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94条2項などは、「取引の安全」のための制度だそうですが、「取引の安全」というのは公共の福祉であり、1条により私的自治に一定の制約が加えられる場合と考えればよいのでしょうか?

A 回答 (2件)

取引の安全は、真実の権利者と、その権利を契約を媒介として取得しようとする第三者とのどちらを優先的に保護するかという利益衡量の問題です。


このことについて民法は、後者を前者よりも優先的に保護する旨を原則とします。その理由は、近代社会は商品交換社会であるので、取引しようとする者が転売を予定して他人から商品を買い入れるのが普通であり、一つ一つの取引はそれだけで終わるものではなく、その背後に無数の取引を予定しているからです。
すなわち、ある一つの取引が何らかの事情で成立後に無効にされると、その取引の履行を予定している次の取引、さらにまた次の取引というように、その取引につながる数多くの取引が連鎖反応的に無効になってしまう虞があります。そうなると、資本制経済の円滑な運用に支障を来たすことになります。そこで、個々の取引においては、禁反言に拠って相手の所有物として信頼された取引目的物の所有権取得そのものが保護される必要があり、その結果、反射的に真実の所有者が所有権を失ってもやむを得ないこととされるのです。

以上の趣旨を考慮すれば、取引の安全は、公共の福祉の観点から私的自治に外圧的な制限を加えるものではなく、むしろ私的自治を基調とする資本制経済活動(商品交換)を円滑ならしめるための調整原理と捉えられます。

一方、公共の福祉とは、各人の個別利益を超え、またはそれを制約する機能をもつ公共的利益あるいは社会全体の利益を指す概念であり、民法上は財産権の制限を意味します。その具体例としては、独禁法による私的独占の排除や公害対策・自然環境保全のための規制などが挙げられます。
これを平易に言えば、万人の幸福につながる公共性の高い利益を図るためには、一人の幸福を犠牲にすることが許容される場合もあるということでしょう。
私的自治の原則から要請される取引の安全によって、善意の第三者を保護することが、公共の福祉に依拠するといういわれはありません。両者は、次元を異にする概念です。

よって、取引の安全は、私的自治の内部において利益を調整するための解釈上の判断基準であって、公共の福祉とは無関係です。
取引の安全の根拠を公共の福祉に求める見解は、寡聞にして存じません。

この回答への補足

回答有難うございます。

なるほど、私的自治の原則の中に「取引の安全」が内在化していると考えることもできますね。

であるとすれば、私的自治の中には信義誠実の行為基準も内在化しているということも同様にいえますし、権利濫用をすべきでないという行為基準も内在化しているということも、また公共の福祉に従うという行為基準も内在化していると考えることも出きると思うのです。

しかし、一般には民法においては私的自治により私人の自由が保証されているが、それは全くの自由ではなく、公共の福祉、信義則、権利濫用の禁止の範囲内のものであるとされているのではないでしょうか。(つまり無条件の自由ではなく1条により修正される)

公共の福祉とは、社会全体の利益ということが出きると思いますが、例えば「取引制度の維持・発展に資する」、「社会経済活動の維持・健全な発展に資する」、「正義に基づく公平な社会の実現に資する」、「社会秩序の維持・発展に資する」とかではないでしょうか?

「取引の安全」は上記のうち、「取引制度の維持・発展に資する」に該当すると思うのです。
または、信義則は「公共の福祉」が社会レベルであるのに対して個人レベルでのものであるという言われ方もするみたいですので、そうであれば信義則のなかに「取引の安全」が含まれるのかもしれません。

補足日時:2008/05/02 14:08
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取引の安全とは、取引をする者の利益の保護を図ることです。

公共の福祉による私権の制限を指すものではありません。

民法94条2項は、通謀虚偽表示(94条1項)の外観を信頼した第三者を保護する規定です。
ここで通謀虚偽表示とは、例えば、債務者Aが友人Bと通謀して不動産をBに売る契約をしたことにして、財産隠しを図るような場合です。このような仮装行為は、何らの法的効果も認められず無効です。
しかし、この仮装行為の事情を知らない第三者のCが、Bからその不動産を買い受けたとすれば、Cの立場を保護しなければなりません。
すなわち、AとBの間では、不動産の所有権は依然としてAにあるものの、虚偽表示を信頼したCに対しては無効を主張できないのです。
その結果、Bから不動産を買い受けたCは、その所有権を取得し、AはCが登記を得ていないことを主張して返還を求めることはできません。
なお、当初のAとBの間での虚偽表示が無効であることは変わりないので、AはBに対して不動産の返還が不能になったことによる損害賠償を請求できることになります。

上記のような場合に94条2項の規定がなかったならば、Cは不測の損害を被ることになり不合理です。
言い換えれば、虚偽表示がある場合に、その事情を知らないで取引した第三者を保護する規定がなければ、常に損害を被る可能性があり安心して取引できません。つまり、取引の安全が害されるわけです。そこで、民法上、善意の第三者の利益を優先的に保護しようという概念が「取引の安全」なのです。
したがって、「取引の安全」は特に「公共の安全」を意味するものではなく、あくまで私人間取引における利益の帰属に関する概念です。

この回答への補足

回答有難うございます。
民法は私的自治の原則を根本原則として、これに公共の福祉等の観点から一定の制限を加えることになると思うのです。

通謀虚偽表示は私的自治の原則(債権面でいえば法律行為自由の原則)を貫けば、意思が不存在である以上は無効ということになります。
私的自治は自分の意思に基づいた法律関係を築くことに法が助力するものですが、逆にいいますと意思がない法律関係には拘束されないことになると思うのです。
しかし、通謀虚偽表示の場合には善意の第三者との間では無効を主張することが出来ないことからその意味で私的自治に「取引の安全」という観点から一定の制限を加えていると考えられると思うのです。

外観法理は禁反言が根拠と思っていたのですが(この考え方でいきますと、私的自治の原則に信義則1条2項(禁反言)により一定の制限を与えているということが出きると思います)、ドイツ法的な考え方では「取引の安全」が外観法理の根拠となっているとのことです。
この考え方では本人の帰責性を求めずに第三者に無過失を求めるのが本来的みたいです。

そこで、この「取引の安全」に従うべき根拠をどこに求めるかというと
1条1項の「公共の福祉」なのかと思った次第です。

補足日時:2008/04/29 01:20
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