No.4ベストアンサー
- 回答日時:
>しかし昨今の時流に乗って様々な範囲に手を出した結果、よく分からない範囲の研究者になりました。
この情報で共感が深くなりました。ぼくも「複合領域」と差別(笑)される分野をやっており,もとは理系でいまは文学部勤務です。個人が特定されるので,詳しいテーマは書けません。
やりはじめた当初は学会発表のセクションも「その他」というひどい扱いでしたが,いまは1つのセクションが立って若手も参入してきました。「ぼくが生きていたのも無駄じゃなかったかな」と思いながら,定年まであと何年という概念が現実としてせまり,もうさして狂気も熱意もわき起こらず,大学運営の「長」職で最後のエネルギーを消耗する日々を送っています。
複合領域では,「なにをテーマにするのか」から始めなければならない困難があります。仕事をやり始めたときには,プロではあっても,きちんと詰められていない。また,「これをやりたい」と思って始めても,いいデータがでない。データを見ていると,仮説が間違っていたこともわかる。「このデータなら,真意じゃないが,こういう筋で書くほうが簡単だろう」と逃げを打つこともあります。投稿論文がボロクソにコメントされるのは辛いし,もうやめようかと思うこともある。
若手が参入してきたのは,ぼくが無駄な時間を使ってあれこれ試行錯誤したことが,だいぶ助けになっていると思うのですね。しかしそれは,日本の風土ではあまり評価されません。金太郎飴でも論文数が多いほうがえらい。無能ぶりを「道を究める」というほうがえらい。
お礼、遅れまして申し訳ありません。少し考える時間をいただきたかったので。領域が新しいということが、時間を使うのかなと思う一方で、では新しい領域を開拓するとは何をしているのだろうとも考えました。
結局私などの場合は、先行研究をどこに定めるかで四苦八苦しているようです。というのも、先行研究など本当は無いのですから。しかしそれらしい何かを書いておかないと、体裁が悪い。そこで何かを「でっち上げる」のだけれども、ちょうどいい頃合いのものがそう見つからない。
この起点が重要なので 、あれでもない、これでもない、いや、こっちか、と色々と試してみます。重要という意味は自分の頭を整理するためにも大切ですが、起点によって「読み手=査読者」が変わるので、大問題でもあります。しかし「でっち上げる」とは「こじつける」とは異なります。先行研究を普通に読むと見過ごす情報を、掘り下げて炙り出すので偏執的なパワーがないとなりません。こういうわけで「狂気」とおっしゃる意味は、よくわかります。
私は当初、パースペクティヴの整理に時間がかかると考えました。しかし新領域を立ち上げたという特殊性を考慮すると、次のようになりそうだなと思うところです。
・偏執的パワーの蓄積に時間を要する。
・「先行研究」とのつなぎに時間を要する。
パースペクティヴの整理にはどの分野でも時間がかかるものだが、新しい分野を立ち上げると難易度が格段に上がるようです。
>金太郎飴でも論文数が多いほうがえらい。無能ぶりを「道を究める」というほうがえらい。
こういう人は、おそらく分野を名乗っても個人は特定されないでしょうね。「無名の大衆」であるが故に、強いのかもしれませんよ。それにしても、実名になると責任を取る必要が生じるわけで、 疲れてしまいますね。ウェブに投稿すると、匿名が何と気軽で楽しいものなんだろう、と思ったりします。
No.3
- 回答日時:
分野によって大きく違うのですね。
私は電気電子系(工学)の研究をしていましたが、
アイデアを出し、試作、実験などを経て試行錯誤の末アイデアへの裏付けが取れたところで、
論文の執筆をしていました。
成果が出たから論文の一つでも書いてやろうか、的なノリです。
ですのでご質問への答えとしては、
・執筆にかける時間は圧倒的に少ない
・すでに書くことが明確に決まっており執筆中はそれに集中できるため、ほぼきれいに時間を分けらる
です。
私の周囲も大体そんな感じでした。
過去形で書いているのは、今は研究職から離れているためです。
ありがとうございます。次の一節に注目しました。
>試行錯誤の末アイデアへの裏付けが取れたところで
