母親が平成○年に死亡し、兄弟ABが相続した。他に相続人はいない。相続財産の土地を分割するためにAB間で遺産分割協議が成立し、本件土地を2分の1宛共有することになった。しかし、登記はせずに母親の名義のままだった。 その後、面積が等しくなるように甲地と乙地に分筆した。
平成△年、AはBに内緒で勝手に、甲地を自己が単独で相続したかのような虚偽の登記をした。乙地は、母親の名義のままだった。
平成○○年10月、C社は乙地上にある、第三者所有の建物を購入した。土地占有権原は、使用借権。購入の際、Bの承諾を得たが、C社は、Aに事前には承諾を得なかった。C社は、AB間の遺産分割協議の内容を知っており、また平成△年のAの虚偽登記の事実も知っていた。さらにBもC社に対して、当該Aの虚偽登記を追認し、自分は乙地で良いとの意向を漏らしていた。
平成○○年12月、C社はAを訪ね、Aが甲地の相続を主張していることを確認した後、建物購入の事実を告げた。Aから特段の異議は出なかった。
平成○×年5月、突然AはC社の購入建物の収去を請求した。Aは、甲地乙地ともに共有持分を有するとの主張である。
これについて、C社は次のように民法94条2項の類推適用があると反論する。
1.相続の精神は、ABの権利が半分ずつであることをC社は知っていた。
2.Aは相続財産の半分である甲地の虚偽相続登記をした。
3.Aは、その虚偽登記のため、外観上は乙地の相続をしないことを形成させた。その外観を信頼したC社の権利は、保護されるべきである。
4.仮にC社の使用借権付き建物がAの権利を侵害することになっても、その責は、虚偽登記をしたAにあり、やむをえない。
さて、C社のこの主張は認められるであろうか?
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
NO2さんの疑問にお答えします。
まず、質問者さんの質問にもあるように、相続による権利変動にも94条2項の類推適用がありえる、と言う事です。双務契約として、相対する両者の売買契約の事例で虚偽表示については良く説明がなされますので、両者で通謀して虚偽表示することだけを考えてしまいがちだからかもしれませんね。まず相続自体は売買と異なり意思表示によらない法律関係ですが、相続登記はその相続人の意思で行うものです。また、相続登記は単独でしますが、単独なので通謀は確かにありませんが、単独でも虚偽の表示を作出する事が十分可能です。つまり、自分ひとりで虚偽表示をした、と言う事になります。だから通謀が無いために、94条2項の直接適用ではなく、類推適用となるのです。また、この事例におけるAの甲地の相続登記は「全くの不実の登記」ではありません。なぜならAは相続人であり、その不動産の所有権を取得する可能性は十分あるからです。全くの無関係な第三者が勝手に自己名義に登記したこととは違います。次に、相続による物権変動も177条の対抗関係になるのが原則である、と言う事です。相続や合併のような包括承継による権利取得も、原則として登記がなければ、第三者に対抗できません。ただし、相続放棄や欠格事由に該当した事による相続人及び相続分の変更や、「相続人に~を相続させる」という遺言による相続分の修正等は、登記無くして第三者に対抗できるとされていますが、これはあくまで例外なのです。この事例におけるAとC社は相続の当事者ではもちろんありませんから、第三者の関係と言う事になります。さて、質問者さんは「C社には対策が無いのか?」といわれていますが、やはり、最初に回答したようにC社には、遺産分割協議の内容やAの相続登記が虚偽である事を承知しており、その上で、乙地上の建物を購入したのであり、また乙地上に建物が存続するための権利である使用借権の譲り受けの承諾も、Aからも得るべきところ、Bからしか得ていないため、使用借権の取得もC社は主張できず、法的に保護される余地は無いと考えられます。そして、Aの行為は、質問者さんが言われるように、刑法上の「公正証書原本不実記載罪」に当たると考えられます。しかし、だからと言って民法上の建物収去請求が出来ない事にはならない、と言う事であり、また、建物がいくら高価なものでも関係ない、と言う事になってしまうと思われます。そして、この事例は、実例と言う事ですから、「事実は小説より奇なり」の言葉どおり、この事例の事実関係に法律を当てはめていく事は、現役の弁護士でもかなり大変だと思います。ですから、ご心配ならここで質問するよりも、弁護士に相談した方が確実ではないか、と思われます。
御回答ありがとうございます。
もちろん、C社は複数の弁護士に相談済みです。
しかし良い知恵は出ません。
せいぜい、Aさんの「ダーティーハンズ」を責め立てるくらいでしょうか?
