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No.1ベストアンサー
- 回答日時:
こんにちは。
複雑系に於ける自己組織化を正しく理解するためには、
「エントロピー」
「散逸系」
「フラクタル」
といったキーワードが必要になります。
ここでその全てにきちんと就いて説明することはとてもできませんから、その点に就いてはご容赦下さい。それでも、少々長くなりますので、宜しければ、暇を見付けて読んで頂ければありがたく思います。
自己組織性とは、読んで字の如く、自分で勝手に構造や形状を作り上げてしまうことです。そうなることを「自己組織化」と言います。そして、それは整然とした「秩序」を持ち、しばしば「機能」を持ちます。
機能に就いては後で述べますが、まず、雪の結晶が良い例だと思います。元は大気中の水分で、てんでんバラバラの水分子ですが、気温などの条件によって結合し、規則性を持った美しい結晶になります。これは誰かが手を加えたわけでもなく、自然に起こる現象ですが、明らかに「秩序」を持っています。
風化という現象は、秩序から無秩序への移行と言って良いでしょう。岩石は長い時間を掛けて雨風にさらされ、やがて削られて砂粒になります。ですが、砂粒が自分で寄り集まって再び岩になることはありませんし、削られた岩が「ミロのヴィーナス」のような芸術作品に仕上がるということもありません。このように、秩序が無秩序に移行すること、即ち、「デタラメ」が当たり前であることを「エントロピーの増大」と言います。この世の全ての現象は、基本的にはエントロピーの増大に向い、その逆はありません。それに対して、自己組織化は、単純デタラメから整然複雑へと、自ら「エントロピー減少」の方向に移行します。このように、自己組織化とは、エントロピーの原則に逆行し、「単位から複合へ」、「無秩序から秩序へ」と移行する現象を指します。
エントロピーの原則に逆らうと申し上げましたが、これは決して不思議なことではありません。何故ならば、エントロピーの原則とは「閉鎖系」にのみ適応されるものであり、地球のような「散逸系」では、「法則」にはなり得ても、「原則」にはならないからです。
雪の結晶は自己組織化によって出来上がります。ですが、一旦溶けてしまえばエントロピーの法則に従い、元に戻すことはできません。それが、再び雪の結晶として生まれ変われるのは、地球が閉鎖系ではなく、太陽からエネルギーの供給され続ける散逸系だからです。太陽熱によって溶かされた雪は、蒸発して再び空に上って行きます。そして、新たな雪の材料になります。
雪を溶かした太陽エネルギーは熱となり、やがて地球の外に出て行ってしまいます。その熱はエントロピーの法則により、二度と太陽エネルギーに戻すことはできませんが、幸い、地球には太陽から次ぎから次ぎへとエネルギーが供給されます。自己組織化現象がエントロピーに逆行できるのはそのためです。このように、外から供給されたエネルギーを消費して秩序を保ち続けるシステムを「散逸系」と言います。そして、生物は餌を獲り、生命という秩序を維持し続ける散逸系です。
生物が生きてゆくために大変重要な役割を果たす「タンパク質」も、アミノ酸という単位が複合し、秩序を持ったものです。タンパク質は生物の骨格を形成するだけでなく、触媒として化学反応を促進し、生命現象を担っています。このように、たくさんの分子が結合することによって化学反応を起こすことができるようになった有機化合物を「機能高分子」と言います。そして、その「機能」とは、単位が複雑に絡み合う自己組織化現象によって生み出されたものです。
タンパク質が機能を発揮するか、また、その機能が生物にとって有用であるかどうかは、出来上がってみるまでは分りません。ですから、現在生物がDNAという設計図によって作り出すタンパク質は、遥か長い進化の過程で丹念に選別されたものです。
生物の基本物質であるタンパク質もDNAも、脂質も糖も、全てが分子という単位の集まりです。原子や分子に始まり、それらの秩序が更にひとつに集まり、遂には「生命という機能」を持ったものが生物です。生物は、エントロピーに逆行した散逸系であり、究極の自己組織化現象と言えます。ですが、そこには何十億年にも渡る、計り知れないほどの偶然があります。それでは、どうしてデタラメの中から秩序なんてものが生まれるのでしょうか。
自己組織化現象の最も分りやすい例として、砂山を紹介します。
砂粒が岩になったり、風化が芸術作品を造ることはないと申し上げました。ですが、砂は風によって運ばれ、砂丘といった神秘的な造形美を産み出すことができます。