当然かもしれませんが、工学でも主観と裏付けの擦り合わせには時間がかかるのですね。書きながら擦り合せる分野もあれば、実験そのもので擦り合せる分野もある。どちらにせよ、パースペクティヴを決めるのが大変だ。
そんな風に思いました。
No.2
- 回答日時:
朝シャワーでくつろいだところで,No.1の補足。
>自分のオリジナリティないし狂気には自信があります
むろん,投稿論文が「標準仕様のレフェリー」によってリジェクトされる危険性は高くなりますよ。自由奔放にやる代償は当然にあります。
このとき,ぼくが大学院生だったときの師匠連中の叱責は,とても頼りになりました。覚えているものを記すと:
「論文ってのはな,<それがわかるたった数人>のために書きゃいいんだ。」
「反論がでないような陳腐な論文を書いて,どうするか。」
「真理なんか,あるもんか。人ごとに見解が違うのが研究ってもんだ。」
「私が批判しているのは,君の研究内容じゃない。君が信念をもってとことんやってない点だ。」
まあ,彼らはすごいことを言ったものです。将来その学問を背負い発展させなければならない人材を,本気で育てようとしたのは確かです。その意味で,(当時の)東大理学系大学院は陸軍士官学校だったと思います。うちの田舎国立大学じゃあそんな無茶はできず,新兵訓練所にとどまっているわけです。
ありがとうございます。理学系ということですが、しかし研究というものは、多かれ少なかれ、似たところがあるものなんだなあと思いました。
お書きのように、これを他人に要求するのは難しい。補正しろと私は言うのだが、これが受け入れられることは稀です。面倒くさいとか、そこまでやる必要があるのか、と思われるようですね。
かくして私はルーキーをぶっ壊しているようです。ぶっ壊れるのが悪いのか、ぶっ壊す私が悪いのか。まあ、こういう弱音は責任問題になる可能性があるので、現実世界では絶対に口にできないことです。壊れるお前が悪いんじゃん、という顔をしています(笑)。
No.1
- 回答日時:
あなたの分野によるところが大きいと思います。
人文系といっても,広うござんす 笑。思想系(哲学),文献系(文学・歴史学),実験系(心理学),フィールド系(社会学・地理学)など。スタイルというか,脳味噌の機能というか,性格というか,それだけからいうと,
>むしろ書きながら、欠点が明らかになり、修正を加え続けて論文が完成するという格好です。同様の方はいらっしゃいますか?
ここにいらっしゃいます 爆。ぼく自身も,書きながら「自分はいったい何がやりたかったのか?」をも考えるタイプです。思考をまとめるために文章に起こす。でてきた結論にあわせて文献を調べなおし,前書きを書きます。自分のオリジナリティないし狂気には自信がありますので,同類の既存文献の存在を知って挫折することはありません。論文の章構成の順序に仕事が進められ,原稿が仕上がると思ったら大間違い。
学生を指導するときには,「まず文献調査をしっかりやんな」,「章構成だけでもいいからメモってこいや」と言いますが,これは博士論文まで(あるいは知能指数が標準範囲)の素人さん向けです。玄人芸は逆だと信じていますし,そうでないと<ぼくという個人>が生きている意味がない。
ありがとうございます。もとは文学です。しかし昨今の時流に乗って様々な範囲に手を出した結果、よく分からない範囲の研究者になりました。ただしアンケートや実験はなくて、基本は文献を扱っています。
パースペクティヴを「定める」のに時間がかかるということですね。一旦、仮説を出しておいて、その仮説を補正していくのに時間がかかる。この修正の幅が大きいので、結局、調査し直しているのと同じくらいのことになる。同感です。
これはおっしゃるように性格や頭の構造の問題なのか、それとも分野の問題なのか。これがわかると、もう少し研究の進展を効率化できそうな気がするんですよねえ。自分自身の研究にとっても、他人を指導する際にも、切実な問題です。
しかし文献を扱う研究の場合、解釈を網羅するようなパースペクティヴを定めないとならないから、最初に出した生半可な仮説だと糸口程度にしかならないのはむしろ当然で、執筆中に再構成しないとならないのは仕方がないのかな、という気がしています。
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