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次のような文章があります。
daß Hans arbeiten müssen hat(ハンスは働かねばならなかったということ)
乙政・橋本著 ドイツ語文法シリーズ9「副文・関係代名詞・関係福祉」大学書林H11年11月第2刷
P40に「副文中では不定詞と同型の話法の助動詞が過去分詞(=代替不定詞)の次には時称の助動詞の定動詞を置くことが出来ない」という説明があり、上記文章のhatはHansとarbeitenの間に来なくてはいけないとしてます。私の質問はなぜ代替不定詞の時にhabenが前に来なければいけないというその理由が知りたいです。よろしくお願いします。

A 回答 (2件)

副文中に代替不定詞がある場合に haben が前に置かれる理由は、文法書には一切書かれていません。


日本で出ている文法書はもちろん、ドイツで出ている分厚い文法書にもそれは書かれていません。
なぜならこれは「文法」の問題ではなく、「ドイツ語成立史」の分野の問題だからです。

そもそも、「代替不定詞がある場合になぜ haben が前に置かれるか」という疑問の前に、
「ドイツ語ではなぜ副文中で定動詞が後置されるのか」という疑問がまずあります。
副文中の定動詞後置を「原則」と捉えるから、代替不定詞のケースが「例外」になるわけで、
しかし、その理由を明らかにしたいとなると、「原則」はどういう理由でそうなっているのか、というところから始めなければなりません。

結論を先に言うと、それは現在でもまだ完全には解明されていません。

長い間、ドイツ語の副文における定動詞後置は、ラテン語からの影響であるという説明がされていました。
中世にラテン語の文書をドイツ語に翻訳したときに、ラテン語の影響を受けたという説です。
しかし今世紀に入ってから、この説は疑問視され、新たな説が出てきています。

まず、ラテン語の影響ということであれば、同じようにラテン語から影響を受けているはずの
ほかのヨーロッパの言語に、副文における定動詞後置が見られないのはおかしいということがあります。
また、中世に翻訳されていたラテン語の文書には、必ずしも定動詞後置が多く出てくるわけではないということもわかっています。

言語学で使う用語に、「総合的言語」「分析的言語」というものがあります。
詳述は避けますが、ごく簡単に言うと、「総合的言語」は名詞や動詞の語尾変化などで意味が明確になり、
語順を変えても文の意味が取れるためその自由度が高いのに対し、
「分析的言語」では、冠詞や前置詞、格などが一語ずつに当てられていて、
語順が重要な役割を持つため、これが規則的になります。
ラテン語は総合的言語で、冠詞もなく、語順はかなり自由です。
ヨーロッパの言語は、その発展において「分析化」が起こり、語順の重要性が増していきました。

ドイツ語は、ごく古い時代には総合的言語であり、語順は自由だったようですが、
その時代に、すでに定動詞後置の例が散見されるため、もともとドイツ語の内部にあった性格であり、
ラテン語からの影響は軽視できないものの、それだけによるものではないと現在では考えられています。

ただ、語順が定まらない時代が結構長く、時制も最初は現在と過去の二種類しかありませんでした。
haben を使う現在完了形は初期には存在しなかったということになるので、
今問題になっているような語順も、中世以降ごろになってから整ったものと思われます。
また、接続詞の数も最初はあまり多くなく、副文自体があまり使われていませんでした。
古いドイツ語の文章に見られる副文中の語順もかなりバラバラで、規則性はあまりありません。
現在 dass と綴られる接続詞なども、ルターの時代などはまだ das と書かれていて、
冠詞や指示代名詞の das との区別ができなかったため、それを区別する必要性から、
das を接続詞として使った場合の語順を変えていったというような経過もあったようです。

ドイツ語は、英語などと比較した場合、まだ「総合的言語」の特徴を残している部分があり、
語順は比較的自由な方だとされています。
ただ、規則的な語順と自由な語順の両方があり、文法の規則だけでなく、文体との関係で選択する場合も多いので、
その辺りのを理解するのが外国人にとっては結構難しいところです。

…, dass ich habe arbeiten müssen のような副文中の語順も、文法書では、
haben は二つの不定形の動詞の前に置くと必ず書かれていますが、
実際のドイツ語では、…, dass ich arbeiten habe müssen のように、
二つの不定形の間に置かれることもたまにあります。
(この場合は、一応 … habe arbeiten müssen という語順の方が標準だと思います。)
こういう語順は、話法の助動詞(dürfen, können, müssen など)のほか、
使役の助動詞 lassen や、知覚動詞 gehen, hören などにも見られる現象ですが、
これらの動詞の場合は、話法の助動詞の場合よりも語順の自由度が高く、
haben は前置でも後置でもよいことになっています。

..., warum Sie mich haben kommen lassen
..., warum Sie mich kommen lassen haben

..., als ich die Vögel habe zwitschern hören
..., als ich die Vögel zwitschern hören habe

上の二組の文の語順は、文法的にはどちらも正しいことが、ドイツの Duden 社の文法書に書いてあります。
また、使役の助動詞 lassen の場合は、上記のほかに、kommen habe lassen という語順もたまに見受けられます。

現在、専門分野でどのくらいまで解明されているのかはわかりませんが、
habe arbeiten müssen のような形は、語順が自由だったころの古い語順が残っているのではないかという気がします。
つまり、…, dass ich gearbeitet habe. のような、ge- -t という過去分詞を使う場合の定動詞後置が先に原則としてあってから例外ができたのではなく、
両方の語順が別々に形成されて統一されなかった、というようなことではないかと思います。
文法的な理由だけでなく、語調その他の要素が係わっている可能性もあります。

以上、あくまでも参考程度ということでお願いします。
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この回答へのお礼

Tastenkasten様
詳しいご回答を深謝します。お説には深く共感致しました。いい勉強をさせていただき感謝です。もちろんBAにさせていただきます。

お礼日時:2019/02/13 19:59

シンタクスに「なぜ」は有りません。


シンタクスは、そうすることで、多くの話者が誤解なく意思疎通できることが担保できれば、何でも大丈夫なのです。あとは言語経済性と、母語話者の好みですね。

二重不定詞と話法の助動詞の語順は、強いて言えばドイツ語母語話者がそれを選んだから、と考えるしか無いでしょう。
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この回答へのお礼

Mokuzo100nen様
早速のご回答を深謝します。やはりそういうものなのかなとは予想していましたが一方何らかの理由があるのかもしれないと思い投稿してみました。やはりこういうものには理由がないのですね。

お礼日時:2019/02/12 11:50

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