製品マスター完成までの費用は、全額、研究開発費のみなのでしょうか?
無形固定資産のソフトウェアの計上金額が著しい改良以外の改良費用だけとは考えにくいのです。
TACのテキストでは、「製品マスターは著作権=無形固定資産を有しているため、その取得原価を算定して無形固定資産に計上」とあります。
その取得原価に研究開発費の一部さえも入らないのでしょうか?
取得原価と研究開発費とはまったく関係ないのでしょうか。
あと、バグ取り等の機能維持費用は、複写費や包装費と同様、製品原価に含めることは可能ですか?
更に無形固定資産の期間償却部分は製品売上原価に含めるのでしょうか?
質問ばかり羅列して申し訳ありませんが、テキストのソフトウエアに関する記述は
あっさりしすぎて疑問噴出状態なのです。
よろしくお願いいたします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
>製品マスター完成までの費用は、全額、研究開発費のみなのでしょうか?
販売目的のソフトウェアの場合、最初に製品化された製品マスター完成までの期間は「研究開発」期間に該当し、その間、要した費用は研究開発費処理という考え方が原則です。
著しい改良・強化が終わるまでは研究開発の終了時点に達さないという考え方から、それらの費用は研究開発費に含めることが、とりわけ強調されています。
ただ、「研究開発」の判別は難しく、何でもかんでも研究開発費処理されてしまうことを防ぐため、「著しい改良・強化を伴う制作活動費用と認められない費用」に関しては「無形固定資産」勘定として取得原価へ算入しなくてはならないという規約があるのです。
>TACのテキストでは、「製品マスターは著作権=無形固定資産を有しているため、その取得原価を算定して無形固定資産に計上」とあります。
『研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針(会計制度委員会報告第12号)』で謳われている内容(平成11年3月31日・日本公認会計士協会 提示)は以下の通りです。
TACのテキストに記載された説明内容は、この実務指針に則ったものだと思います。
(製品マスターの制作原価)
35.意見書においては、製品マスターは、(1)製品マスター自体が販売の対象物ではないこと、(2)機械装置等と同様にこれを利用(複写)して製品を作成すること、(3)法的権利(著作権)を有していること、及び(4)適正な原価計算により取得原価を明確化できることから、当該取得原価を無形固定資産として計上することとしている。
>その取得原価に研究開発費の一部さえも入らないのでしょうか?
>取得原価と研究開発費とはまったく関係ないのでしょうか。
ご存知のように、製品マスターの「取得原価」は外部から製品を調達する際に発生する費用であり、研究開発費とは切り分けて考えます。
製品マスターを自社制作する場合は、材料費・労務費・経費などの製造原価が無形固定資産の価額として扱われます。
自社制作の製品マスターによっては、研究開発費と製造原価部分の仕分けが困難な場合もあることから、研究開発に係る部分であっても当期製造費用の範囲とみなし、無形固定資産計上することも容認されています。
(この場合、仕訳上は、いったん製造原価として計上し、のちに「無形固定資産」勘定へと振替える流れとなります。)
以下、研究開発費についての実務指針です。
4.研究開発費は、新製品の計画・設計又は既存製品の著しい改良等のために発生する費用であり、一般的には原価性がないと考えられるため、通常、一般管理費として計上する。ただし、製造現場において研究開発活動が行われ、かつ、当該研究開発に要した費用を一括して製造現場で発生する原価に含めて計上しているような場合があることから、研究開発費を当期製造費用に算入することが認められている。
この場合、当期製造費用に算入するに当たっては、研究開発費としての内容を十分に検討してその範囲を明確にすることとし、製造現場で発生していても製造原価に含めることが不合理であると認められる研究開発費については、当期製造費用に算入してはならないこととなる。
特に、研究開発費を当期製造費用として処理し、当該製造費用の大部分が期末仕掛品等として資産計上されることとなる場合には、従来の繰延資産等として資産計上する処理と結果的に変わらないこととなるため、妥当な会計処理とは認められないことに留意する必要がある。具体的には、ソフトウェア制作費のうち研究開発に係る部分について、当期製造費用として処理し、結果的にその大部分が資産計上されることとなる場合が該当する。
研究開発費の開示に当たっては、当期に発生した研究開発費として、一般管理費及び当期製造費用に計上した額を総額で注記する。
