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No.3ベストアンサー
- 回答日時:
獣医師でウイルスに専門知識を有する者です。
強毒や弱毒というのは病原性を表現する言葉ですが、「病原性」と「感染力」は同じではありません。感染力の弱い強毒ウイルスや感染力が強い強毒ウイルスといったものは普通にあり得ます。
そこを間違うと、今回の新型インフルエンザについて弱毒型であるという報道を受けて「感染力が弱い」という大誤解をしかねないので注意して下さい。
普通、弱毒や強毒という表現をする際は、単に発病率や症状の重篤性、致死率などで分けるのですが、インフルエンザの場合は少々難解です。
インフルエンザの「毒性」はvirulenceではなく、pathogenicです。強毒型インフルエンザはhighly pathogenicです。そもそもvirulenceは通常"病原性"と訳します。"感染力"という意味合いはないと思うのですが・・・まあこれは別にどうでもいい話ですが。
インフルエンザの「強毒型」とは、正確に定義を述べるとかなり複雑になるので簡単に書きますと、「鶏の全身臓器に感染するタイプ」ということになります。
以下、もっと詳しく書きます。
インフルエンザウイルスは、通常は気道と腸管粘膜でしか感染、増殖することができません。それはウイルスが細胞に感染するためにトリプシンという酵素が必要なためで、そのトリプシンは気道(鼻孔から気管支、気管等)か腸管内にしか存在しません。
ですが、希にトリプシンなしでも細胞に感染可能な変異を起こすことがあり、この変異を遂げたインフルエンザウイルスは全身の臓器に感染して増殖することが可能になります。
これを「高病原型」と定義しているわけです。高病原型と強毒型は同義です。
肝心なのは、この定義は鶏のインフルエンザに対する定義だということです。
現在のところ、「高病原変異」は鶏でしか起きたことが報告されていませんし、H5とH7の2つの亜型しか高病原変異したという報告がありません。
ちなみにこの「高病原型」は、インフルエンザウイルスの遺伝子のどの部位がどのように変異すればそうなるのか、詳細に判っています。
そして高病原変異を起こすのはH5とH7だけなので、鳥インフルエンザについては国際的な基準では実際に高い病原性を示さないと「高病原性鳥インフルエンザ」とは定義しないのですが(感染実験をして75%以上の致死率が基準です)、日本ではH5とH7の2つの亜型については無条件に「高病原性鳥インフルエンザ」と定義しています。
ですから、「低病原型(弱毒型)の高病原性鳥インフルエンザ」というような、一見不思議な言葉が存在するわけです。今年の春に愛知県で出たウズラのインフルエンザがそうでしたね。
この言葉がなぜヒトの世界の方で盛んに聞かれるようになったのかというと、近年インドネシアやベトナム等の東南アジアで"高病原性鳥インフルエンザ"が蔓延しており、その"強毒型"のウイルスがヒトに感染して既に300人近い方が亡くなっている、ということがあるからです。
このアジアの鳥インフルエンザ感染では、致死率は60%近く極めて強い病原性を持っていますが、ヒト→ヒト感染はまだほとんど起きておらず「感染力はほとんどない」状態です。鶏→ヒトの感染力もそれほど強くありません。もし強ければ今頃何千人という人が犠牲になっているでしょう。
で、このアジアの鳥インフルエンザ感染で亡くなった人々ですが、さすがにそこまで詳しくないのですが、今まで伝え聞いたところによると必ずしも「全身感染」していたということはないようです。あくまで重篤な呼吸器症で亡くなっていると読めます。
鶏で強毒性(全身感染性)を持っているウイルスでも、ヒトや他の動物種に感染したときにどうなるかは、また別の話、というわけです。
もうひとつ例を挙げると、つい昨日ですが、インドネシアで豚からH5N1ウイルスが検出されたというニュースがありました。400頭あまりの調査をしたところ、1割以上の豚からH5N1が分離されたということです。
このH5N1は紛れもない「高病原型」のウイルスなのですが、豚に対しては「調べて判った」ということなので、おそらく致死率の高い病気は起こしていなかったのでしょう。鶏に対しては全身感染性を持つ強毒型のウイルスでも、豚に対しては全身感染は起こしていない可能性が高いです(詳報を得ないと断言はできませんが)。
ということなので、インフルエンザウイルスに限っては「強毒型」とは、「鶏の全身臓器に感染性を持つウイルス」という定義です。この「鶏の」が肝心な点です。