砂山は三角錐をしています。それは、砂山の頂上が満員になれば、砂は下に転がり落ちなければならないからです。そして、砂山は裾野を広げ、更に成長を続けます。当たり前のことですが、そういうことですから、砂山は大きくても小さくても、必ず三角錐になります。このように、大きさ、スケールが違っても形状が同じであることを「フラクタル(自己相似)」と言います。
木の枝は、幹から切り取っても、枝からもいでも、大きさこそ違え、その生え振りは同じですし、松なら松、杉なら杉といったはっきりと分る特徴を持ちます。これは、一見デタラメに伸び広がる枝葉に「フラクタル」という秩序があるからです。そして、砂山は、余分な砂は下に転がり落ちるという、たったひとつの単純な規則によって、フラクタルという秩序を維持しています。作っては壊れ、誰が手を加えるわけでもなく、砂丘が砂丘という景観を維持し続けるられるのはそのためです。
ということになりますと、秩序というのは自己組織化を行なわせるものではなく、その結果、必然的に発生する「性質」であるように感じられます。秩序というものが先にあるのであれば、自己組織化が起こることはそれほど不思議なことではありません。ですが、必ずしもそうではないらしいのです。
フラクタルをもう一度整理しますと、大きさが違っても形状は同じということです。正三角形のパズルを思い出して頂ければ良いと思います。小さな正三角形を並べてゆくと、大きな正三角形が出来上がります。そのようにたくさんの正三角形を敷き詰めると、何処を区切っても正三角形です。これは数学的に数列で記述することが出来ます。そして、自然界にはそのような数列がたくさんあります。
アンモナイトや巻貝の殻は、フラクタル性を持っています。フラクタルは大きさが違っても形状は同じです。ですから、アンモナイトは身体が成長してどんどん大きくなっても、その構造を変える必要はありません。
大きなものでは、侵食によって形成される地形にもフラクタルはあります。リアス式海岸が良い例だと言われています。海岸線は波や河の流れによって侵食されますが、その形状は地形の勾配や、地層の固さによって左右されます。水は高い方から低い方へ流れ、専ら柔らかい地形を削っては、硬い岩で流れを変えます。そして、河の流れを辿ってみれば、フラクタルを持つ木の枝とそっくりであることは言うまでもありません。
では、河が流れるという性質とはいったどのようなものなのでしょうか。ここでは、それに就いては「複雑系に於ける集団の振るまい」と申し上げなければなりません。
当たり前のことですが、水が河となって流れるためには、大量の水が集まらなくてはなりません。水分子は本来、他の物質を分解してイオン化させるとか、高速で結合、分裂を刳り返すとかいった、独自の性質を持っています。ですが、水が河となって流れるということは、それとは違い、集団によって初めて現れる性質です。「複雑系科学」というのは、構成単位ひとつひとつのミクロな性質ではなく、それが複雑系をなしたとき、初めて現れる「マクロな現象」を捉える科学ですよね。そして、水分子が大量に集まってそのような性質を持つのであれば、それは既に自己組織化されています。ですから、秩序を性質として捉えるならば、それは自己組織化によって生み出されるものということになります。
大量に集まっているのであれば、空気もそうですね。そして、その空気に包まれて温暖な気候という性質を持つ地球もそうです。九つの惑星が寄り集まった太陽系も、恒星も、銀河も、そして、宇宙も、全てが自己組織化現象の産物です。
変わった例では、株や為替の動きも自己組織化現象です。たくさんの人間がテンでバラバラに行なっている取引なんですが、そこにも規則性という複雑系ならではの性質が発生します。これを研究すれば予測も出来るかも知れません。
しかしながら、もし宇宙が散逸系でないとするならば、外からエネルギーが供給されることはありません。従って、この宇宙が完全閉鎖系であるならば、やがてエントロピーの法則に従って完全に滅びてしまうものだと言われています。
ということなのですが、最後までお読み頂きありがとうございます。
No.2
- 回答日時:
「自己組織性」ではなく、「自己相似性」ではないのでしょうか?フラクタルの本で、頻出は「せるふ・しみらりてぃー」かな?って思ったので書き込みました。
誤解でも「自己相似性」について、
「自己相似性」とは、海岸線のように地図で大きい縮尺の線と小さい縮尺の線が似ていると言うことです。草を観察すると、幹から葉っぱが枝分かれして出ています。よく見ると葉っぱの葉脈も太い葉脈から枝分かれして細い葉脈が出ています。
意外に大きいものは、そっくりな小さいものの集まりで出来ていますよ。ってことです。
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