No.2ベストアンサー
- 回答日時:
16世紀に海外市場が拡大したことで毛織物の需要が増え、羊毛生産に転換して利益を挙げるため、第一次囲い込みが行われました。
この結果、多くの農民は土地を失い、彼らは賃金労働者になっていきます。更に17世紀~18世紀に今度は農業革命が起こったことで商業的な穀物生産が普及し、更に農民の土地が囲い込まれる第二次囲い込みが行われます。この結果、イギリスの農業は、広大な土地を所有する地主が、農業資本家に土地を貸与し、資本家が農業労働者を雇用するという資本主義的農業経営が一般化します。地主が農業資本家に土地を貸与する代金=地代は、土地から得られる収益の増加に伴って上昇します。土地から得られる収益が増加すれば土地の価値が上昇するので、貸し付けるときの地代も当然上昇するのです。需要と供給の関係からも当然そうなります。現代日本でも同様で、銀座など土地の価値が高いところは固定資産税も土地を貸す値段も高くなるのです。穀物法で穀物生産者が儲かるのなら、穀物を生産するために必須となる土地の価値も上昇し、地代の上昇によって結果的に土地を貸している地主が大きな利益を得られるわけです。
No.3
- 回答日時:
> 穀物を手に入れるのは土地を借りた人なので、穀物法が保護するのはその人たち
そのようにも考えられるでしょうね。
ですが、土地を借りて耕作人を使って穀物生産する人たちが、そのような経営が継続できるのは、収支採算がとれるからです。どうやら、この時期(18世紀半ば~19世紀半ば)にはさほど農業技術の向上や革新はなかったようです。そうなると、生産費の削減は出来ないので、穀物価格の維持は、土地を借りて耕作人を使って穀物生産する人たちにとって大事です。穀物価格が下がって大陸から安い穀物が入るようになってしまえば、借りている土地を返す、耕作人は切るという道を進まざるを得ないです。 ジェントリーも困るし、大地主はもっと困るでしょう。
何しろ、大地主は豪奢な生活費を借金で賄っていて、大地主に金をドンドン貸し続けていた銀行や保険会社から「もう貸せません。これまでの貸金も返してください」と要求されたら、もう没落しか道がなくなります。銀行や保険会社も収益源・貸付先がなくなったら困ります。また大地主が最も多くの税を負担していたのですから、大地主の没落や破綻を避けることは、金融機関を含め、国家的重要事でもあったのです。
なので、穀物価格の下落を一番強く避けたいとしていたのは大地主と国です。その大地主はだいたい貴族で政治的地位、影響力も大きいのです。
穀物法は、新興の産業資本家・工場主のような「労働力を安く確保する」ことに熱心な階層を別にして、多くの人の利益を守るものでもあったのです。
人口の0.5%にもならない大地主が国土の40%以上を持つ土地所有形態は17世紀半ばにはあったらしいです。
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1873年に作成されたReturn of Owners of Landによれば、3,000エーカー以上の土地を所有する大地主が1,688家族(全土地所有者の 0.2%)存在するが、この家族の所有地が国土全体の約43%を占めている。さらに300~3,000 エーカーの土地を所有するジェントリィは約12,000家族(全土地所有者の1.2%)存在し、この家族の所有地が国土全体の約26%を占める。つまりこれらを合計した約14,000家族(全土地所有者の約 1.4%)によって国土全体の約70%が所有されるという状況にあった。このような構造は19世紀後半にいたって急激に生まれたとは考えられない。
ロンドンにあったいくつかの銀行は貸し付けている。たとえばイングランド銀行は1820年代に150 万ポンドを地主に貸し付け、さらに銀行家のホー家・チャイルド家・ゴズリング家・クーツ家・ドラモンド家などは、地主を取引相手にして抵当や証券で貸し付けを行っている。これらの銀行だけでなく、新しく設立された保険会社が地主にばく大な資金を貸し付けている。保険会社は巨額で長期の貸し付けを好み、貸付金の返済を短期間で請求することはなかったものの、利子は定期的に受け取った。1800年頃に抵当貸しに深くかかわったエクィッタブル社とサン・ファイア社は、土地を抵当に取って総額約 776,000ポンドを貸し付け、「イングランドとウェールズの州の半分が、この2つの会社のどちらかに抵当として取られた土地である」といわれるほどであった。保険会社は1826年に法的に貸し付けの権限が認められるやいなや広範に事業を展開し、1850年頃には土地抵当を取って総額約100万ポンドを貸し付けるようになった。この結果、累積的にばく大な負債を抱える地主が生まれた。しかし貸し手は、利子請求額が可処分所得額と同額となるか、あるいは超える場合でさえ、喜んで貸し付けを続けた。そのために地主のなかには困難な状況に直面しているにもかかわらず、破綻に追い込まれない地主もいた。結局、負債によって窮地に陥った地主家族は、ほとんどいなかった。
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