係る出願乙をしたら、その後の優先権主張出願丙をしてもしなくても、共に拒絶されます。
つまり、損をするのは甲乙丙の出願人だけで、この観点からも第三者には何ら不利益は及びません。
次に、「排他独占期間」についてですが・・・
もしかするとako23さんは「存続期間が過ぎたら他人がその発明Aに係る特許を取れる」とでも勘違いされているのではないでしょうか?
まさかそんなことはあり得ないと思いますが、そう考えれば辻褄が合うんです。
上述のように、一度公開されてしまえば、他人は“未来永劫”特許を取ることはできません。
従って、「制限規定を設けなかったのは、特許権の存続期間を特許出願の日から20年とした制度趣旨に反する」ということは何らないと考えます。
No.1
- 回答日時:
受験生にて妄言かも。
商標における禁止的効力範囲の「事実上使用可能」と「権利として守られる」の違いみたいなもんだと思います。
国内優先権の趣旨はパリ優先権における外国民優遇状態の補填です(・・っていう解釈でOK?(^^;)
そして外国で出願された発明をその出願後、1年2ヶ月後に国内で独自に出願したとしても、先の外国出願により、国内出願は排除されません。
<出願後の外国公知にすぎないためです。
これと同様に自己の出願の後、1年2ヶ月後に同じ出願を優先権を伴わずに出願しても先願が出願公開されたとしても、先願の地位を残さなければ、後願が登録されます。
ということで、ここまでは優先権の有無にかかわらず同じ結果ですので、「国内優先権の趣旨」云々の話ではありません。
「事実上保護される」に過ぎないのです。
これに対し、優先権の効力が働く状態では話が違います。
第1国出願から8ヶ月後に日本にパリ優先権を伴う出願がなされた場合、「その間に行われた行為によって不利な取扱いを受けない(パ4B)」わけです。
これに対し、国内優先権が無ければ、先願から8ヶ月後に行われた後願はその間の発明の公開等により拒絶されますので、内国民は外国民に比べ、冷遇されているので、「国内優先(44条)」が規定され、冷遇状態を填補しています。
そして、パリ優先権にしろ国内優先権にしろ、伴わない最初の「一年2ヶ月後の出願」の例ではその間の発明の公開により後願は排除されるわけですから、どちらも同じです。
ということで、
「事実上21年2ヶ月保護」されようが後藤先生が嘘を書いていることにはならないと解釈できます。
この回答への補足
#2,#3の補足欄を使ってしまったので、acacia7さんの補足欄をお借りします。
2か月以上待ちましたがako23さんからの追加回答はないようなので、そろそろ締め切らせていただきます。
ポイント配分については、説明する必要はないと思います。
ありがとうございました。
>ということで、
>「事実上21年2ヶ月保護」されようが後藤先生が嘘を書いていることにはならないと解釈できます。
つまり、「発明Aについて国内出願し、その後同一出願人がまったく別個に発明A,Bについて出願した場合、後の方の出願から発明A,Bについて優先権が発生する」という説は正しいと言うことですね。
(それが正しいのかどうかは私にはわかりません。)
ところで、甲と乙の間に他人が発明Aに係る特許出願をしても拒絶されるけど、特許出願をせずに発明Aを実施したり文献公知にしたりしてしまえば、出願乙や丙には他人がその発明Aを実施することを防ぐことはできず、「事実上21年2ヶ月保護される」とは言えないということに、つい先ほど気がつきました。
有難うございました。
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