No.3ベストアンサー
- 回答日時:
>正規の民法教育を受けた方には当然のことかもしれませんね。
所謂専門家や専門の教育を受けた人間が、当然に理解したつもり、又は意味があると思っているつもりのものであっても、実は理解していなかったり、大して意味が無かったりするのは世の常。a1bさんのプリミティブな質問にハッとし、勉強になることも多い。ただし失礼だが、単に知識が不十分であるが故の質問もまた多いと感じている。
本質問について、自分なりにa1bさんの立場になって考えるに、知識が不十分であるが故の質問の感が否めない。ただし、これは民法の総則編、債権編の多くに関するものであり、何をどう書けばいいのか非常に悩んだ。質問の意図とずれていたら申し訳ない。
常に契約が成立し有効に効力が発するのならば、考える必要は無いのかもしれないが、何か問題があり、成立しなかったり、有効に効力が発しなかった場合に、当事者、第三者、転得者等多くの利害関係人の利益の調整を如何に図るのがどれほど難しいのかは容易に想像できる。
そのため、予めどこにどのような問題があれば、どのように利益を調整すればよいのかを、決めておくことは極めて重要であろう。
そのため、一般的には契約が成立し効力が発生するまでの過程を以下のように分類し、分析し効果を考えている。
1.契約の成立要件
内心、外形の一致
2.契約の有効要件
2-1当事者にかかわる有効要件
権利能力・意思能力/行為能力/意思表示上の瑕疵・不存在
2-2契約内容の有効要件
確定性、実現可能性、適法性、社会的妥当性
3.効果帰属要件
代理人・法人の代表権
4.効力発生要件
条件や期限
1.契約の成立要件
申し込みと受諾の意思表示の合致によって成立するが、当事者間で内心が一致していれば、契約は成立。このとき外形が異なっていた場合どう処理するか?例えば買主がAを買うつもりで、Bについての注文書を送り、売主がAを売るつもりでBの請求書を送った場合等である。これは、内心が一致しているAについて契約は成立として処理する。
内心も外形も一致していなければ、当然不成立。
内心は一致していないが、外形が一致している場合はどうなるか?
買主がAを買おうと思い、間違えてBについての注文書を送り、売主がBを売ろうと思って、Bについての請求書を送った場合などであるが、契約はBについて成立する。
ただし、内心と外形の不一致があった当事者を保護するために、その当事者のみに錯誤無効を主張することが認められている。(勿論、必ずしも錯誤無効を主張する必要は無く、Bについての契約を成立させても良い)
成立要件として分類し分析することで、以上のような画一的な処理を決めておくことができる。
2.契約の有効要件
2-1当事者にかかわる有効要件
権利能力・意思能力/行為能力/意思表示上の瑕疵・不存在
2-2契約内容の有効要件
確定性、実現可能性、適法性、社会的妥当性
これについては、書き出すときりが無いが、基本書を紐解けば数百ページにわたって、詳細に分類・分析されているし、すでに多くをa1bさんもご存知であろう。有効か無効か、取消しうるものか、誰がそれを主張できるか?その場合の、利害関係人の利益調整はどうすべきか?などなど。
3.効果帰属要件
補足を拝見するに、無権代理人を有効要件とお考えのようだが、一般的には効果帰属要件に分類される。単純に書けば、成立し有効であった契約が誰に帰属するのか?と考えるもの。
けん名が無ければ代理行為ではなく、その他表見代理の成立、無権代理人の責任、相手方の取消権、相手方の催告権、有権代理などに分類され、効果は論じられる。
4.効力発生要件
条件や期限
これは書かないでも容易に想像できるだろう。
一応これ位の知識があれば、4つに分ける実益について、なんとなくの理解はできると自分は思うのだが、以上を踏まえた上でまだ疑問であれば、できるだけ具体的に疑問を書いていただければお答えできるかもしれない。
いつも懇切丁寧かつ論理明快な回答有難うございます。
非常に分かりやすく、噛み砕いての説明に感服いたしました。
このような説明が教科書に書いてあれば、悩む必要はなかったですね。
そして、このような説明は、教員からの説明、或いは学友との議論で得られる
ことが多く、教科書を読んで、行間を読むことがたとえ出来たとしても、それ
を確認する作業が必要になります。
正規の民法教育といいましたのは、大学等の教育を差しておりましたが、基礎
的な前提や知識について、講義を通じて、また学友との議論を通じて理解し確
認する時間と機会があるという意味でした。(私は理科系でしたので、法律に
かんするこのような機会には恵まれませんでした)
私にとって「教えてGOO」での質問はこのような機能を補う意味があります。
以前に書きましたawlawlawlaw様への「最も望むところです」というのはその
ような意味でした。
今回の疑問は、契約の成立を他の要件と分ける、実際的な意味でしたが、交渉の
過程を考えるに申込みと承諾の一応の一致をみたときを特定することの重要性に
ついての認識が欠落していたことがよく分かりました。