C社は、腹いせにAさんを刑事告発し、虚偽登記の代理人となった司法書士の資格剥奪くらいは動いてやろうかと考えているようですね。
まぁ、そんな暇があれば、ってところでしょうが。
No.7
- 回答日時:
本題とは関係ありませんが、後に参考にされる方もいるので、一応・・・
No.1 さんのいう、乙土地についてAの登記が無いので、Cに所有権を主張できないという点は、明らかに誤りです。
最高裁は、相続人は法定相続分については、登記無く対抗できることを明らかにしています(最判昭和38年2月22日民集17巻1号235頁)。
相続後、Aの持分喪失の理由となるような事実が無い限り、Aは法定相続分である50%の所有権者であることを、登記なくして主張できます。これは、Bが勝手に乙地をB単独名義で登記したような場合でも変わりません。
No.6
- 回答日時:
ここまで読むのに、大変時間がかかりました。
何か良い知恵が見つかるといいですね。
私の感想は、#1さんがおっしゃることが原則で、何とか修正するために、#3さんのような構成がありうるとは思います。
あくまで94条2項類推の構成を補強するためには、虚偽登記について悪意であっても保護されるといわなければなりません。
この点、C社が悪意であるのは、当初AがBに無断で登記をしたという点についてであり、建物購入時において、なおAが乙土地について所有権を有していることについては善意ですよね。
そうであれば、94条2項の類推適用の可能性はあると思います(正に、質問文どおりの1~4の主張が認められると思います)。
そうではなくて、C社は建物購入時においてもAの登記は嘘で、Aが乙土地の2分の1の所有権を有すると知っていたなら94条2項の類推は無理だと思います。
この場合は、「平成○○年12月、C社はAを訪ね、Aが甲地の相続を主張していることを確認した後、建物購入の事実を告げた。Aから特段の異議は出なかった。」ことを強調して、黙示の承認を主張すべきなのかなと思います。
No.5
- 回答日時:
事実関係を変えて、仮にBが乙地をAとの協議なしに独占的に使用した場合で考えると、AはBに対して当然には、土地の明け渡しを請求できないとされています。
判例(最判昭和41年5月19日民集20-5-947)の事案では、共有物の価格の過半数を有する共有者からの請求にもかかわらず、明け渡しは否定されました。少数持分者といえども、持分に応じて共有物の全部を使用することができますから(民法第249条参照)、全くの不法占拠者とは言えないからです。No.3で挙げた判例は、この判例の延長線上にあるものです。これらの判例の事例は、相続財産を巡る争いという事情がありました。明渡請求によるのではなく、最終的には遺産分割協議で解決すべき問題というのが、判例の真意なのでしょう。
ご相談の事例も、AとBの相続を巡る争いが根底にあるのではないでしょうか。(あるいは、共有物の利用、共有物の分割の争い。)ですから、判例の適用の余地はあると思います。
もっとも、明渡請求が認められないと言っているだけであって、無償で使用する権利を認めたわけではありませんので、Aから損害賠償請求あるいは不当利得返還請求を阻止することはできません。
No.3
- 回答日時:
実際に裁判で認められるかどうかは、もっと具体的な事実関係を検討しなければなりませんが、C社の主張としては、次のようなことがあげられます。
1、当初の遺産分割協議を合意解除し、Aが甲地を単独相続し、Bが乙地を相続する新たな遺産分割協議が成立した。あるいは、そのような内容の共有物分割協議が成立した。
2、かりに成立していないとしても、1のような内容の協議が成立したような外観をAが作出し、その外観をC社が信頼した。(94条2項の類推適用の主張は難しいと思いますので、あくまで1の主張を主眼として、これは予備的主張にとどめておくべきです。)
4、AC間で、使用貸借契約が黙示に成立している。
5、以上の主張が認められないとしても、Aの主張は失当である。なぜなら、乙地の共有者であるBの承諾
を得ているのであるから、Bの共有持分に基づいて土地を使用していることになる。従って、AはC社に対して当然には建物収去土地明け渡しを請求することはできない。(最判昭和63年5月20日判例時報1277-116参照)
御回答、ありがとうございます。
1.については、既に述べております。まさか公正証書不実記載を認めることはないだろうという、淡い期待から、です。でも、Aさん方は、言下に否定しました。
5.についても既に述べてます。Aさん方の当初の主張が民法597条3項に基づき、明渡を請求する、ということだったので、C社は「ラッキー」とばかりに、これを主張しております。しかし、この判例は、使用借権者が、継続して使用しているときの判例ではないでしょうか?
