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日本における内部統制の4つの目的のうち、資産の保全についてお伺いします。

監査論における、内部統制の目的の資産の保全とは、
「資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう、資産の保全を図ること」
とされています。

この資産の保全はCOSO報告書上は内部統制の目的として識別されていません。そこで日本独自の目的である、とする根拠としては日本では財産調査権を有する監査役監査が制度化されており、資産の保全に重要な役割を期待されていることが挙げられます。


ここで、なぜ財産調査権を有する監査役監査が制度化されていることが資産の保全に重要な役割を期待することにつながるのか具体的なイメージがわきません。

どなたか実務的な背景や趣旨をよろしくお願いします。

A 回答 (1件)

こんばんは。



「監査論」とは、会計監査論のことを仰っているとと推測致します。
また「内部統制」というと、会社法に基づく「内部統制システム」と、金商法に基づく「財務報告に係る内部統制(J-SOX)」とをごっちゃにされてる人や書き物が多いのですが、「財務報告に係る内部統制」はあくまで

 「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制」

であって、「内部統制システム」でいうところの

 「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」と
 「その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なもの」

の中に包摂されるべきものであり、かつ直線的に結びつくものではないこと、そして監査役の義務と権限を規定しているのは、あくまで会社法であって、「財務報告に係る内部統制」について監査役の関与は一切、明示されていないことをまず指摘しておきたいと思います。

その上で、監査役スタッフの立場から、以下述べさせていただきます。

まず「日本では財産調査権を有する監査役監査が制度化され」とは、ご承知のとおり会社法381条第2項・第3項の規定を指しているものと思います。

  第381条 監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参)
  の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところに
  より、監査報告を作成しなければならない。
  2 監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して
  事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることがで
  きる。
  3 監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対
  して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることがで
  きる。
  4 前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことがで
  きる。

それではなぜこれが「資産の保全に重要な役割を期待されている」ことにつながるのか、というのがご質問であるわけですが、その回答は、監査役の会社の業務及び財産の状況の調査は何のために行われるか、という点を考える必要があります。

前提として会社法では、前記の「業務及び財産の状況調査」に加えて、監査役に以下の義務と権限を付与しています。

  第381条第1項に規定される「取締役の職務の執行を監査」し「監査報告を作成」
  すること。

  第382条に規定される「監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為を
  するおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著し
  く不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社
  にあっては、取締役会)に報告しなければならない」こと

  第383条に規定される「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、
  意見を述べなければならない」こと。

  第384条に規定される「監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書
  類その他法務省令で定めるものを調査しなければならない。この場合において、法令
  若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結
  果を株主総会に報告しなければならない」こと。

  第385条に規定される「監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為
  その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある
  場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれが
  あるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる」こ
  と。

ご覧のとおり、監査役の義務と権限のベースとなっているのは、第381条第1項の「取締役の職務執行を監査」することです。そして監査によって取締役の不正行為等が発見されればそれを糺し、差し止めることができます。

また取締役会に出席し、取締役がビジネス・ジャッジメントルール(その時点で得られる合理的かつ充分な情報に基づき、合理的な判断をすること)に従い決定を下しているかどうか、法令・定款違反等は無いかの観点から意見を陳述しなければなりません。
さらには株主総会に提出される議案(取締役選任議案や役員報酬、配当決議、決算など……会社の規模や定款の定めによって付議しなければならない事項が変わります)や、書類(事業報告及び計算書類など)を調査し、法令・定款違反が無いかどうかをチェックすることができます。

これらを勘案すれば、監査役による「業務及び財産の状況の調査」は、取締役会の決定や報告内容、事業報告や計算書類等と、実態との間の齟齬の有無を確認し、そこに取締役の職務執行に不正・不法行為が無いか、あるいは会社の業務の適正性・効率性を確保する体制が作られているかを確認することに目的があることが分かります。
こうしてみれば、監査役による「業務及び財産の状況の調査」は、「内部統制システム」と「財務報告に係る内部統制」との関係のごとく、会社資産の保全を期待されているという点は「財務報告に係る内部統制」から見た言説であって、監査役監査の目的のあくまで一部分に過ぎないのですが、一方では取締役が不正・不法に会社の財産を処分・私的流用したり、不透明な会計処理をしたり、あるいはビジネス・ジャッジメントルール基づかない決定をすることによって後日、会社に損失を与えるようなことが発生することを防止すること、又は拡大することを防止すること、つまり会社の財産の保全にもつながっていると言えます。
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この回答へのお礼

ありがとうございました。 またよろしくお願いします。

お礼日時:2012/03/25 08:46

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