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民法を勉強の身ですが、失踪宣告の取消しに関する民法32条が理解できなません。

民法32I ・・失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。

この後段から、逆に悪意の行為者の効力には取消の効力が及ぶということになるのですが、教科書では、以下のように説明されています。

「失踪宣告により発生した身分上・財産上の法律効果(物権的効果)は消滅するが、債権的効果は消滅しない。」

私の疑問は、以下の2点です。
・何を言っているのか、なぜ、そのように考える必要があるのかが、理解困難。
・同じことかもしれませんが、条文をどう読んだらそんな結論が出てくるのか?

何か、基本的なことを勘違いしているようで、本を読んでも頭に入らず、困っています。

どなたか、ご存じの方がいれば、ご助言下さい。

A 回答 (2件)

 「失踪宣告により発生した身分上・財産上の法律効果(物権的効果)は消滅するが、債権的効果は消滅しない。


 教科書,すなわち学者の説明は,最高裁判例とは異なり,公的な通用力はありません。
 ただ,このテキストの言わんとすることは,下記のようなことではないでしょうか?
 
 ここでは,「甲の夫乙が失踪宣告を受けたが,甲は,乙が生存していることを知っていた。失踪宣告後,甲は,相続した土地を丙に売却し登記を移転したが,乙が帰ってきたので,失踪宣告が取り消された。」という事例で考えてみましょう。

 まず,「物権的効果(物権的効力とも言う。)」とは,誰に対しても主張できる効果です。失踪宣告の取消しにより,丙は乙に土地の取得を
主張できなくなるので,丙の土地所有権の取得は,物権的効果を失います。
 一方,「債権的効果」とは,特定の人に対して主張できる効果です。丙は,失踪宣告の取消しにかかわらず,売買契約の当事者である甲には,売買契約の効果を主張できます。つまり,丙に土地所有権を移転できなかったことについて甲に過失があれば,債務不履行責任を問えるし,契約解除もできるということです。
 失踪宣告の取消しの趣旨は,主として失踪宣告を受けた者の保護にあると考えられますので,その目的は,失踪宣告後の行為の効果を失踪宣告の取消しを受けた者に主張できないことで達せられます。あえて,行為の当事者間における効果まで否定する必要はないわけです。

 「何を言っているのか、なぜ、そのように考える必要があるのか」という疑問に対する答えはこれで分かりますよね。

 次に,「条文をどう読んだらそんな結論が出てくるのか?」についてですが,たしかに条文を素直に読んだら,テキストのような解釈はできないようにも思えます。
 しかし,条文解釈においては,条文の文言を基本としつつ,制度趣旨や民法の基本原則をも加味して解釈することはよくあることです。

 本件においては,「失踪宣告の取消しを受ける者の利益保護」とともに,民法の基本原則たる「取引の安全」(いわゆる「動的安全」)を達成するために,このように解釈することは可能であると考えます。
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この回答へのお礼

とても丁寧なご回答、ありがとうございます。

要するに、32条後段の趣旨は、失踪宣告された本人の保護にあるので、本人を保護するためには、本人に効力が及ぶ場合、つまり対世効がある物権的効果や身分法上の効果だけ潰せば目的を達成できる、ということですね。

とても、納得できます。
教科書も一言、そんな説明があればつまずかないのですが、あまり親切過ぎると学生が頭を使わなくなる、という教育的配慮と思うようにします。

ありがとうございました。

お礼日時:2008/08/18 17:10

>何を言っているのか、なぜ、そのように考える必要があるのかが、理解困難。



「Aに対して失踪宣告がなされ、Aの配偶者であるBがA所有の甲土地を相続したが、Bは悪意者であった。Bは相続した甲土地を善意のCに売却した。その後、Aの失踪宣告は取り消しされた。」という事例で考えてみます。

 まず、Aの失踪宣告により終了したAB間の婚姻関係が、失踪宣告の取消により復活します。
 また、相続も発生しなかったことになりますから、Bは甲土地の所有権を取得してなかったことになります。そうするとBは甲土地について無権利者ですから、CはBから甲土地の所有権を取得することができないのが原則ですが、「善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。」ので、誰について善意(さらに無過失も必要かという争いもありますが、無過失は不要という通説に従うことにします。)が要求されるかが問題になります。判例、通説は、行為者の双方、すなわち本事例で言えば、売買契約の当事者であるB及びCが善意であることが必要とされます。本事例でBは悪意なので、結局、原則通りCは甲土地の所有権を取得することができないことになります。これが物権的効果(所有権の移転)が消滅するという意味です。
 しかし、このことはBC間の売買契約が無効になることを意味するものではありません。すなわち、日本の民法は、他人物売買を有効としており(民法第560条)、BはCに対して甲土地の所有権を移転する売買契約上の義務を負っていることになります。
 失踪宣告の取消により、結果的にはBは他人物売買を行ったが、Cは甲土地の所有権を取得することができなかったことになりますので、CはBに対して追奪担保責任(民法第561条)を追及することができます。あるいは、債務不履行に基づく損害賠償請求をするこができます。(民法第415条)

>・同じことかもしれませんが、条文をどう読んだらそんな結論が出てくるのか?

 民法第32条だけ読んでも分かりません。もっと言えば、民法総則だけ勉強しても理解することは難しいです。物権法、債権法、親族法といった民法全般にわたる体系的な知識と理解が要求されます。
 民法の初学者が総則の教科書を読んでもよく分からないのは当然であり、それは誰でも通る道なので、あきらめず民法を最後まで学習してください。

民法

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

(売買)
第五百五十五条  売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十条  他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

(他人の権利の売買における売主の担保責任)
第五百六十一条  前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。
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この回答へのお礼

丁寧なご回答ありがとうございます。

また、事例処理を最後までご説明頂いた上、励ましの言葉までいただき、感激しております。

失踪宣告の効果については、最初何気なく読んでいて、最初はわかった気になっていたのですが、質問した「債権的効果は残る云々」の記述が突然目に飛び込んできました。

わかった気でいたところも、一歩、踏み板を踏み破ると、自分が意識もしていなかった解釈論にどっぷり足を取られることがあり、普段読んでいた教科書の記載の下にも、いたるところにそんな地雷があるのか、と思って少しブルーになりましたが、気を取り直して頑張ります。

ありがとうございます。

お礼日時:2008/08/19 14:20

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