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注入電流に対する光出力の強度変化を調べたとき、しきい値以上では誘導放出により、注入電流と光出力が線形に比例することがわかっています。
一方、しきい値以下の自然放出では、光出力は注入電流に線形に比例するようには見えません。しきい値以下での電流と光出力の関係はどのような式で表されるのでしょうか。また、その原理とはどのようなものでしょうか。

A 回答 (1件)

元・半導体レーザ研究者です。



>しきい値以下の自然放出では、光出力は注入電流に線形に比例するようには見えません
光出力が電流^2に比例するような変化じゃないですか? これは増幅された自然放出(ASE:Amplified Spontaneous Emission)と呼ばれる現象を見ているのだと思います。

その原理を使ったものに、スーパールミネッセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)、ファイバー増幅器・光変調器があります。一般的な発光ダイオード(LED)は自然放出光だけなので、電流-光出力(I-L)特性はほぼリニアです(高電流で寝てくるのは発熱による効率低下)。SLDとLEDの違いは、I-L 特性の他に、発光スペクトルの半値幅があります。SLDは10-20nmと小さいのに対して、LEDはもっと広くなっています。HKB さんが測定された素子の発光スペクトルの電流依存を調べてみると、電流増加とともに、半値幅が小さくなっていると思います。ASEモードでは、電流増加に従ってスペクトル半値幅がだんだん小さくなり、レーザ発振に至ると急激に小さくなると思います。

ASEについては専門でないので詳しくは知りませんが、ごく簡単なモデルで考えると、光出力∝電流^2 となるのは理解できると思います。自然放出光は注入されたキャリアの再結合で起こりますので、内部量子効率が一定なら、光子数(光出力)は注入キャリア数(電流)に比例し
   L0 = α*I --- (1)
となります。SLDや半導体レーザでは、光を増幅するような構造になっていますので、注入キャリア数の増加とともに光増幅率が大きくなってきます。そこで光増幅率 G が注入電流 I に比例するとすれば
   G = 1 + β*I --- (2)
と書けます。β は電流注入による利得係数です。I = 0 のときの利得はない(増幅率1)とします。この増幅は、(1) の種光に対して働くので、外部に出てくる光 L は、L0 を G 倍したものになって
   L = G*L0 = α*I*( 1 + β*I ) = α*I + α*β*I^2 --- (3)
となります。β がとても小さいのが普通のLEDということになります。手元に半導体レーザの参考書がいくつかあるので、レート方程式(Rate Equation)に基づいたちゃんとした式も紹介できると思いますが、ここでは長くなるので割愛します。ただ、半導体レーザの動作理論は恐ろしく難しく(半導体統計+量子力学+光導路+・・・)、私はほとんどちゃんと理解していませんので、参考書の丸写しになるかと思います。

SLDと半導体レーザ(LD)は構造的にほぼ同じですが、SLDでは共振器損失を大きくして(例えば、端面反射率を下げる・共振器長を小さくする)、レーザ発振に至らないようにしています。したがって、ASEのような現象が現れるのは、光利得は十分あるのに、共振器損失が大きいという、半導体レーザとしては問題のある(?)構造と言えます。実験で得られた I-L 特性を式(3) でFittingすれば、係数 α、βが分かるはずです。ただ、そのとき、ASEモードでの放射光をなるべく全て捉えるように、フォトダイオードの大きさと距離には注意してください。

私もその昔、半導体レーザの I-L 特性を山のように測定しました。ウェハを璧開しただけのレーザであらかじめ特性を見ておくのですが、この段階の素子は、まだ端面コートをしていないので、ASEモードがかなり大きく出ます。このモードでの発光パターン(放射角分布)はかなり広いので、光出力を測定するためのフォトダイオードの面積が小さいと、I-L特性の非線形性は観測されにくいはずです。私の場合は、受光面直径1cm のSi PINダイオードを、レーザ端面に5mmまで近づけていましたのでほとんどの自然放出光を捕えていたと思います。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。
難しいですね…
これから手元のデータと見比べて、じっくり検討しようと思います.

お礼日時:2007/06/14 08:00

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