なお、研究開発費は、当期製造費用として処理したものを除き、一般管理費として当該科目名を付して記載する。
>無形固定資産のソフトウェアの計上金額が著しい改良以外の改良費用だけとは考えにくいのです。
「著しい改良」についての実務指針も載せておきますね。
自作の製品マスターや外部購入のソフトウェア機能について「著しい改良以外の改良」とは具体的に何か?を公認会計士に確かめたところ、費用が比較的少額で製品そのものに与える影響が微小な改良や強化を指すとのことでした。
(著しい改良)
33.製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行うための費用は、原則として資産に計上するが、当該改良が著しい改良と認められる場合は研究開発費として処理する。
ここでいう著しい改良とは、研究及び開発の要素を含む大幅な改良を指しており、完成に向けて相当程度以上の技術的な困難が伴うものである。
具体的な例として、機能の改良・強化を行うために主要なプログラムの過半部分を再制作する場合、ソフトウェアが動作する環境(オペレーションシステム、言語、プラットフォームなど)を変更・追加するために大幅な修正が必要になる場合などが挙げられる。
>バグ取り等の機能維持費用は、複写費や包装費と同様、製品原価に含めることは可能ですか?
不可能です。機能維持費用は、資産計上可能な「機能の改良・強化を行う制作活動」とは切り離して捉えるよう、審議会より提言されています。
『研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書』より抜粋。(平成10年3月13日・企業会計審議会 提示)
3 ソフトウェア制作費について
(3)(2)市場販売目的のソフトウェア
ソフトウェアを市場で販売する場合には、製品マスター(複写可能な完成品)を制作し、これを複写したものを販売することとなる。
製品マスターの制作過程には、通常、研究開発に該当する部分と製品の製造に相当する部分とがあり、研究開発の終了時点の決定及びそれ以降のソフトウェア制作費の取扱いが問題となる。
イ.研究開発の終了時点
新しい知識を具体化するまでの過程が研究開発である。したがって、ソフトウェアの制作過程においては、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」が完成するまでの制作活動が研究開発と考えられる。
これは、製品マスターの完成は、工業製品の研究開発における量産品の設計完了に相当するものと考えられるためである。
ロ.研究開発終了後のソフトウェア制作費の取扱い
製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用は、著しい改良と認められない限り、資産に計上しなければならない。
なお、バグ取り等、機能維持に要した費用は、機能の改良・強化を行う制作活動には該当せず、発生時に費用として処理することとなる。
製品マスターは、それ自体が販売の対象物ではなく、機械装置等と同様にこれを利用(複写)して製品を作成すること、製品マスターは法的権利(著作権)を有していること及び適正な原価計算により取得原価を明確化できることから、当該取得原価を無形固定資産として計上することとした。
>更に無形固定資産の期間償却部分は製品売上原価に含めるのでしょうか?
市場販売目的であれ、「製品マスターは、それ自体が販売の対象物ではない」との観点から、ソフトウェアの減価償却費は、製品売上原価には算入されません。
損益計算書上は「販売費・一般管理費」として計上され、貸借対照表上では、無形固定資産の直接控除科目として「無形固定資産」の項目に含めて計上されるのが一般的です。
InTheLife様
久しく回答がいただけなかったので、教えてgooをのぞいていませんでした。
昨日7/12そろそろ質問を閉じようとのぞいてみたらお答えをいただいていることに
気づいた次第です。御礼が遅くなり、まことに申し訳ありません。
また丁寧なご回答、とても詳しいご説明をいただき、不明な点がかなり
解決されました。本当に感謝です。
ありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
原則例外を逆にするとしっくりくるのと違うかな。
ソフト開発は、研究開発になるのが原則で、資産計上は例外。ソフトは有形固定資産と違うて経年劣化せえへんしコピーでいくらでも増やせるもの、従来の資産と違うんよ。バグ取りとかは、資本的支出か修繕費かで考えるとええ。原価算入できる修繕費なら含めておけ。
製品マスタの償却分は、売上原価に算入やね。
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