むろん、鶏に対して強毒型(全身感染型)のウイルスがヒトで流行した際にも強毒型(全身感染型)である可能性もあるわけで、それが最も恐れられているわけです。
念を押しますが、これまでH5とH7以外に「強毒型」を示したウイルスは見つかっていません。これからも絶対にH5とH7以外は強毒型に変異しないという保証もないのですが、今回のH1N1が弱毒型なのは言わば"当たり前"の話で、これから強毒型に変異する可能性もまずないと思います。強毒変異すれば世界中のウイルス学者がひっくり返って驚くでしょう。
もちろんスペイン風邪も、アジア風邪も香港風邪も、全て弱毒型で誰も異論は唱えていません。遺伝子の塩基配列も確定して、紛れもない弱毒型だったことが判っています。
ですが、スペイン風邪も弱毒型で1000万人の方が亡くなっているわけですから、ことインフルエンザに関しては、ウイルスの型の分類である「弱毒型」あるいは「強毒型」と、ヒトに対する病原性の強さは別の話です。東南アジアで問題になっている以外の高病原性鳥インフルエンザの発生例でヒトに感染した事例はいくつかあるのですが、軽い呼吸器症で終わった事例や結膜炎程度で済んだ事例、あるいは抗体検査によって感染が判明したものの、まったく無症状だった事例も多くあります。
というわけで、インフルエンザに関してはとりあえず「強毒型」や「弱毒型」という表現と、ウイルスのヒトに対する病原性は無関係、と覚えて下さい。
それはつまり、今回の"メキシコ風邪"のウイルスが弱毒型であったとしても、それで安心するわけにはいかない、ということでもあります。
もうひとつ。
「感染力」については、通常「どのくらいのウイルス量で感染が成立するのか」という数値で識別されます。
少ないウイルス量で感染が成立するウイルスは、「感染力が強い」と言います。
むろんそれは、「患者がどのくらいの量のウイルスを排泄するか」という数値にも関係してくるわけです。ウイルス100個で感染が成立するウイルスでも、患者が10個くらいのウイルスしか排泄しないのであれば、現実問題として「この疾病は感染力が弱い」ということになりますし、感染にウイルス100万個が必要でも、患者が普通に10億個のウイルスを排泄するのであれば、「極めて感染力が強いウイルス」ということになります。
別に法則があるわけではないのですが、ごく一般的には、病原性が強いウイルスほど感染力は弱いです。というより、病原性も感染力も強いウイルスが存在すれば、人類はとっくに滅亡しているでしょ、という話なのですが・・・
というわけで、「感染力と病原性は別」ということも記憶しておいてください。
素晴らしく詳細かつ明瞭な回答をいただきました。どうもありがとうございます。
ニュースでもネットでも何故このような解説が見つからないのか不思議です。
重ねて御礼申し上げます。
No.2
- 回答日時:
感染力が小→弱毒性です。
virulenceとは毒性または病原性とも訳しますが、ウイルスが病気を引き起こす能力というか、可能性と考えられた方がわかりやすいかもしれません。
症状が軽い、重いは毒性とはかならずしも一致しません。
たとえば同じウイルスのインフルエンザに感染しても、一人は重篤な肺疾患を起こして入院し、一人は咳、激しいのどの痛みはあるものの肺に影響なく軽かったなんてことはよくあります。
この場合ウイルスの型は同じなので毒性も基本的には同じです。個人によって症状の度合いが違うのは、毒性以外に本人の体力や既往症、その他の要因が複雑にからみあうからです。
No.1
- 回答日時:
ウイルス性のインフルエンザの場合、ウイルスがどの程度の感染力を持つかを、「毒性」=virulenceと呼びます。
弱毒性の場合は、いわゆる呼吸器に限定される感染などを指します。
http://www.e-chiken.com/shikkan/infuruenza.htm
以前はやったスペイン風邪は呼吸器の感染はだった為世界で何百万も死亡しましたが、弱毒性と言われました。(これには異論も勿論ありますが)
対して強毒性の場合は、全身感染を引き起こし、死亡率も極めて高いとされます。発症してからわずか数日で多臓器不全などを引き起こして死亡する場合もあります。鳥インフルエンザがそうでした。
http://keepsite.web.fc2.com/influ_tori/
感染力が大→強毒性
感染力が小→弱毒性
ですか?
重篤な症状を引き起こす→強毒性
症状は軽微ですむもの →弱毒性
ですか?
ちょっと混乱してしまいます。
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