
■ハロウィンは海外版お盆
まず、ご存知の方もいると思うが、ハロウィンとはどんなイベントなのかおさらいしておこう。ハロウィン研究家の五条まあさっちんさんが教えてくれた。
「ハロウィンは、アイルランド地方のケルト民族発祥の行事です。11月1日は『死者の日・聖者の日』で、亡くなった祖先たちが地上に戻ってくる日とされていました。10月31日はその前夜祭です。帰ってくるときに、悪い霊や魔物たちが一緒に地上にやってくると考えられていました。そこで、人間が魔界へ連れていかれないよう、魔物や幽霊のような格好をして『私も魔物の仲間ですよ』というフリをしたのが仮装の始まりです」
ハロウィンは、日本のお盆に近い行事といえるが、発祥はアイルランド。だが日本に伝わったのはアメリカからだった気がするが、それは……?
「多くのアイルランド地方の人たちがアメリカへ移住し、ハロウィンもアメリカに伝わりました。お化け提灯の『ジャック・オ・ランタン』は、当初はカブをくりぬいて作ったのですが、アメリカで手に入りやすいカボチャになるなど、少しずつ変化をとげながら現在の形になっています」(五条さん)
なんと、ハロウィンのアイコンであるカボチャが、最初はカブだったとは……。
■仮装だけではない海外のハロウィン
ハロウィンといえば、子どもたちが家から家へと練り歩きお菓子をもらうイメージだが、実際はどうなのだろう。
「『トリック・オア・トリート』と言いながら、お菓子をもらい歩くのですが、軒先に飾りつけをしている家限定で、そうでない家を訪ねてはいけないルールになっています。パーティーも盛んで、恐怖映画を見たり、箱の中に入れたものを手探りで当てっこしたり、水を張ったバケツに浮かべたリンゴを、口でくわえて取るようなゲームもします」(五条さん)
箱の中には触るとちょっと気味の悪いゼリーなどが入っていたりするそうだ。
「大人たちは、軒先や庭をどれだけ怖くデコレーションできるかを競いあうこともあります。また、大人のための仮装パーティーにはテーマ性をもたせることが多いです。例えば、主催者のイニシャルで始まるものだったり、夫婦で映画の主演カップルになぞらえた仮装をしたりといった具合です」(五条さん)
大人から子どもまで、アメリカでもハロウィンを存分に楽しんでいるようだ。
■EU圏での盛り上がりは今ひとつ
アメリカ以外ではどんな感じなのか、「世界市プロジェクト」の担当者が教えてくれた。
「ドイツではハロウィンはあまり大々的に祝われることはなく、学生によれば31日も普通に授業があるそうです。また、手作りのランタンを灯し、黒いマントを羽織って行進する『ザンクト・マルチン』というハロウィンに似たイベントがありますが、ドイツではそちらの方が盛り上がるそうです」(世界市プロジェクト)
ヨーロッパでは、ハロウィンイベントはあまり根付いていないようだ。最近になってアメリカから逆輸入されるような形でブームがきており、少しずつ街のディスプレイなどにも取り入れられているそうだ。
「発祥の地であるアイルランドでは、今もその伝統が引き継がれています。また、スウェーデンでは、10月31日から11月6日の期間の土曜日は『アラ・ヘルゴンス・ダーグ(諸聖人の日)』という祝日で、死者の魂のために祈る日となっています」(世界市プロジェクト)
ひと言でハロウィンといってもいろいろな行事があるようだ。
今年も10月31日は、各地でそれぞれ盛り上がることが予想されるが、トラブルの発生も気になるところ。大人も一緒に盛り上がるのは大いに結構だが、節度ある行動で楽しんでほしい。ごみの持ち帰りも忘れずに。
●専門家プロフィール:五条まあさっちん
ハロウィン料理研究家。恵比寿でパーティー料理をメインにした紹介制の料理教室を主宰。ハロウィンが大好きすぎてキモ料理研究家の異名を持つ。作成するハロウィン料理は子どもが喜ぶ可愛いスイーツやお弁当メニューから、大人も悲鳴をあげる恐怖の1品まで多岐にわたり、高い評価を得ている。
●専門家プロフィール:世界市プロジェクト
活動理念である「世界と日本の架け橋」を作るため、イベント局・営業局・広報局・企画局の四つの支局に分かれて活動する学生団体。10月8日と9日に開催された「国際フェスティバル世界市2016」の主催団体でもある。