本件の場合、C社は譲渡を受けた(もしくは新たに使用借権を設定した)のであって、この判例とは事情が異なると思います。
指揮者は公平な人で、Aさん方のこのミスを指摘し、修正させております。
その結果、やはり指揮者から顧みられておりません。
No.2
- 回答日時:
これって、実話ですか?
No.1 さんの回答は、
・「虚偽表示(虚偽の意思表示)」と「虚偽の登記」の区別がついていないこと(一人で書類を偽造して不実の登記をするのは虚偽表示ではありません)
・相続による物権変動は177条の物権変動にはならない(AとCは乙地について対抗関係に無い)ことを考慮していないこと
に法律論的には問題があります。
私の見解ですが、Cが、登記の内容が虚偽であることを知っていたという点で、登記の内容という外観に対する信頼があったと主張するのは、苦しいと思います。(2、3の部分)
Cが信頼した外観というのが、単に登記の内容だけではなくて、登記をしたことを含む、Cの一連の行動や言動であるというのであれば、適用の余地もあるかなと思います。
ただ、行動や言動に対する信頼ということになると、真偽則上の禁反言とか、異議を言わなかったことに黙示の承諾があったとかいうこととほとんど同じことで、はたして94条2項で解決すべき問題なのかという疑問はあります。
これって、実は実話です(笑)。
禁反言や黙示の承諾については、既に主張しております。あまり、相手にされていないようです。
C社としては、事実を中心に言えることだけ言って、後は、もう諦めるしかない、て感じでしょうか?
No.1
- 回答日時:
C社は、AB間の遺産分割協議の内容を知っており、かつ甲地がA名義である事が虚偽の登記である事も知っていたため、AはC社に対して甲地のA名義の登記が虚偽表示により無効である事を主張できます。
また、土地の所有権は、実体上遺産分割協議どおりにAB共有状態である事になります。これは、甲地・乙地に分筆する・しないとは関係ありません。しかしながら、AがC社に対して乙地上の建物収去請求するためには、Aが乙地の所有者である事をC社(第三者)に対抗できなければなりません。ところが、Aは甲土地に有している自己登記名義が虚偽表示により無効であるため、その所有権を主張できない事はもとより、乙土地に至っては自己名義の登記を受けていないため、C社に乙土地の所有権が自己にある事を主張できず、したがって建物収去請求は出来ない事になります。ただし、この事は、建物が乙地上に存するための権利(この事例では使用借権)について、C社が適法にAに対して主張できる場合に限るのであり、もし主張できなければ、C社は建物を有するための乙地上の権利を有しない事になり、「不法占有」となって、AやBは土地の登記名義を有せずにして建物収去請求できるからです。この事例では、Bの承諾は得ていますが、Aの承諾は得ていないため、C社は使用借権を有する事を主張できず、建物収去請求されてしまう事になると思われます。そして、ご質問の3.について、「Aの虚偽登記により乙地はAが相続しないという外観を作り出した」と言っていますが、そうではありません。いくら甲地にAの登記名義があるからといって、そのことだけで、乙地の所有権をAが有しない事にはならないからで、そのことを信頼したC社のほうに過失がある、とも言えます。まして、遺産分割協議によりAB共有とする事をC社は知っていたのですからなおさらです。また、ご質問の4.で「C社の建物がAの権利を害する事になっても、その責はAにあり、止むを得ない」と言っていますが、これも、あくまでAの虚偽表示について善意である者が言える事ですから、悪意のC社は主張できません。結論として、「Aは確かに虚偽表示による自己名義の登記をなしたが、C社はそのことに関する事情を知っていた以上、虚偽表示を信頼した事による不利益を主張できず、無効主張されてしまう。また、土地上の建物所有のための権利(使用借権)について、C社はAに対抗出来ないため、不法占有となってしまい、土地の所有権の登記名義を有しないAに建物収去請求されてしまう」と言う事になると思われます。なお、以上の事は私の私見であり、何か判例等を参考にした訳ではない事を申し添えます。ご親切な回答、ありがとうございます。
C社には過失があるでしょうが、まさかAさんが乙地の相続を主張するとは思わなかったので、油断したのでしょう。
Aさんの甲地の相続登記は、公正証書原本不実記載に相当するのであり、ここでC社に建物収去を請求するとは、自己の犯罪を認め、かつ自身で依頼した司法書士が資格剥奪の危機にさらされることになります。そのようなリスクを犯してまで、建物収去を求めるとは、まあ凄い人です。それなりの見返りがあるのでしょうね、ただ見返りについては推測であり、何も物的証拠はありません。
C社としては、どうすべきでしょうか?全く対策はないのでしょうか?いちおう、建物はそれなりの価格がしたわけですから。
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