また、補足にあたっては、取消、解除の遡及効(有効を無効にする)を例に挙げ
ずに、無権代理の追認(無効を有効にする)を挙げるについては悩んだのですが、
無効な契約の追認という文脈にしたかったために、効果帰属要件を有効要件に広
く取り込んだ表現にしてしまいましたが、御批判のあるところであると思います。
(単なる無効の追認も考えましたが、追認した時点での新たな意思表示になってし
まいますので、遡及効がないためにあきらめました)
追伸:既に十分なご回答をいただいている場合でも、一定期間は締め切らずにおり
ますが、それは、他の異論等についても配慮してのものであります。
No.2
- 回答日時:
民法を学び始めて1ヶ月程度の人間に同じ質問をされたならば、上手く回答する自信があるが、a1bさんは数年勉強なさっているようにお見受けする。
その数年勉強した方に、いい意味でプリミティブな質問をされると、なかなか回答しづらいものがある。なので大変失礼だが、何は理解していて、何が理解できていないのか、もしくはどういう問題意識をお持ちでの疑問なのか、多少なりとも教えていただければ、自分にも回答できるかもしれない。
一般的には、契約が成立し有効に効力を発生するために、
1.成立要件 2.有効要件 3.効果帰属要件 4.効力発生要件
の4つを満たす必要があると説明されるが、この4つに分けられることおよび4つの内容をご存知でしたか?
仮にこの4つの具体的内容をご存知であれば、3と4については分ける実益は理解できるものの、1と2については分ける実益がない、という御主張ですか?仮にそうであれば、その理由をお聞かせ願いたい。
上記以外にも、何か異なる主張なり、問題意識なり、理解できないところなどあれば、お聞かせ頂ければ、より内容のある回答ができる可能性が高まると思われます。
なお、自分はこういう「そもそも論」を語り合うのは大好きであり、非常に興味深い質問です。
この回答への補足
いつも、懇切丁寧かつ論理明快な回答を有難うございます。
買いかぶりをされているようですが、私は民法の正規の教育を受けていない
こともあって、人とズレているところがあるようです。
今回の疑問も、全く素朴なものでした。
端的に言えば、契約の成立と有効を分けずに成立=有効に成立では駄目なの
かということでした。
分けることによって、無効に成立というおかしな場合が起こるのではないか
と思ってしまったのです。
質問をさせていただいた後も考えておりましたが、車中でふっと思い当たり
ました。
それは、取消や解除、追認により遡及する場合に必要な概念だということで
した。
正規の民法教育を受けた方には当然のことかもしれませんね。
特に、無権代理により契約が行われた場合には、本人と相手方の契約は無効
ですが、とりあえず成立はしていると思われます。
追認にした場合には、成立時点に遡及して有効になりますので、成立という
概念は有効ということと切り離して考えておかなくてはならないということ
に思い当たりました。
これが、成立と有効を分ける実益かと思い始めております。
No.1
- 回答日時:
契約が有効か無効かを判断するためには、理論的には、その契約の内容がどのようなものであるか確定している必要がありますよね。
たとえば、「AとBとの間の契約は公序良俗に違反し無効である」というためには、まず、「AとBとの間の契約」の内容がどのようなものであるか確定していなければいけません。
つまり、「AとBとの間の契約は、AがBを殺してもかまわないという内容の契約である」と言えてはじめて、「そのような契約は公序良俗に違反し無効である」と言えるわけです。
他方、「AとBとの間の契約」の内容がまったく確定できないのであれば、有効・無効を議論する実益すらなく、契約は成立していないと言えば足ります。
もっとも、契約という「制度」自体が、人が作り出した観念的な制度ですから、「公序良俗に反する契約は成立しない」という説明をすることも、理論的には不可能ではありませんし、そのような制度設計をすることも可能でしょう。
これは、制度として、無効と取消をどのように振り分けるのかという議論(取消的無効なんて言葉もあるくらいです)にもつながる話です。
この回答への補足
懇切丁寧かつ論理明快な回答を有難うございます。
質問をさせていただいた後も考えておりましたが、車中でふっと思い当たりました。
tomo-tomo01様のご指摘にもあるように、取消や解除、追認により遡及する場合に
制度設計上、必要な概念だということでした。
特に、次のような場合に重要かと思います。
無権代理により契約が行われた場合には、本人と相手方の契約は無効ですが、とりあ
えず成立はしていると思われます。
追認にした場合には、成立時点に遡及して有効になりますので、成立という概念は有
効ということと切り離して考えておかなくてはならないということに思い当たりました。
これが、成立と有効を分ける実益かと思い始めております。
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