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ドイツ語のBibelは、なぜ語末の子音と母音がさかさまなのですか。

A 回答 (1件)

こんばんは。



ドイツ語の質問をなさるとおっしゃっていたので、どのような御質問になるのかと思っていましたら、これは私の守備範囲ではありませんね。音声学や、インド・ゲルマン語の変遷史になるので、そちらの専門の方がいるとよいのですが。

教会ラテン語ではbibliaで、もとになったギリシャ語はτά βιβλία (ta biblia)、これは、パピルスから来たβίβλος (biblíos) 、古形では βύβλος (býblos) の指小形βιβλίον (biblíon, býblon)の複数形ですね。ロマンス語の系統は、ラテン語の形が残っています。

Bibbia イタリア語
Biblia スペイン語
Bíblia ポルトガル語
Biblie ルーマニア語

中高ドイツ語では、13世紀からbiblieとbibelの形があります。フランス語のbibleも13世紀からあります。英語の語源辞典では、bibleという語は14世紀初頭からということですが、中英語(11~15世紀)の時代、イギリスの支配階級はほとんどノルマン系フランス語しか話さない人々によって占められており、フランス語が大量に流入したということなので、英語のbibleの形はフランス語由来だと思われます。古い時代の英語は、綴りの通りに発音していたといいますし、フランス語でも、語尾の子音と、それに続くeが消滅していった歴史があるので、本来は「ビブレ」で、もとのラテン語に近い形だと思います。最後のeは、発音の変化で読まなくなった綴りの名残でしょう。
一方、ドイツ語と同じBibelの形はスウェーデン語でも使われ、似た形にはオランダ語のBijbelがあります。さらに、デンマークやノルウェーではBibelenといいますが、これらはみな北ゲルマン語の系統です。Bibel以外の言葉でも、英語で-leとドイツ語の-elが対応する言葉がありますが、語源を探っていくと、北ゲルマン語では、lの前にeが挿入されて、あとのeが脱落していったようです。ざっと見た感じでは、ドイツ語におけるこの語尾のeの脱落は、英語よりも早く起きているようです。英語の場合は、15世紀から16世紀にかけて発音が大きく変わりましたが、それに合わせて綴りを変えなかったということです(これは日本語版Wikipediaの情報なので、もう少し確認が必要です)。

たとえ話、寓話
Parabel - parable <parabola (lat.) <parabolē (gr.)
Fabel - fable < fābula (lat.)

Fabelの語も13世紀からありましたが、fabeleの形もあり、古フランス語のfableからの借用語ということです。blという子音の連続を好まなかったのか、その間にeが挿入され、そのあとで語尾のeがなくなったような感じですが、どうでしょうか。以下の語も、フランス語から来た言葉で、-bleが-belに変化しています。

sensibel(独)– sensible(仏、英)<sensibilis (lat.)
flexibel – flexible(柔軟な)
nobel – noble(高貴な)
Kabel – cable(ケーブル)
Rubel – rouble(ルーブル)
(注:現代英語のsensibleは、ドイツ語やフランス語とは意味が違っており、sensitiveがこれと同じ意味になります。)

また、Zobel(黒貂)というドイツ語の名詞はスラヴ語のsobolが語源で、この場合は逆に、ゲルマン語からフランス語へ借用されてsableへ変わったようです。それぞれの民族の言語に固有の音声的特質から、-bel(ベル)と-ble(ブレ)に分かれたことと、発音の変遷で「ブレ」は「ブル」になり、しかし綴りは残存したこと、この二点があるようです。
最初に書きましたように、完全に私の守備範囲外です。もっと詳しく知りたいと思いますが、とりあえず今回はこれが精いっぱいということで。
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この回答へのお礼

ドイツ語で、語末の母音と子音が逆になる現象の理由や法則性については、学生のころから気になつてゐたのですが、調べるわけでもなく、いつものとほり、Q&Aで丸投げをしました。ゲルマン語全体に共通する法則性であれば、比較言語学の本に書いてあるのですが、英語とドイツ語とで異なる現象についてのものは目につきません。さまざまな資料からの御回答、ありがたうございます。

>北ゲルマン語では、lの前にeが挿入されて、あとのeが脱落していったようです。
逆になつたわけではなくて、まづ母音の挿入があつて、そのあと語尾が脱落したのですね、デンマーク語の例を挙げていただいたので、納得です。

フランス語との関連性も興味深く拝見しました。まつたく視野に入つてゐませんでした。逆にフランス語へ入つた場合も、郷に入れば郷に従へ、になるといふのも、おもしろいお話でした。英語のsensibleは辞書で確認しました。

私のドイツ語とフランス語は、学生時代にシュメール語の文献がドイツ・フランスのもので、そのために必要だつた程度なので、さほど勉強してゐません。今後も御指導たまはりたく存じます。

お礼日時:2015/04/22 08:23

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